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基礎からわかる相続Q&A File.10 故人のために一部の相続人が各種負担をした場合

基礎からわかる相続Q&A File.10 故人のために一部の相続人が各種負担をした場合

週刊かふう2022年8月19日号に掲載された内容です。

Q.私たち夫婦は、両親のために家も建ててお墓の費用も負担しており、認知症の母の世話もしてきました。相続について弟と同じ権利しかないというのは納得が難しいです。私の相続分をできるだけ多く認めてもらうことができるでしょうか。

 私の両親は、もともと父の土地に建てられた家で暮らしていました。私が30年ほど前に家を建てることにした際に、両親の希望もあってもとの父の家を取り壊し、同じ土地に私が大きな二世帯住宅を建てました。
 その後、両親と私たち家族とで生活していましたが、しばらくして父が亡くなりました。父が亡くなった際に、家族で話し合って父の土地や預貯金は母親が一人で相続することになりました。お墓の費用は私が負担しました。

 母親は10年ほど前に認知症と診断され、認知症が進行してきてからは私と妻が日常的に母の世話をするようになりました。母の症状は徐々にひどくなり、数年前からは徘徊なども出てきて常時見守りが必要な状態でした。今年になって母はしばらく入院した後に亡くなりました。母の遺言書などはありません。

 母の相続人としては、私の他に私の弟がおりますが、私たち夫婦が母の世話が大変なので手伝ってくれるようお願いしても母の面倒をほとんど見ていなかったので、母の遺産を相続する割合は少なくていいと思っています。ところが、弟は母の遺産の土地について兄弟の権利は平等なので、土地を半分渡すか半分の権利を買い取るよう求めてきています。

 私としては、両親のために家も建てて、お墓の費用も負担しており、土地について弟と同じ権利しかないというのは納得が難しいです。私の相続分をできるだけ多く認めてもらうことができるでしょうか。

A.共同相続人の中で、被相続人の財産の維持または増加に「特別の寄与」をしたと認められる程度の貢献をした人がいるときに、その人に相続財産のうちから相当額の財産を取得させる制度です。これが認められるかは、親子という身分関係によって通常期待されるような程度の貢献を超えたある程度大きな貢献があれば相続人の寄与が「特別の寄与」と認められます。

 今回、相談者の相続分が多く認められるかどうかは、相談者の寄与分の請求が認められるかどうかにかかってきます。
 寄与分とは、共同相続人の中で、被相続人の財産の維持または増加に「特別の寄与」をしたと認められる程度の貢献をした人がいるときに、その人に相続財産のうちから相当額の財産を取得させる制度です。
 寄与分が認められるべき貢献の種類としては、財産上の給付以外にも、労務の提供や被相続人の療養看護などがあります。

 まず、相談者がご両親の希望で二世帯住宅を建築した費用については、寄与分としては認められません。両親の希望であったとはいえ、住宅は相談者さまの財産となっておりますので、建築費用はお母さまの財産の維持または増加に寄与した費用とはならないからです。
 他方で、お母さまが相談者さまの建てた住宅で長年生活されたとのことですから、お母さまがその間無料で相談者の住宅を使用できたことについては寄与分として認められると考えられます。もっとも、相談者も両親の土地を無償で使用できている状態ですから、賃料相当額全額が寄与分として認められるわけではなく、最終的には裁判所が判断する裁量的割合でのみ寄与分が認められると考えられます。

 次に、お母さまの面倒を見ていた点については、単に生活の面倒を見たというだけではなく、親子という身分関係によって通常期待されるような程度の貢献を超えたある程度大きな貢献があれば相続人の寄与が「特別の寄与」と認められます。
 相談者が認知症になってしまった後のお母さまの常時見守り等を行ったことによって、職業付き添い者の費用の支払いを免れたと言えるような場合は、通常の扶養の範囲を超えているといえ、これを寄与分として算定する余地があります。
 お墓の費用については、被相続人の財産の維持管理とは言い難く、寄与分としては認められないと考えられます。

基礎からわかる相続Q&A File.10 故人のために一部の相続人が各種負担をした場合

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