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知っておきたい 相続の基礎Q&A File.2

知っておきたい 相続の基礎Q&A File.2

週刊かふう2020年1月31日号に掲載された内容です。

生前贈与と遺言について

自分の財産を希望の誰かに譲る主な方法として、遺言書による相続と生きている間にできる生前贈与の二つがあります。いずれも一般的な方法ですが、個別の状況により双方のメリットとデメリットを検討する必要があるでしょう。

Q.私は、40年前に住宅ローンを組んで家を建てました。名義は土地建物とも私の名義です。

 この家で私と妻、そして娘の3人で暮らしてきましたが、昨年妻が亡くなってしまいました。
 私には、娘の他に息子が2人いるのですが、息子2人はだいぶ前に独立して別に世帯を構えています。
 妻が亡くなったことで、私が亡くなった後のことを考えるようになったのですが、私としては、私が死んだ後はこれまでこの家で一緒住んできた娘にこの家を継いでもらって使ってもらいたいという気持ちです。
 私の希望を実現するためには、どのような方法があるでしょうか。

A.もし仮に、現在相続が発生したとすると、娘さんの法定相続分は3分の1ですから、土地建物について子どもさんたちの遺産分割協議が整わなかった場合には、土地建物については兄弟3人が平等に権利を取得し、それぞれ3分の1の権利しか取得できないということになりそうです。

 この複数の人が一つの不動産を共同で所有しているとき、それぞれの人がその不動産について持っている割合としての所有権を共有持分と言います。この場合、共有不動産の利用権の設定・変更などの管理行為には共有持分の過半数の同意が必要とされていますので、娘さん1人の判断で不動産の管理行為に当たる事柄を決めることはできないことになります。
 そこで、相談者の希望に沿うかたちで不動産を娘さんに継いでもらう方法はいくつか考えられますが、一般的な方法としては、娘さんに生前贈与を行うか、遺言を書くという方法があります。

 娘さんに生前贈与を行う方法は、相談者が生きている間に娘さんに不動産の所有権を移転し名義を変えることです。遺留分の問題を除けば、確実に娘さんに不動産を引き継がせることができる一方、贈与税や不動産取得税などがかかり、不動産について相談者の権限が無くなるため、娘さんの管理や処分、経済状態によっては、相談者がこれまでどおり使用できなくなるリスクがあります。

 相談者が遺言を書く方法は、遺言を作成することによってどの財産を誰が取得するかを指定するものです。遺言は遺言作成者の判断で撤回できるものですので財産を譲り受ける予定の人にとっては確定的ではない点はありますが、相続税の問題となるので、一般的には贈与税などがかかる生前贈与より税金を抑えることができます。
 ただ、遺言の形式・方式は法的に厳格な定めがあるので注意が必要です。遺言の方法は、大きく3種類があり、それぞれ自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言です。実務では、自分で遺言を書く自筆証書遺言と、公証人役場で公証人に作成してもらう公正証書遺言がよく使われます。
 自筆証書遺言は、遺言者がその全文と日付及び氏名を全て自分で書き、これに押印をしなければなりません。添付する財産目録だけはパソコンで作ってプリントアウトすることもできますが、それ以外は全文自書が必要です。
 公正証書遺言は、遺言書が公証人の面前で遺言の内容を口授しそれに基づいて公証人が文章にまとめるもので、実務上は、事前に必要書類を準備して公証人役場と打ち合わせが必要になります。
 また生前贈与と遺言で共通ですが、少なくとも法定相続分の半分の価値のある遺産を相続人に相続させなければ、多く相続した人が遺留分侵害額請求を受けることになってしまうかもしれません。
 このように遺言は形式、内容とも法的に注意しなければならない点があるため、気になることがあれば弁護士に相談することをお勧めします。

知っておきたい 相続の基礎Q&A File.2

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