基礎からわかる相続Q&A SEASON5 File8.特別受益と代襲相続について

週刊かふう2026年8月21日号に掲載された内容です。
Q.祖母が昨年亡くなり、遺言はありません。祖父と母は既に亡くなっており、相続人は私と叔父です。祖母には預貯金や複数の不動産があり、生前に母へ自宅不動産を贈与し、私の大学学費も負担してくれました。叔父からは、母への贈与や私への学費援助を考慮し、賃貸マンションは叔父が取得することで了承してほしいと言われています。しかし、贈与を受けたのは母であり、学費援助は叔父の息子も受けているため、私はこれらを考慮せずにマンションを分けるべきではないかと考えています。
私の祖母は、昨年亡くなりました。遺言書等は作成されておらず、祖父は既に亡くなっています。祖母の子は、私の母と叔父さんの2人で、2人が祖母の相続人になるはずでしたが、私の母は5年前に亡くなっており、私と叔父さんが相続人になると思います。
祖母は、預貯金等や自宅の土地建物の他、自宅の敷地の一部として利用されていた隣の土地、そして賃貸マンションを所有していました。祖母は、母が亡くなる前に、祖母と母が同居していたこともあって自宅の土地建物を母に贈与しています。また、私の大学進学の際には、祖母が学費を全て負担してくれました。
最近、叔父さんから連絡が来て、母は自宅の共有持分の半分をもらっているし私も祖母から学費をもらっているので、マンションは叔父さんが取得することで了解してくれと話がありました。祖母の自宅不動産の贈与を受けたのは母で、私ではないですし、私が祖母に学費を出してもらったといっても、叔父さんの息子も大学の学費を祖母に出してもらっていると聞いています。
私としては、祖母から母が自宅不動産をもらったことや、祖母が負担してくれた私の学費は考慮せずに賃貸マンションを分けるべきだと思うのですが、叔父さんの言うとおりに分けなければならないのでしょうか。
A.相続の前に生前贈与等がされることがあります。そのようなときに共同相続人間の不平等を是正する制度として特別受益がありますが、時には特別受益を受けた方が先に亡くなる場合や、贈与時は推定相続人でなかった方が相続人となることがあります。そのような場合の相続分の算定における裁判所の考え方を見ていきましょう。
相続人の中に、被相続人から遺贈や多額の生前贈与を受けた人がいる場合、その受けた利益のことを「特別受益」といいます。
特別受益を受けた相続人は相続分の前渡しを受けたものとして、遺産分割において、その特別受益分を遺産に持ち戻して(これを「特別受益の持戻し」といいます)、具体的な相続分を算定するのが原則です。
本件では、被相続人であるお祖母さまから、①相談者のお母さまへの土地建物の贈与、②相談者への学費の贈与があり、それぞれが特別受益に当たるかどうかを検討することになります。
裁判所は、特別受益について、被代襲者についての特別受益はその後に被代襲者が死亡したことによって代襲相続人となったものとの関係でも特別受益に当たると判断しています。法律用語では、相談者のお母さまのように相続発生前に先に亡くなった人を被代襲者、被代襲者の代わりに相続をする相談者のような方を代襲相続人といいます。
そのため、お祖母さまから、①相談者のお母さまへの土地建物の贈与については、相談者との関係でも特別受益となり、この特別受益分は既に相談者が相続したものとして相続分を計算することになります。
次に、②相談者への学費の贈与については、相談者が贈与を受けた時点では、相談者は相続人となるべき立場にはありません。
このような場合、裁判所は、相続人でない者が、被相続人から贈与を受けた後に、被代襲者の死亡によって代襲相続人としての地位を取得したとしても、その贈与が実質的には被代襲者に対する遺産の前渡しに当たるなどの特段の事情がない限り、代襲相続人の特別受益には当たらないというべきであるとしています。
本件では、相談者の他、叔父さんのお子さんも同様に学費の援助を受けているという事情があるとのことですので、実質的にお祖母さまからの遺産の前渡しと評価することは難しく、特別受益には当たらないと考えられます。
そうすると、賃貸マンション等残りのお祖母さまの遺産については、相談者は①についてのみ特別受益があることを前提として算定し遺産分割を行うことになります。


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