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知っておきたい 相続の基礎Q&A File.11

知っておきたい 相続の基礎Q&A File.11

週刊かふう2020年6月19日号に掲載された内容です。

知っておきたい 相続の基礎Q&A File.11

遺言の撤回や変更について

よく考えて遺言書を作成した場合でも、時間の経過や状況の変化により、遺言書を撤回したくなることや、遺言書の内容を変えたくなることがあります。
そのような遺言書の撤回や変更の場合に必要な手続きや注意すべき点について見ていきましょう。

Q.遺言書を作成してしまったので遺言を撤回したり変更したりすることはできないのでしょうか。

 私は、娘二人と夫と暮らしてきましたが、娘二人が成長して独立し、夫に先立たれてから、夫と暮らしていた家で生活しています。この家は、夫の名義だったのですが、夫が亡くなった際に私の名義にするということで娘たちと合意できましたので、私の単独名義となっています。
 ところが、腰を痛めてしまい、生活に不自由をきたして困るようになってしまいました。そんな折、次女が一緒に住んでサポートしてくれると言ってくれたので、感激して私の死後はこの家を次女に相続させるということで、遺言書も作成しました。
 ところが、次女はしばらく一緒に住んで何かと世話を焼いてくれましたが、2週間も経つと全く生活のサポートをしてくれなくなり、家を出ていってしまいました。
 現在は、病院に通うのにも次女はサポートしてくれず、長女に頼んでサポートしてもらって何とか病院に通っている状態です。
 私としては、このような状況では次女に家を相続させることも考え直したいと思っているのですが、もう遺言書を作成してしまったので遺言を撤回したり変更したりすることはできないのでしょうか。

A.遺言の全部または一部を撤回することは可能です。

 遺言の全部または一部を撤回することは可能で、遺言作成者は新たに遺言を作成し、その遺言で前に作成した遺言の全部または一部を撤回する旨を内容にすれば前の遺言は撤回したものとみなされます。
 相談者が遺言を自筆証書遺言の方式で作成した場合なら、遺言書を破棄してしまえば遺言自体が無くなりますので遺言の全部撤回と同じ効果になります。
 相談者が公正証書遺言の方式により遺言を作成した場合は、遺言書原本が公証役場に保管されているのでこのような方法は取れず、撤回するためには新たに遺言書を作成し前の遺言の全部または一部を撤回するしかありません。公正証書遺言の方式で作成された遺言を撤回する場合でも、自筆証書遺言、秘密証書遺言の方式でも撤回は可能です。公正証書遺言だから公正証書遺言でしか撤回出来ないということはありません。これは撤回に限らず変更でも同様です。
 なお、公正証書遺言、自筆証書遺言がそれぞれ存在する場合、作成方法によって優劣はなく、遺言の内容が抵触する部分は最も新しい遺言が優先されます。ただし、遺言書の方式は法で定められた条件を満たしていないと無効になるため、公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回する場合は自筆証書遺言の作成上の不備で遺言が無効になるリスクがあり、その場合自筆証書遺言の方式での遺言が無効になると当然に撤回も無効になりますので、公正証書遺言で撤回することをお勧めします。
 また、遺言作成者が、遺言で記載されている財産を処分(売却)したり、破棄したり、贈与すると、その処分等された財産に限り撤回したものみなされます。
 作成した遺言を変更したい場合は、新たに遺言を書きなおすか、作成した遺言自体を変更する方法があります。変更の方法は、その遺言の変更したい部分を示し、変更した旨、変更内容を書き、署名し、かつその変更の場所に印を押す必要があります。変更方法に不備があると変更は無効となります。変更が無効となる場合は、変更は無かったものとして、遺言は変更前の内容となります。元の内容が判別できなくなった場合はその部分は最初から記載されていなかったものとして扱われる可能性があるので注意する必要があります。
 変更内容が多い場合は、遺言を新たに書き直すほうが良いでしょう。

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