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基礎からわかる相続Q&A SEASON4 File.7 住宅瑕疵の考え方と住まいるダイヤルについて

基礎からわかる相続Q&A SEASON4 File.7 住宅瑕疵の考え方と住まいるダイヤルについて

週刊かふう2025年7月18日号に掲載された内容です。

 

Q.
長男との二世帯住宅建築で、建築会社の都合による工事遅延により引き渡しが延期され、長男は仮住まいを余儀なくされました。入居後も水回りを中心に施工不良が多数発覚し、是正工事が繰り返され生活に支障が出ています。こうした遅延や瑕疵に対し、建築会社へ違約金や損害賠償請求は可能でしょうか。

 私には3人の息子がいます。将来的には財産を平等に相続させるつもりでいましたが、同居を条件に現在の自宅の土地に長男と二世帯住宅を新築することにしました。

 ところが、建物の引き渡し直前になっても基本工事が完了せず、建築会社の都合で引き渡し日が延期されました。その後、改めて建築会社が設定した工事完了日も守られず、長男はその日を目安に住んでいたマンションを売却・引き渡ししていたため、やむを得ず仮住まいをすることになりました。さらに入居後には、浴室やトイレなどの水回りを中心に複数の瑕疵が見つかり、是正工事が何度も行われる中で、私たちの生活にも大きな支障が出ています。
 
 このような大幅な工事の遅延や、入居後に判明した施工不良に対して、建築会社に違約金や損害賠償を請求することは可能でしょうか。

A.
住宅購入という大きな取引に慣れている方はなかなかおりませんので、問題が発生したときに適切な対応がよくわからないと思います。わが国では、住宅の建設や売買にかかるさまざまな問題について、民法の他に、住宅の品質確保の促進等に関する法律や特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律等が制定されております。概要について見ていきましょう。

 まず、工事の遅延により引き渡し日が延期された点について、引き渡し遅延が建築会社側の責任であれば、本来発生しなかった仮住まいの家賃や引越し費用などの実費を損害賠償として請求できます。建築会社との工事請負契約書に遅延損害金についての定めがあれば、その内容に従うことになるかと思いますが、定めがない場合でも、民法に基づき通常生ずべき損害について請求することは可能です。 

 次に、入居後に判明した施工不良に対しては、是正工事が行われているようですが、施工不良についての違約金についても、契約書の記載が重要ですが、概ね民法の規定に近い内容となっていると思われます。民法の考え方を次にご紹介します。

 もし是正工事中に仮住まいが必要になった等の事情があれば、その仮住まいの費用は損害賠償の対象となり得ますが、修補(是正工事)が行われているのであれば、それ以上瑕疵自体についての請求は原則として認められないことになります。修補が行われたにも関わらず、契約不適合と言えるような状態であれば、さらなる修補請求も考えられ、修補が取引上の社会通念に照らして「不能」といえるような状態であれば修補請求はできませんが代金減額請求ができる可能性があります。

 精神的苦痛に対しての慰謝料請求は、民法上、原則として認められませんが、重大な精神的苦痛が認められる場合には例外的に認められることもあります。

 以上が民法の考え方の概要ですが、実際には契約書の記載や瑕疵が残存するか等、非常に専門的な判断が求められることになります。

 なお、相談者は新築住宅を注文されたとのことですので、「住宅瑕疵担保責任保険」が付されていると思います。この保険が適用されるのは、構造耐力上主要な部分や雨水の侵入を防止する部分に瑕疵がある場合です。これに該当する場合は、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理センター(通称:「住まいダイヤル」)の各種制度を利用することができます。

 まず、無料専門家相談制度があり、弁護士と建築士との相談を原則無料で受けることができます。弁護士と建築士がセットで相談に対応するという特色があります。また、住宅紛争審査会による紛争処理手続きを利用することができます。紛争処理手続きは、あっせん、調停、仲裁の3種類があり、これらの手続きも弁護士と建築士が関与します。こうした制度の活用も視野に入れ、状況に応じて適切に対応されることをおすすめします。

 最後に一点、付け加えますと、長男との二世帯住宅については、次男・三男の「遺留分」への配慮も必要になります。将来的な相続時のトラブルを避けるためにも、事前の対策をご検討されるとよいかもしれません。

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