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基礎からわかる相続Q&A File.6 生前相続がある場合の相続について

基礎からわかる相続Q&A File.6 生前相続がある場合の相続について

週刊かふう2022年4月15日号に掲載された内容です。

Q 生前贈与がある場合の相続について

 私の父は、今年になって亡くなってしまいました。遺言書等は作成されておらず、母も既に亡くなっていて、相続人は私と兄の2人です。
 
 父はある程度資産があり、自宅の土地建物の他、近所に土地を所有していました。前に兄が結婚を機に家を建てたいと言ってきたので、父は近所の土地を兄に生前贈与し、兄はその土地に家を建てましたが、結婚生活がうまくいかなかったこともあり家を処分しました。
 
 今回、父が亡くなったことで、私としては父が住んでいた自宅を相続したいと考えているのですが、兄が相続分は平等だから自宅の土地建物は処分して代金を半分で分けようと言ってきています。私がもう兄は土地をもらっていることを指摘しても、離婚の際に土地はもう処分したから関係ないと言って聞き入れません。

 私としては、兄は既に父から相当の財産をもらっているので、さらに残った遺産(父の自宅)についても平等に分けるというのは、納得できません。残された父の自宅の土地建物は私が取得することを主張することはできないでしょうか。

A 共同相続人間の不平等を是正する特別受益の制度について見ていきましょう

 本件では、お父さまからお兄さんへの生前贈与等について特別受益に当たらないか検討することになります。

 相続人の中に、被相続人から遺贈や多額の生前贈与を受けた人がいる場合、その受けた利益のことを「特別受益」といいます。遺贈、婚姻または養子縁組のための贈与、学資、その他生計の資本としての贈与が特別受益に該当するとされています。

 その場合には、利益を受けた相続人は、いわば相続分の前渡しを受けたものとして、遺産分割において、その特別受益分を遺産に持ち戻して(これを「特別受益の持戻し」といいます)具体的な相続分を算定するのが原則です。例外としては、被相続人が特定の相続人への生前贈与や遺贈を、その人の特別の取り分として確保してやり、持ち戻しをさせないという意思を明らかにした場合(持戻し免除の意思表示をした場合)は、その意思を尊重する必要があるとされており、特別受益の持戻しをしないことになります。

 お父さまからお兄さんへの土地の生前贈与は、持戻し免除の意思表示がない限り、特別受益として取り扱うことができるものと考えられます。お父さまからお兄さんへ生前贈与された土地も含めて相続財産を算定し、お父さんは既に相続により土地を譲り受けているという前提で遺産分割を行うことになるでしょう。

 お兄さんは、既に土地を処分したから関係ないとお話しているとのことですが、贈与された物件が受け取った方の行為によって滅失したり価格が増減した場合には、現状のままであるものとみなして算定することを定めた規定があります(民法904条)。したがって、お兄さんがお父さまから贈与を受けた後に処分した土地は、贈与を受けたときのままの状態とみなして相続財産の価値を評価することになります。

 特別受益持戻しの結果、お兄さんが受けた特別受益の価額が相続分の価額を超えるときは、お兄さんは相続分を受けることができないことになりますので、お父さまの自宅の土地建物は相談者が相続することができると考えられます。


基礎からわかる相続Q&A File.6 生前相続がある場合の相続について

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