新着 不動産相続Q&A File.31 「個人事業主の事業継承」について
週刊かふう2024年9月27日号に掲載された内容です。
「個人事業主の事業承継」について
不動産相続について司法書士の経験と目線から実践的なアドバイスや解決策を提供します。今回は、法人とは異なる「個人事業主の事業承継」について、区長と青年会会長のユンタクで解説します。
【青年会会長(以下、青年会)】 区長~、ジギョウショウケイって知っていますか?
【区長】「事業承継」のことだろ。もちろん知っておるぞ! 近年、経営者の高齢化と後継者問題で悩んでいる人が多いようで、国も支援に乗り出しているようだ。
【青年会】 相談です! 10年前から実家の居酒屋を手伝っている同級生が事業承継に悩んでいます。何とか力になってもらえませんかね。
【区長】もしかして居酒屋「かふう」のことか。たしか手伝っているのは次男で、兄弟が数名おったな。事業承継がうまくいかず廃業となったら大変だ。地域にとっても大事なことだから“ゆんたく”してみよう。
【青年会】事業承継ですが、法人化しているケースと個人事業主のケースでは違いがあるのでしょうか?
【区長】 とても良い質問じゃ。法人と個人事業主とは事業承継の手法が違う。法人は会社登記をして法人で土地建物を購入できるし、銀行からの借り入れもできる。取引(仕入れや販売)も法人ですることになるから、社長が引退や亡くなった場合でも法人は消滅せず、社長の持つ株式を後継者へ承継(贈与や相続)して役員を変更することで事業承継ができる。一方、個人事業主は個人が取引の当事者となる。そのため個人事業主の事業に関するすべての資産を後継者へ引き継ぐことで事業承継ができるというわけだ。
【青年会】 個人事業主の事業承継は大変そうですね。
【区長】 確かに、大変だね。法人はすべての所有が法人と個人で分かれている。一方、個人事業主は自分では事業用と個人用の財布を分けているつもりでも法律上は分かれていない。
【青年会】 どういうことですか?
【区長】個人事業主は事業用の資産と個人用の資産を仕分けして、生前贈与や遺言を作成しないと相続の際にもめるケースも予測される。後継者も余計なエネルギーを使うことになるから、本業にも支障が出てきたりする。
【青年会】それで、事業をしている人は特に遺言書を作成した方がいいと聞くのですね。
【区長 】そのとおりじゃ。居酒屋の土地建物の相続で兄弟がもめたら、事業承継がうまくいかなくなるおそれがあるぞ。それを防ぐためにも、先代は生前対策や遺言等で次男に事業用財産を承継させておく必要がある。事業承継がスムーズに行くことで、次男は安心して事業が続けられ、従業員や取引先の生活も守れる。ひいては区民も地元で飲食ができて居酒屋難民も防げることになる。
【青年会】 事業承継の方法として、具体的にはどのような方法がありますか。
【区長】 「売買・贈与・相続」がある。居酒屋「かふう」のケースは家族に承継者がいたが、家族に承継者がいないケースでは従業員への承継やM&A(企業の合併・買収)で第三者に譲渡する方法がある。
【青年会】 個人事業主の場合でもM&Aができるんですね。
【区長】若者がゼロから事業を立ち上げるより、M&Aで事業承継をする方が効率良く起業ができる場合がある。地元の商工会や商工会議所に相談して各都道府県に設置されている事業引き継ぎ支援センターへつないでもらえば事業承継を斡旋してもらえる。
【青年会】 事業承継の優遇はあるのですか。
【区長】 税制の特例措置があるようだ。一定の要件を満たせば税負担を実質ゼロにできることもあるらしい。詳しいことは税理士に相談して、早めの対策でスムーズな事業承継を進めてもらいたいな。
【青年会】それでは、僕が居酒屋「かふう」に説明に行ってきます。これで居酒屋難民も防げますよ!
(突然、走り去る青年会長を見て)
【区長】魂胆はわかっているぞ!待て~
司法書士 喜屋武 力(きゃん つとむ)
令和7年度 司法書士試験 合格
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