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基礎からわかる相続Q&A File.5 遺留分について

基礎からわかる相続Q&A File.5 遺留分について

週刊かふう2022年3月18日号に掲載された内容です。

Q 遺留分について

 父が今年になって亡くなりました。父は長男である兄を溺愛していたためか、入院する前に父が所有している自宅の土地と建物(6000万円)について、兄に相続させる遺言書を作っていたようです。
 母はすでに亡くなっていて、兄弟は私と兄の2人です。父は5年前にも兄の事業資金のために2000万円を贈与していたので、父の財産は自宅の土地と建物以外にはわずかな貯金しかありません。また、父の生命保険金も兄が1人で受け取ったと聞いています。父の遺言書のとおりに、自宅の土地と建物も全て兄が受け取ることになると、私はほとんど何ももらえないことになってしまいます。
 私から兄に対して、実家の土地建物を相続する権利があると主張したり、生命保険金を分けるよう求めることができるでしょうか。

A 法定相続人の受け取り額ががあまりにも不公平な場合、一定割合について遺留分侵害請求ができます

 遺言は、財産を残す方の最期の意思をできるだけ実現させる制度です。遺言書を作成することで、作成者は、誰に自分のどの遺産を取得させるかをある程度決めることができます。

 他方で、財産を受け取る人にとってあまりに不公平なことになってはいけないので、法律は兄弟姉妹以外の法定相続人については被相続人の財産の一定割合を遺留分とし、これが侵害された場合に遺留分侵害額請求を認めるというかたちでバランスを取っています。遺留分とは、相続財産から最低限相続させなければならない部分です。子どもが相続人となる場合の遺留分割合は2分の1でそれを法定相続分で分けることになります。

 遺留分を算定する基礎財産の価額には、10年以内に行われた贈与も加えることになりますので、本件の場合、不動産の価額に預貯金や現金などの額を加え、さらに5年前にお父さまからお兄さんに贈与された2000万円を合計して遺留分の基礎財産の価額を計算することになります。

 その一方で、死亡による生命保険金は、特定の相続人が受取人となっている場合には原則として遺産分割の対象とならないとされています。そのため、通常は遺留分の計算の基礎財産の価額には含まないことになり、生命保険金を分けることを求めることは原則としてできないことになります。
 そして、子どもが相続人となる場合の遺留分割合は2分の1で、お父さんの相続人は相談者とお兄さんの2人ですから、法定相続分はそれぞれ2分の1となります。そうすると、相談者の方の遺留分は2分の1×2分の1で4分の1となります。 
 この場合、遺留分の基礎財産の価額×4分の1で求めた金額が相談者の遺留分ということになり、相談者が遺産分割で取得した財産が遺留分額より少なければ、相談者の遺留分はその差額について侵害されている状態にある、と評価されます。

 遺留分を侵害されている相談者は、多く遺産を受け取ったお兄さんに対して遺留分侵害額請求をすることができます。遺留分侵害額請求の行使方法については決まった方式はありませんが、遺留分侵害額請求は原則として相続開始時から1年以内に行わなければ時効によって消滅してしまいますので、遺留分侵害額請求を行ったことを証明する資料を残すため内容証明郵便を利用することをお勧めします。
 遺留分侵害額請求を行うことで、相談者は、不動産の所有権の一部ではなく金銭請求権を取得することになりますので、不動産についての権利主張をすることはできません。



【お詫びと訂正】週刊かふう 2022年3月18日号の当記事において、本文最終行が掲載されていませんでした。
 読者の皆さま、執筆者の城間博先生にご迷惑をおかけいたしましたことをお詫び申し上げ、上記の通り訂正いたします。

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