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基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File4 遺言と遺言執行者について

基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File4 遺言と遺言執行者について

週刊かふう2024年4月19日号に掲載された内容です。

 

Q.私は自宅(土地・建物)といくつかの不動産を所有しています。私も妻も高齢になり、自分の死後のことを考えるようになりました。私どもには子どもはなく、私には姉がいますが、遠方に住んでいます。私の死後は自宅は妻へ、所有する不動産については売却し妻と姉へ、また一部はユニセフへの寄付を考えていますが、妻も姉も高齢のため、財産の管理や処理などスムーズに行えるか心配です。この場合どのような方法があるのでしょうか?

 私は、およそ50年前に土地を購入し自宅を建てました。名義は土地建物とも私の名義です。また、自宅の他にも賃貸中の不動産をいつくか所有しており、これらは私が業者にお願いして管理してもらっています。
 自宅に私と妻の2人で暮らしてきましたが子どもはなく、私の親族としては遠隔地に住む姉がいます。
 私も妻も高齢になり、私が死んだ後のことを考えるようになりました。私と妻が住んでいた自宅については、引き続き妻が使用できるように妻に継いでもらいたいと考えています。賃貸中の不動産については、大部分を法律で定められている分に応じて妻と姉に継いでもらい、一部は売却して私の幼少期に食糧援助をしてくれたユニセフ(国連児童基金)に寄付してもらいたいと思っています。
 ただ、妻も姉も高齢であり、姉は遠隔地に住んでいることもあって、私が亡くなった後の不動産の管理や処分をスムーズに行っていただけるか心配です。
 私の希望を実現するためには、どのような方法があるでしょうか。

A.自らの死後に、自分の財産の処理を指定する方法として遺言があります。遺言は遺言書を作成しなければなりませんが、形式について法律の定めがあります。また、相続発生後に不動産の処理が必要なのに相続人の各種事情でそれらが難しい場合には遺言執行者の制度を利用することが考えられます。これらについて見ていきましょう。

 仮に相談者が亡くなったとすると、相続分は配偶者が4分の3、姉が4分の1となります。配偶者の相続分が大きいので、相談者の死後に自宅を配偶者が相続することに問題は生じないと思われます。

 他方で、相談者の希望として不動産の一部を売却して寄付を行いたいということがありますので、通常は亡くなった後に財産の寄付を行う場合は遺言書を作成し、どの不動産を売却してどこに寄付してほしいというようなことを書き記すことになります。実務では、自分で遺言を書く自筆証書遺言と公証人役場で公証人に作成してもらう公正証書遺言がよく使われますが、遺言の形式や方式には法的に厳格な定めがあるので注意が必要です。

 自筆証書遺言では、遺言者がその全文と日付および氏名を全て自分で書き、これに押印をしなければなりません。添付する財産目録だけはパソコンで作成しプリントアウトすることもできますが、それ以外は全文自書が必要です。自筆証書遺言を作成した場合には、法務局における自筆証書遺言の保管制度を利用することで、紛失などを避けることができます。

 公正証書遺言は、遺言を依頼する人(被相続人)が公証人の面前で遺言の内容を口授しそれに基づいて公証人が文章にまとめるもので、実務上は事前に必要書類を準備して公証人役場と打ち合わせが必要になります。

 今回の相談では配偶者と姉が高齢に加え姉が遠隔地に住まいということから、相談者が遺言書を用意しても、遺言書のとおりに不動産等を処理することが難しいかもしれません。相談者もこの点を心配しておられますが、このような場合には遺言書の内容で遺言執行者を指定することが考えられます。

 遺言執行者とは、遺言の内容を実現する権限とそれに付随する各種義務を有する者のことです。遺言執行者を指定することで、遺言執行者が遺言書の内容を実現してくれることが期待できます。遺言執行者となる者には未成年者と破産者を除いて制限はありませんが、財産目録の作成・交付義務や善管注意義務等※があり法律の知識が必要ですので、専門家である弁護士に依頼した方が無難と考えます。
※ 社会通念上あるいは客観的に見て当然要求される注意を払う義務のこと。

基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File4 遺言と遺言執行者について

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