基礎からわかる相続Q&A SEASON4 File.11 いわゆる負動産と相続土地国庫帰属制度について

週刊かふう2025年11月21日号に掲載された内容です。
Q.
兄の遺産として土地建物を相続し、居住地の不動産は売却できたが、内地の土地は買い手が見つからず困っています。高齢のため子どもに負担をかけたくないと考えているところ、見知らぬ業者から「土地を買い取る」「節税になる」と勧誘され不安を感じています。安心して処分するため注意点を知りたいです。また、国が創設した土地引き取り制度について、相続した利用していない土地も対象となるのでしょうか。
私には兄がいたのですが、兄が亡くなり、兄には子どもがいなかったので私が相続人となりました。兄の遺産は兄が住んでいた土地建物の他、内地の土地もありました。兄が住んでいた土地建物は買い手が見つかって売却することができたのですが、内地の土地については地元の不動産業者にも相談しましたが買い手が見つからず困っています。
私も高齢となりましたので、売ることもできず使わない不動産のことで子どもたちに負担をかけたくないと思っております。
そんな折、見知らぬ業者から電話がかかってきて「あなたの持っている土地を買い取る」「他の土地を購入すれば節税になる」などの話をされました。私としてはすぐにでも売りたかったのですが、子どもから止められ業者とも直接面談することはしていません。私としては、安心して兄から相続した不動産を処分したいと考えているのですが、どのようなことに気をつければいいでしょうか。
また、最近、国が土地を引き取る制度ができたと聞きましたがどのような制度なのでしょうか。私が兄から相続した利用していない土地も引き取ってもらうことが可能なのでしょうか。
A.
相続で望まない土地を受け継ぐことがあり、売却困難で維持費がかかる「負動産」と呼ばれることもあります。詐欺的商法に注意しつつ、安心できる処分方法として「相続土地国庫帰属制度」の活用が考えられます。どのような制度か見ていきましょう。
内閣府政府広報室が2025年6月にお金・消費のトラブルについて、“「原野商法」再燃! 「土地を買い取ります」などの勧誘に要注意”という政府広報を出しました。そこでは、電話や訪問で「あなたの土地を高く買い取ります」などと勧誘を受け、「他の土地を購入すれば節税になる」「購入費用は税金対策処理後に返す」などと勧められ、買い手のつかない土地が売れるならと思ってお金を払って契約書にサインしたが、その後業者と連絡がつかなくなった事例が紹介されています。
これまで地域の業者に相談しても買い手がなかなか見つからなかったという相談者の場合、このような詐欺の可能性も十分に考えられ、話を聞くとしても契約締結前に契約内容を詳細に確認するなど、警戒する必要があるでしょう。
一方、2023(令和5)年4月27日から、「相続土地国庫帰属制度」が開始しました。これは、相続または遺贈によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる制度です。引き取り手が国であることから、引き取り後のトラブル等もなく、心配せずに安心して処理ができるというのが最大のメリットです。
もっとも、「相続土地国庫帰属制度」は、すべての土地について利用できるものではなく、却下事由として建物がある土地や担保権等が設定されている土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染されている土地等が定められています。また、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地等についても、国が引き取ることができないとされています。
本件の土地の状況はわかりませんが、この制度が利用できるようであれば有力な選択肢となると思われます。「相続土地国庫帰属制度」については、弁護士等法律専門家に相談することももちろんできますし、法務局(本局)の登記部門での相談(事前予約制)も行われていますので活用をおすすめします。


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