僕の好きな風景 第2回 ヒンプンの創り出す空間
ヒンプンの創り出す空間
屏風と書いて「ヒンプン」と読みます。
昔はどこの家にも普通にあった目隠し塀で加えて、魔物を跳ね返す魔除けの役割を持っていました。
台風の風よけにも役立っていたという研究もあるようです。
また、男はスージ(路地)からヒンプンに向かって右側、女は左側へと、人の動きを振り分ける役割もありました。
屋敷囲いの一部が切り取られて、ちょっと後ろに下がって設置されたようなヒンプンは、沖縄本島ではほとんど見る事ができなくなってしまいました。
車の普及により、ヒンプンが邪魔な存在となったのでしょう。
約35年前、まだ学生の頃、沖縄の島々を旅したときにはどこの島でも当たり前のようにヒンプンが残っていました。
その存在が、まるで外部をゆるやかに内部に引き込むような不思議な力を持っているように思えたものでした。
目隠しであり、魔除けであり、人を振り分ける役割に加えて、町(外部)と家(内部)を緩やかに繋げる新しい役割を見つけたように思えて、僕の卒業設計の切り口となりました。
開放的に暮らしつつもヒンプンのような設計を取り入れる事で、プライバシーを守りながら内と外が一体になっておおらかな空間となるのではないか?現代にも生かせる沖縄独特の手法と感じたのです。
ヒンプンは沖縄の外部空間で大事な役目を担っていて、それがなくなった時、沖縄らしさも失うのではないでしょうか?
もちろん、今の時代にヒンプンを残せばいいという単純なものではありません。
その役割を洗い出し、現代に活かそうと工夫しました。
スケッチは卒業設計を思い出しながら、一部を描き起こしてみたものです。
35年経って、東京にいても、外部と内部を緩やかに繋げる僕の設計テーマは変わっていないと思います。