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基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.4 賃借人が死亡した場合について

基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.4 賃借人が死亡した場合について

週刊かふう2023年4月21日号に掲載された内容です。

 

Q. 父から相続した賃貸アパートの一室を貸していた男性の内妻(内縁関係にある妻)と名乗る方から、賃借人が亡くなったと連絡がありました。この内妻の方と新しく賃貸契約を締結してもよいでしょうか。

 私は、父から相続した賃貸アパートを所有しています。アパートの一室を男性に賃借していたのですが、その賃借人の内妻(内縁関係にある妻)と名乗る方から、賃借人が亡くなったと連絡がありました。この方には父の代からアパートを貸していましたが、契約等の書類などは残っていません。
そして、この内妻の方は、これまで賃借人と同居していたので、今後は自分(内妻)が賃借人としてこれまで通り生活していきたいので、あらためて賃貸借契約を締結したいとのことでした。もとの賃借人の方も亡くなっていますし、内妻の方と新しく賃貸契約を締結していいのでしょうか。

A.契約関係にある方が亡くなった場合の処理については、どのような契約かによって違ってきます。建物の賃貸借契約の場合には、契約の一方当事者が亡くなった場合にどうなるのか見ていきましょう。

 本件では、書類が残ってないとはいえお父さまと賃借人との間でアパートの賃貸借契約が成立しており、お父さまの貸主としての地位は相談者に相続されています。同様に、アパートを賃借されている方の賃借人としての地位も相続の対象となり、賃借人の相続人の方が賃借人としての地位を相続することになりますから、アパートの賃貸借契約が当然終了するわけではありません。

 賃貸人である相談者としては、まずは亡くなった賃借人の相続人がどなたで何人いるのか、賃貸借契約の継続を希望するのかといった点を確認することが必要となります。内妻の方は、原則として相続人とはなりません。例外として、亡くなった賃借人に相続人がいない場合には、その賃借人と同居していた内縁の関係にあった方は賃借人の権利義務を承継することができるとされています(借地借家法36条)。この場合は、賃貸借契約上の賃借人の地位が内妻の方に承継されるので、相談者としては改めて内妻の方と賃貸借契約を締結し直す必要はありません。

 賃借人の方に相続人がいる場合には、賃借権も相続の対象となります。仮に、相続人の方が遠方に住んでいて賃借中のアパートを利用することが考えられないとしても、賃借人が死亡したときから相続人が賃貸借契約を相続により承継していることになります。相続人が複数いるときには、各共同相続人はその相続分に応じて権利義務を承継することになります。
 もちろん、賃借人の相続人がいずれもアパートを使用する必要性がなく賃貸借契約関係の存続を希望しない場合には、貸主である相談者と相続人との間で賃貸借契約を解約して終了させることはあり得ます。

 本件においては、まず、相談者において内妻の方に協力を打診して亡くなった賃借人の相続人が存在するのか調査を行うことになるでしょう。
 そして、相続人が存在する場合には、相続人が賃貸借契約の継続を希望するか確認し、相続人が賃貸借契約の継続を希望しない場合には、合意解約を行い、内妻の方と賃貸借契約を新たに締結するかを検討することになるでしょう。逆に相続人が賃貸借契約の存続を希望する場合には、相談者は相続人から賃料を受領し、アパートの利用については相続人と内妻との間で協議してもらうことになります。

 他方、調査の結果、賃借人の相続人がいないことがわかれば、賃借人と同居していた内妻の方が賃貸借契約を承継することができることになるので、特に契約を締結し直す必要はありません。
 

基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.4 賃借人が死亡した場合について

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