新着 不動産相続Q&A File.6 越境した竹木の枝の切り取り
週刊かふう2022年8月26日号に掲載された内容です。
越境した竹木の枝の切り取り
今回は従来の規定から改正された「越境した竹木の枝の切り取り」について、区長と青年会会長のおしゃべりで解説します。
【区長】 突然ですが、クイズです! 竹木の根が、隣の家の敷地から自分の土地へと境界線を越えている。その根を自分で切り取ることができる。〇か✕か?
【青年会会長(以下、青年会)】 〇ですね。
【区長 】ほー、正解だね。では、今度は竹木の枝が境界線を越えている。その枝を自分で切り取ることができる。〇か✕か?
【青年会】 ✕です。昔からよくある法律クイズですよ。
【区長】 と思うよね?(ニヤリ)
【青年会】 ち、違うんですか?
【区長】 勝手に切ってはいけないんだが、状況によっては切ることができるように民法が改正されたんだ(ドヤ顔)
【青年会】 どのような状況なら、切ることができるんですか?
【区長】 まず理解してほしいのは、竹木の所有者に枝を切らせることができる、という点は変わらないということ。
【青年会】 自分では切らずに、所有者に切ってもらうということですね。
【区長】 そう。違うのはここからで、枝を切るように「催告」しても、相当の期間内に切除してくれないときは、自ら枝を切り取ることができるように改正された。
【青年会】 そもそも、相手が聞く耳を持たなくて困っていることが多そうですものね。相当の期間というのは、どれくらいなんでしょう?
【区長】 事案にもよるが、一般的には2週間程度と考えてよさそうだ。くわえて、竹木の所有者が不明のときも、自ら切り取れるようになったんだよ。
【青年会】 今回の一連の民法改正は、所有者不明土地対策の一環ということでしたね。
【区長】 そうだね。権利の所在が分かりにくい竹木が共有の場合、各共有者が枝を切り取ることができるようになった。
【青年会】 共有者の全員で合意しなくてもよいということですね。
【区長】 裏を返せば、枝を切るように催告する相手方は、共有者のうちの1人でいいことになるね。相続などで共有者が多くなっていたり、共有者のうちに行方不明者がいるときは、全員に催告するのも大変だろうから。
【青年会】 最近は空き家問題がよくニュースになっていますが、越境してきた枝に困っている人にとって、この改正は朗報ですね。
【区長】 いままでは、所有者に対して「枝の切除請求訴訟」を起こさなければならなかったのが、条件を満たせば自分で切り取れるようになったからね。これは、大きな変更点だと思うよ。裁判手続きが必要だと負担が大きく、結果的に放置されてしまうこともあるだろうからね。
【青年会】 ただのクイズではなかったのですね。勉強になりました。ところで、今回の改正って、もう施行されているのですか?
【区長】 ん? あ、ちょっと(スマホをごそごそ……)
【青年会】(おや? なんか、区長の様子が……)
【区長】 えっと、令和5年4月1日の施行だね。
【青年会】 ところで、今日は何年何月何日でしたっけ?
【区長】 令和4年8月26日だが。
【青年会】 それなら、まだ施行前ですから、最初のクイズの答え、私が合ってますね!
【区長】 ぐぬぬ……
<法務省HP(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html)より抜粋>
司法書士 幸良 和也(こうら かずや)
令和2年度司法書士試験合格
司法書士法人きゃん事務所 〒901-1304 与那原町字東浜23番地2
Tel:098-882-8177 Fax:098-882-8178