新着 不動産相続Q&A File.20 所有権の登記名義人についての符号の表示
<法務省HP「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」より引用>
週刊かふう2023年10月27日号に掲載された内容です。
所有権の登記名義人についての符号の表示
令和3年4月に法改正等された所有者不明土地解消に向けた見直しの中で、不動産相続に関する身近な情報を中心に提供します。今回は「所有権の登記名義人についての符号の表示」について、区長と青年会会長のユンタクで解説します。
【区長】 最近、色んなところで土地の開発事業が行われているようだね。
【青年会会長】(以下、青年会) もし、この地域で開発の話があれば区長の出番です!
【区長】では、土地の開発事業の計画を立てることになったとしよう。その際は、登記簿(登記記録)を確認することになる。
【青年会】 土地の使用や買収などの交渉を行うためには、所有者を調べる必要がありますね。
【区長】ところが、登記簿に記載されている所有者の住所は必ずしも現在のものではないから、所有者に連絡が取れるとは限らない。
【青年会】 住所を移転したとしても、登記簿の住所はそのままになっていることも多いようです。
【区長】 それが所有者不明土地の問題の原因の一つにもなっていたんだ。そこで、令和8年4月から住所や氏名等に変更があったときの登記申請が義務化されることになった。
【青年会】 それなら、所有者の居場所が分からないということも減りそうですね。
【区長】でも、住所や氏名の情報が正しく登記簿に記載されていても、所有者と連絡がつかないということがあるんだよ。
【青年会】 住所と氏名が正しくても……、謎かけですか? まるでスフィンクスですね!
【区長】「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足で歩く生き物は?」スフィンクスの謎かけか。
【青年会】 答えは「人間」。赤ちゃんは四つんばい、成長して二本足で立ち、老いるとつえをつくので三本足。朝・昼・夜は人間の一生を例えたものです。
【区長】そうだな。人間の一生を考えてみれば、私の言った謎は解けるぞ。夜の次は?
【青年会】 なるほど!所有者が死亡していた場合ですね。
【区長】 そう。所有者が亡くなっていた場合、その不動産の所有権はどうなるのかな?
【青年会】 遺産分割協議がなされないうちは、相続人全員の共有状態になりますね。
【区長】 つまり、その土地を買い取ろうと思ったら、相続人に連絡を取らなければならない。しかし、第三者が他人の戸籍や住民票を取得するには制限がある。相続人を調査するにも、時間や手間がかかるだろう。仮に相続人が判明しても、遺産分割協議がまとまるかは?だ。
【青年会】 それなら、事業の対象に別の土地を選ぼうかとなりますね。最初からそうと分かっていれば、余計なコストも防げます。
【区長】そこで問題なのは、登記簿を見ても所有者が亡くなっているかどうかは分からないということだ。
【青年会】 相続登記がされなければ、そのままですね。
【区長】今回の改正では、登記官が住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)などを通じて取得した死亡情報に基づいて、所有権の登記名義人が死亡した事実を符号によって表示する制度ができたんだ。
【青年会】 その「符号」とは何でしょう?
【区長】 なんらかの符号だよ。
【青年会】 また謎かけですか? 笑
【区長】実は、その符号についてはまだ決まっていないんだ。例えば、氏名に波線や特定の記号を付けることが想定されている。
【青年会】 単に「死亡」と記載すればよいのではないですか?
【区長】プライバシーや遺族の心情等への配慮から、直接的な表現は避けることになったんだ。
【青年会】 その配慮は自分には思い浮かびませんでした……。そもそも、登記簿に死亡の情報が記載されることについてはどうなんでしょう。
【区長】できるだけ現在の権利関係を公示するという不動産登記制度の趣旨や個人情報保護法では、生存する個人の情報が対象となっていることなどから認められるという考えだ。相続登記が義務化されるとはいえ、その申請がされるまでには間があるから、死亡の表示をする合理性もあるということだね。
司法書士 幸良 和也(こうら かずや)
令和2年度司法書士試験合格
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