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基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.10 お墓と位牌と祭祀承継について

基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.10 お墓と位牌と祭祀承継について

週刊かふう2023年10月20日号に掲載された内容です。

 

Q..父が亡くなり、私と兄と弟の3人が自宅の土地建物や預貯金の他、賃貸アパートなどの財産を相続をすることになりました。母はすでに他界しており、自宅には仏壇があります。相続の話をした際に、弟が実家と仏壇とお墓は自分が継いで守っていく、将来の祭祀行事やお墓の管理でお金がかかるから、アパートの権利ももらう必要があると言ってきました。兄も仏壇を継ぐといって譲りません。話し合いではなかなかまとまらない場合どのように決めればいいのでしょうか? また弟の言い分に応じなければならないのでしょうか?

 昨年、父が亡くなりました。母はだいぶ前に他界しており、父は遺言書などを作成していませんでした。
 父の財産は、自宅の土地建物や預貯金の他、賃貸アパートがあります。自宅には仏壇があり、相続人は私と兄、弟の3人です。
 みんなで集まって相続の話をしたとき、私から自宅とお墓は兄が継いで賃貸アパートは私と弟で継ごうという話を提案したところ、弟が実家と仏壇とお墓は自分が継いで守っていく、将来の祭祀行事やお墓の管理でお金がかかるから、相当額のアパートの賃料が入ってくるようアパートの権利ももらう必要があると言ってきました。兄も仏壇を継ぐといって譲りません。

 私としては、お墓や仏壇を継ぐのは兄でも弟でも良いと思うのですが、話が平行線でまとまる気配がありません。話し合いが難しい場合に、決める方法があるのでしょうか。
 また、弟がお墓の管理や寺との付き合いでお金がかかるから相当額のアパートの賃料が入ってくるアパートの権利をもらうと言っていますが、これは応じなければならないのでしょうか。

A.相続では財産の分け方以外にも、お墓や位牌など祭祀財産の分け方が問題になることもあります。話し合いでまとまらないときは家庭裁判所での手続きが選択肢にありますが、どのような点から判断されるのか見ていきましょう。

 お墓や位牌のような亡くなった方を祀るための財産を祭祀財産といいます。
 被相続人が亡くなって相続が開始すると、相続財産は遺産分割の対象となりますが、祭祀財産については遺産分割の対象とならないとされております。法律上、祭祀財産は遺産とは別扱いで、祭祀承継者が承継するとされています。祭祀承継者は、第一に被相続人の指定によって決まり、第二に、被相続人の指定がない場合には慣習によるとされています。

 お墓を誰が継ぐかということは、弟さんとお兄さんのどちらが祭祀承継者となるかの問題であり、お二人を含めた相続人全員での話し合いによって話し合いがまとまれば、その結論によることになります。話し合いがまとまらないのであれば、家庭裁判所において祭祀承継者指定を求める調停や審判を行うことを検討することになります。これらの祭祀承継者指定を求める手続きは、遺産分割の手続きとは別個の手続きです。

 祭祀承継者指定を求める審判においては、祭祀承継者指定について被相続人の指定がなかったかどうかや慣習の存在について検討され、これらがないとされた場合に家庭裁判所が誰を祭祀承継者として指定するか判断することになります。その際は、被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあって、被相続人に対し慕情、愛情、感謝の気持ちのような心情を最も強く持ち、被相続人が仮に生存していたとすれば、その候補者を祭祀承継者にしていたであろうといえる者が指定されるべきとされています。
 そして、祭祀承継者が指定されると、祭祀承継者が祭祀財産を受け継ぐことになりますが、祭祀財産の管理に関する費用については原則として祭祀承継者が負担することになります。法律上は祭祀承継者であることを理由に多くの相続分が認められるわけではありませんので、他の相続人の承諾がある場合を除き、多く財産をもらうこともできません。相談者としては、祭祀承継者が指定されたとしても、その方に相続分を譲る必要はなく、法定相続分通りの相続分を主張することができることになります。

基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.10 お墓と位牌と祭祀承継について

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