僕の好きな風景 第19回 白の魔力
白の魔力
新年あけましておめでとうございます。年の始めは雪のような白さにまつわる話から。
「色の白いは七難隠す」ということわざがあります。
昔から色が白いだけであらゆる難が和らいで感じ、よく見えるということだと思います。
近代建築以降、過去の装飾的な空間を否定して、白い空間がよく表れるようになりました。
建築ではよく空間という言葉が使われますが、よくよく考えてみると空間という概念は難しく、「何もない空っぽの空気の固まり」みたいなつかみどころのないものです。その何もない感じを狙ったのが「白い空間」だと言えるかもしれません。
その中に家具をはじめとした調度品が置かれ、人々の暮らしが見えてきます。
そのような居場所のことを指すと言った方が分かりやすいかもしれません。
白い空間はその居場所が浮き上がり、逆に見えやすいように思いますが、そこがホワイトマジックでむしろ、抽象的な空間となり、生活感が消えてしまいます。
生活感の消臭剤的な役割も白い空間にはあり、建築の魅力を倍増させてくれます。
しかし、住宅は暮らしの器(うつわ)……やり過ぎるとアート作品のようになって、僕の作風には会わないなあと感じています。
健やかなる時も、病んだ時にも、生活者を包み込む暮らしをデザインする事が住宅設計の最重要事項であり、「白の魔力」に惹かれながらも程よいところで押さえる眼力を鍛えていきたいと日々悪戦苦闘しています。