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基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File.2 外国在住の相続人との遺産分割協議書の作成について

基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File.2 外国在住の相続人との遺産分割協議書の作成について

週刊かふう2024年2月16日号に掲載された内容です。

 

Q.一昨年、夫が亡くなり、夫の財産を息子と娘の3人で分けることにしました。しかし、息子は遺産相続を放棄する。娘は外国に嫁いで住んでいるため、日本に帰ることは難しいとのことでした。このような場合、遺産分割の手続きの流れはどうなるのでしょうか?

一昨年、夫が亡くなってしまいました。夫は遺言書などを作成していませんでしたが、夫の財産としては預金と夫が私とともに住んでいた家の土地建物があります。
 私と夫との間には、息子と娘がいます。息子は県外で生活しており、娘は外国の方と結婚して外国にいます。そろそろ夫の遺産の名義をちゃんとしないとと思い、息子と娘に連絡を取ると、息子は遺産はいらないから放棄をするという話でした。娘は、権利なので預金はきちんと分けてほしいが、不動産については母である私が取得すればいいのではないかとの意向でした。

 このような場合、遺産分割の書類を作ることになると思うのですが、どのような書類を作ればいいのでしょうか。息子は放棄すると言っているので、息子の関与は必要ないのでしょうか。また、娘は子どもが小さくこちらに出向くことは当面難しいし、外国なので印鑑証明等はないとの連絡がありました。このような状況で、書類を作ることはできるのでしょうか。

A.遺産分割協議の場面で、「よく私は遺産はいらないから放棄します」という方がいらっしゃいます。そのような意向をお持ちの方について、相続の場面でどう対応すればいいのか見ていきましょう。また、日本の印鑑登録という制度は、世界的に見れば珍しい制度です。外国にお住まいの方が相続人になる場合、どのような手続きが必要なのかについてもご説明します。

 誰かが亡くなった時に、遺言などが用意されていなかった場合、その方が生前持っていた財産(これを遺産と言います)を各相続人で分けなければなりません。本件の相続人は、亡くなった方の配偶者である相談者と子である息子さんと娘さんの3人が相続人となります。そして、遺産をどのように分けるかどうかは、相続人全員の合意があれば自由に決めることができます。遺産をどのように分けるかについての協議を遺産分割協議と言います。

 今回、息子さんは「遺産はいらないから放棄をする」とおっしゃっているとのことですが、法律上の相続放棄は原則として相続発生時から3カ月以内に家庭裁判所で手続きをとる必要があり、息子さんは相続放棄ができる期間を過ぎている状態だと考えられます。そうすると、息子さんも相続人の1人として遺産分割協議に参加していただく必要があります。

 そして、遺産分割協議がまとまったときには、遺産分割協議書を作成することになります。遺産分割協議書は、全相続人が同じ遺産分割内容で合意したことを証明するために作成する書面で、まとまった遺産分割協議の内容に基づいて不動産の登記名義を移転しようとする場合や、銀行で口座の解約等を行う際などに、遺産分割協議書が必要となります。

 遺産分割協議書を作成するときの注意点として、まず印鑑は実印を使用し、印鑑証明書を添付することがあげられます。不動産の登記名義を移転するときや銀行での手続きでも、印鑑証明書の提出ないし確認が必要となるからです。次に、不動産の表記は住所ではなく、登記簿に記載されたとおりの表記にしておくことが望ましいです。

 次に、娘さんは外国にお住まいとのことなので、印鑑登録がないことが考えられます。この場合、実印および印鑑証明書の代わりとしてサインをし、その国の日本大使館、日本領事館等で、サイン証明書をもらって添付することになります。その国の大使館等にお問い合わせしていただくことが良いでしょう。
 娘さんは移動が難しい状況とのことですが、遺産分割協議書は郵送などによって持ち回りで作成することが可能です。

基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File.2 外国在住の相続人との遺産分割協議書の作成について

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