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基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File8 贈与時には相続人でない者と特別受益

基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File8 贈与時には相続人でない者と特別受益

週刊かふう2024年8月16日号に掲載された内容です。

 

Q.私の父は、昨年亡くなり、遺言書等は作成されていませんでした。母も既に亡くなっているので、私と姉が父の相続人になるはずでしたが、姉は7年ほど前に亡くなっており、私と姉の子(甥)が相続人になるようです。

 父は資産があり、預貯金、自宅の土地、建物のほか、自宅の敷地の一部として利用されていた隣の土地、賃貸マンションを所有していました。しかし姉が生前、父と同居していたこともあって姉が亡くなる前に自宅の土地建物を姉に贈与し、自宅の隣の土地は甥に贈与しました。
 姉や甥はもうかなり財産をもらっているので、マンションは私が取得したいと考えていますが、甥は、父からの贈与は考慮せずに賃貸マンションを分けるべきだと言っています。

 私としては、姉や甥は既に父から相当の財産をもらっているのに、賃貸マンションについても平等に分けるというのは、納得できません。
 残された賃貸マンションは私が取得することを主張することはできないでしょうか。

 私の父は、昨年亡くなりました。遺言書等は作成されておらず、母も既に亡くなっています。私と姉が父の相続人になるはずでしたが、姉は7年ほど前に亡くなっており、私と姉の子(甥)が相続人になると思います。

 父はある程度資産があり、預貯金や自宅の土地建物の他に自宅の敷地の一部として利用されていた隣の土地、そして賃貸マンションを所有していました。しかし父は、姉が同居していたこともあって姉が亡くなる前に自宅の土地建物を姉に贈与し、自宅の隣の土地は甥に贈与しました。

 姉や甥はもうかなり財産をもらっているので、マンションは私に取得させてほしいと甥に話をしました。ところが、甥は、姉が贈与を受けたことは自分とは関係なく、また、甥が父から贈与を受けた時は姉が存命で甥は相続人としての立場にないから、父からの贈与は考慮せずに賃貸マンションを分けるべきだと言っています。

 私としては、姉や甥は既に父から相当の財産をもらっているのに、さらに残った賃貸マンションについても平等に分けるというのは、納得できません。残された賃貸マンションは私が取得することを主張することはできないでしょうか。

A.相続の前に生前贈与等で生じた相続人間の不平等を是正する制度として特別受益があります。特別受益の対象は相続人が原則ですが、特別受益を受けた方が先に亡くなった場合や贈与時は推定相続人でなかった方が相続人となったなど、そのような事例での特別受益の考え方を見ていきましょう。

 相続人の中に、被相続人から遺贈や多額の生前贈与を受けた人がいる場合、その受けた利益のことを「特別受益」といいます。

 特別受益を受けた相続人は相続分の前渡しを受けたものとして、遺産分割において、その特別受益分を遺産に持ち戻して(これを「特別受益の持戻し」といいます)、具体的な相続分を算定するのが原則です。
本件では、
①姉への土地建物の贈与、
②甥への土地の贈与
それぞれが特別受益に当たるかどうかを検討することになります。

 ①姉への贈与については、特別受益に当たることになりそうですが、お姉さんがお父さまより先に亡くなっているのでお姉さん(被代襲者)の代わりに相続する甥(代襲相続人)との関係が問題になってきます。

 裁判所は、被代襲者についての特別受益は、その後に被代襲者が死亡したことによって代襲相続人となった者との関係でも特別受益に当たると判断しています。そのため、①姉への土地建物の贈与については、甥との関係でも特別受益となります。

 また、②甥への土地の贈与については、甥が贈与を受けた時点では、甥は相続人となるべき立場にはありません。このような場合、裁判所は、相続人でない者が、被相続人から贈与を受けた後に、被代襲者の死亡によって代襲相続人としての地位を取得したとしても、その贈与が実質的には被代襲者に対する遺産の前渡しに当たるなどの特段の事情がない限り、代襲相続人の特別受益には当たらないというべきであるとしています。

 このように、代襲相続人への贈与は当然に特別受益に当たるというわけではないのですが、本件では、お父さまが甥に贈与した土地は、お姉さまに贈与された自宅の敷地として利用されていたとのことですから、自宅敷地の一部をお姉さんの将来の承継人である甥名義にしたもので実質的にお父さまからの遺産の前渡しと評価することが可能であると思われますので、この点についても特別受益に当たると考えられます。

 そうすると、賃貸マンション等残りのお父さまの遺産については、等分に分けるということではなく、既に甥は①と②の特別受益があることを前提として遺産分割を行うことができます。

基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File8 贈与時には相続人でない者と特別受益

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