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基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.2 遺産分割での対応ともめるおそれのある遺言書について

基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.2 遺産分割での対応ともめるおそれのある遺言書について

週刊かふう2023年2月17日号に掲載された内容です。

 

Q. 父名義となっている実家について、母は市役所で名義変更を勧められ、全て弟に相続させようと考えたようです。もめないように母に遺言書を用意してほしいと考えています。母が元気なうちに済ませたいのですが、どうすればいいでしょうか。

 私の父はかなり前に他界しましたが、実家の土地建物の名義は今でも父のままです。父の家族は、亡くなった父、母、姉、私、妹、弟がいます。父の財産は、他にも不動産がありますが、そちらについても父の名義のままです。
 実家には、母と一緒に妹が住んでおり、妹が母の面倒を見ています。妹は、普段の母の身の回りの世話の他、母の通院の送迎や仏壇ごとまでやってくれています。
 弟は、県外に出て家庭を持っていて、仏壇ごとは妹に任せています。私と姉も実家を離れ、県内に住んでいます。

 昨年、母は市役所で父名義となっている実家について、名義変更を勧められたそうです。そこで母は、弟に全て相続させようと考えたようです。
 私自身は財産を相続するつもりはないのですが、母と一緒に住んでいる妹には相続させるべきと考えていて、姉も同意見でした。
 私としては、もめないように母に遺言書を用意してほしいと考えています。母が元気なうちに済ませたいのですが、どうすればいいでしょうか。

A. もめないために遺言を残してほしいとのことですが、相続人の遺留分(最低相続分)を侵害するような内容の遺言書を作成したとしても、余計にもめることになってしまうおそれがあります。

 相談者のケースは、①既に発生しているお父様の相続と、②将来におけるお母さまの相続についての対応の二つの問題があります。

 まず①お父さまの相続についてですが、その相続人はお母さまときょうだい4人(相談者と姉妹弟)となります。お父さまの相続について、法定相続分は、お母さまが相続分2分の1、他のきょうだいが8分の1ずつとなっています。そのため、お母さまは弟さんに全て相続させることを望んでいるようですが、お父さまの遺産全体についてはお母さま一人で決められるものではないことを説明することになるかと思います。

 相談者とお姉さんは財産を相続するつもりはないとのことです。この点、法律上の相続放棄をするためには、相続があったことを知ったときから3カ月以内に行わなければならないので現時点の相続放棄はできませんが、相続人らでの協議を行う際に自らの相続分をなしとする合意をすることは可能です。
 また、相談者は妹さんを気にかけておられますが、相談者の相続分を妹さんに譲渡することも可能です。妹さんが実家の権利を取得したいけれど相続分が不足しているという意向であれば、相談者が相続分の譲渡などで協力することもありうるかもしれません。
 なお、相続登記について令和6年4月1日から3年間の猶予期間が設けられますが、相続登記が義務化されます。できれば、猶予期間内に遺産分割協議を成立させて相続登記をすることが望ましいでしょう。

 次に、②将来におけるお母さまの相続について考えてみましょう。相談者としては、もめないために遺言を残してほしいとのことですが、相続人の遺留分(最低相続分)を侵害するような内容の遺言書を作成したとしても、余計にもめることになってしまうおそれがあります。遺留分を侵害された相続人が他の相続人に対し、遺留分侵害請求を行うことが考えられるからです。
 お母さまの遺言の内容については、お母さまが決めることですので、もし今のお母さまの希望(弟さんに全て相続させる)の通りの遺言書を作成した場合は、他の相続人の遺留分を侵害することになりますので、現時点でお母さまに遺言書の作成を促しても、もめることを避けることは難しいかもしれません。お母さまとゆっくり話し合って、遺留分(最低相続分)についてご配慮いただけるようになってから、遺言書の作成を勧めてはいかがでしょうか。
 また、お父さまの遺産分割が終わっていない状況では、お父さまからお母さまが相続する財産について明確に記載した遺言書を作成することは難しいので、その点も注意が必要です。

基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.2 遺産分割での対応ともめるおそれのある遺言書について

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