基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File11 法定相続人以外への相続と共有状態の解消
週刊かふう2024年11月15日号に掲載された内容です。
Q.
私は自宅不動産を所有し、両親の死後、兄と賃貸不動産を共有することになりました。しかし、税金や管理方法について意見が合わず、調整に苦労しています。最近、妻が亡くなり、妻の連れ子が生活をサポートしてくれています。私は、将来的に自分の財産を妻の連れ子に相続させたいと考えていますが、兄との関係が悪く、賃貸不動産の管理をめぐって連れ子に負担をかけるのではないかと心配しています。生きているうちに、共有の問題を解消する方法を探しています。
私は、自宅不動産を所有しています。また、しばらく前に両親が亡くなった際に、兄と相続についての話し合いで、親が所有していた賃貸不動産については二人で共有とすることになりました。しかし、賃貸不動産については、共有になった後も税金の関係や不動産管理方法等で、兄と意見が合わないことが多く、方針の調整に苦労しています。
私は妻と生活していましたが、その妻が先日、亡くなってしまいました。私と妻との間に子はいませんが、近くに妻の連れ子が住んでいます。妻の連れ子は、妻の死後も私の生活のサポートをしてくれており、今でも私が病院に行く際の送迎などをしてくれ助かっています。
私としては、自分が死んだときには、妻の連れ子に私の財産を相続してほしいと考えています。ただ、心配なのが私の兄と妻の連れ子との折り合いが悪く、妻の連れ子が私の財産を相続した場合に、賃貸不動産の管理等をめぐって、妻の連れ子の負担となってしまわないか心配しています。私が生きているうちに、共有の問題を解消する方法があるでしょうか。
A.子や配偶者等の法定相続人ではない方へ相続してもらいたいと希望する場合の方法について解説いたします。また、共有関係となっている不動産について、共有であることから問題が生じることがあります。共有状態の解消の方法や検討すべき事項についても見ていきましょう。
いわゆる連れ子には、そのままでは相続権が認められていません。相談者には子どもがいらっしゃらないとのことですから、もし相談者について相続が発生した場合には、相続人は兄弟(法定相続人)である兄ということになります。
死後に法定相続人でない連れ子へ財産を承継させる主な方法としては、養子縁組と遺贈があります。
養子縁組は、養子となる者に養親の嫡出子としての法的地位を与える手続きです。このとき、養子と養親の血族との間に法定血族関係も発生します。相談者が妻の連れ子と養子縁組の手続きをとれば、妻の連れ子は相談者の子として相続人となり、財産を引き継ぐことができます。もっとも、養子となると戸籍上養親の姓となるなど、社会生活上の影響があるので、養子となる方とよく話し合う必要があります。
次に、遺贈による方法は、相談者が亡くなった時に備えて遺言を作成し、遺言によって財産を与える方法です。遺言によって法定相続人以外の方へ遺産を与えることもできますから、このような遺言も可能です。もっとも、相続税の観点からは、遺贈を受けた方が法定相続人以外の者の場合、基礎控除の適用がないなど、法定相続人への相続と比べて相続税がかかってしまう可能性があります。相続税が心配ということであれば、養子縁組を利用することが有利となる可能性があります。
そして、賃貸不動産については、兄と共有となっているとのことですが、共有状態の解消に向けた手続きとしては、当事者間での協議がまとまらない場合は、共有物分割を求めて共有物分割調停をする手段もしくは共有物分割請求訴訟をする手段があります。共有物分割請求訴訟の途中でも、裁判所が判決を出す前に当事者同士で和解をすることもできます。
共有物分割の方法としては、大きく、現物の不動産を分割する現物分割、不動産全体を売却して代金を分ける換価分割、共有者の1人が他の共有者の持ち分を取得する代わりに対価を支払ってお金で解決する価額賠償の3つがあり、どれが適当かはケース・バイ・ケースとなります。判決となった場合も、主なパターンはこの3つとなります。
賃貸物件については、通常現物分割はできず、判決による換価分割では競売となりますが、競売による売却では買い手をじっくり探す任意売却と比べて売却価額が低くなってしまう可能性があります。価額賠償についても、適切な金額を設定して支払えるのか、誰が取得するのか等の問題があるでしょう。
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