基礎からわかる相続Q&A File.8 お墓と賃貸物件の相続
週刊かふう2022年6月17日号に掲載された内容です。
Q.お墓を継ぐ人にどのような権利がありますか。また収益物件が相続財産に含まれる場合に、遺産分割がまとまるまでの収益についてどのように考えればと良いでしょうか。
昨年、父が亡くなりましたが、遺言書などは作成していなかったようです。
父の財産は、自宅や預貯金の他、賃貸アパートがあり、相続人は私と兄、妹、弟です。その4人で集まって相続の話をしたとき、私から自宅とお墓は兄が継いで賃貸アパートは私と妹、弟で継ごうという話を提案しましたが、弟から実家とお墓は自分が継いで守っていくからと逆提案されました。また将来のお墓の管理や寺との付き合いでお金がかかるので、少なくとも相続がまとまるまでに支払われたアパートの賃料はもらう権利があるとも言ってきました。
一方、兄も仏壇を継ぐといって譲りません。私としては、お墓を継ぐのはどちらでも良いと思うのですが、話が平行線でまとまる気配がありません。話し合いが難しい場合に、決める方法があるのでしょうか。また、弟がお墓の管理や寺との付き合いでお金がかかるからアパートの賃料をもらうと言っていますが、これは応じなければならないのでしょうか。
A.祭祀財産については遺産分割の対象となりません。また、収益物件が相続財産となった場合、遺産分割までの間の賃料は、各相続人が相続分に応じて取得します。
お墓や仏壇のような亡くなった方を祀るための財産を祭祀(さいし)財産といいます。
被相続人が亡くなって相続が開始すると、相続財産は遺産分割の対象となりますが、祭祀財産については遺産分割の対象とならないとされており、法律上、祭祀財産は祭祀承継者が承継するとされています。
祭祀承継者は、被相続人の指定によって決まり、被相続人の指定がない場合には慣習によるとされています。お墓を誰が継ぐかということは、弟さんとお兄さんのどちらが祭祀承継者となるかの問題であり、話し合いがまとまらないのであれば、家庭裁判所において、祭祀承継者指定を求める調停や審判を行うことも検討することになります。この祭祀承継者指定を求める手続きは、遺産分割の手続とは違う手続きです。
これで、祭祀承継者が指定されると、祭祀承継者が祭祀財産を受け継ぐことになりますが、祭祀財産の管理に関する費用については原則として祭祀承継者が負担することになります。法律上は祭祀承継者であることを理由に多くの相続分が認められるわけではありませんので、他の相続人の合意がある場合を除き、多く財産をもらうこともできません。
そして、賃貸マンションのように収益物件である不動産が相続財産となった場合、相続人が複数いる場合には、相続開始から遺産分割までの間の賃料は遺産とは別個の財産で各相続人がその相続分に応じて取得するとされています。
お父様の死後、遺産分割が成立するまでのアパートの賃料については、誰が最終的にアパートを取得することになるかに関わらず、ご兄弟4人が4分の1ずつ取得するということになります。
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