新着 不動産相続Q&A File.19 DV被害者等の保護のための特例
週刊かふう2023年9月22日号に掲載された内容です。
DV被害者等の保護のための特例
令和3年4月に法改正等された所有者不明土地解消に向けた見直しの中で、不動産相続に関する身近な情報を中心に提供します。今回は「DV被害者等※の保護のための登記事項証明書等の記載事項の特例」について、区長と青年会会長のおしゃべりで解説します。
【区長】 相続登記義務化の開始(施行)まで約半年になったが、青年会のまわりでは認知度は上がってきているかね。
【青年会会長(以下、青年会)】模合の場で話題を出しますが、全く知らない方や名前だけといった方が多いような気がします。その都度、「かふう」を読むことを紹介しています。
【区長】 施行は来年(令和6年)4月1日だが、施行前の相続も施行から3年以内に相続登記手続きを行う必要がある。すなわち令和9年3月31日までに相続登記をすることになる。
【青年会】 それは大変ですね。施行前の相続は膨大な数があり、相続を何代も放置しているケースでは相続人も多く、中には面識のない相続人も少なくないから時間がかかりますよね。来年4月を待たず今から手続きを始める必要がありますね。そのためにも相続登記義務化の認知度を高める必要がありますね。
【区長】 今回の本題に入ろう。青年会は登記簿(記録)を誰もが自由に見ることができることは知っているだろうか。登記記録には所有者の住所と氏名が記載されているので、相続登記が行われていれば公共工事のための用地取得や民間の取引も円滑に行うことができるのだ。
【青年会】 相続登記が行われていなければ死者名義のままで連絡が取れず、何代も相続をしていなければ手続きが難航する。いわゆる所有者不明土地ということですね。ところで、誰もが簡単に調査できるとなると不都合は生じませんか。例えば住所を知られたくない方は土地を求めたいが、住所を知られるために断念することになりませんか。
【区長】 相変わらず鋭いな。国は所有者不明土地を解消するために相続登記を義務とし不動産の情報を整備する改正をした。一方で義務としたからには一定の場合にはプライバシーの保護を図る必要がある。例えば、DV被害者等である場合に加害者が登記記録を調査することでDV被害者等の現住所を知ることができてしまうと生命身体に危害を及ぼすおそれがある。そうなるとDV被害者等は相続財産を取得したくても危害をおそれて相続することをあきらめることにもなりかねない。
【青年会】 どのような改正がなされたのですか。
【区長】 DV被害者等が登記を受ける際には実際の住所に代わり、その者から申し出された場所(例えば、その者から委任を受けた弁護士の事務所や被害者支援団体等の住所、法務局等の住所等)を登記記録に記載することが想定されているようだ。
【青年会】 それは安心ですね。相続登記や住所変更登記等の義務化を設けた代わりにDV被害者等の保護のための措置を法律に盛り込んだのですね。
【区長】 現在もDV被害者等については住所を知られないよう前住所や前々住所を住所として登記申請することを認めているが運用上の取り扱いにとどまっている。今回、登記義務化によってDV被害者等の保護の観点から現住所を公開しない必要性は一層高まり法制化に踏み込んだ。登記名義人になることを悩んでいるDV被害者等は、法務局や司法書士に相談してみてはいかがだろうか。
※DV被害者等とは(適用対象者)
①配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条2項に規定する被害者
②ストーカー行為等の規制等に関する法律第6条に規定するストーカー行為等の相手方
③児童虐待の防止等に関する法律第2条に規定する児童虐待を受けた児童のほか、これらに準ずる者
④右記に限らず、第三者から生命・身体を害する旨の脅迫行為を受けている者など
<法務省HP「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」から抜粋>
司法書士 喜屋武 力(きゃん つとむ)
平成7年度司法書士試験合格
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