よくわかる不動産相続 Q&A File.1
週刊かふう2017年4月21日号に掲載された内容です。
「相続」は、人と人が争う事案です。
小さな事でも大きな問題になりかねません。時には、取り返しのつかない遺恨を残すことも……。そんな複雑で深刻な「相続」のお悩みを専門家が事例を踏まえ解説いたします。1回目は法律の専門家、弁護士の島袋秀勝先生に「相続」の定義と意義を伺いました。
■「相続」とは何ですか?
私も長らく実務に携わってきましたから、多くの「相続案件」と出会うことになりました。簡単に言えば、遺産を相続人に分配することです。元来は血縁関係にある者に相続権は発生しましたが、複雑化する現代社会ではそれだけとも言いきれません。また、長男が家のトートーメー(仏壇)を継ぐなど、沖縄は家督意識が強い地域ですから法律だけでは解決できないケースもよくあります。ですから「相続」を一言では説明することは難しいことですね。法律だけでは割り切れるものではありませんから、これまでの関係を崩さないためにも、お互いの意向や気持ちを分かりあうことが円満な解決のため重要になってきます。
■「相続」について、どんなご相談が寄せられますか?
「相続問題」はいつ誰の身にも起こる可能性のあるものです。法律や遺言に基づいてスムーズに進行すれば問題はないのですが、残念ながら、時には相続人同士の争いが起こります。例えば「法律通りに分割がされていない」「相続分が見合わない」「遺言が納得いかない」などの相談が多くあります。それ以前のものとしては、「相続人の範囲がわからない」と言う相談もあり、事実婚や養子縁組など複雑化した現代社会を反映しているかと思います。いずれも、「調停や審判にはしたくない」との相談も多く、お互いの言い分をくみ取り納得できる着地点を見つけることが円満な解決につながります。
また、遺産の多くを不動産が占めるケースが大半です。そのことからも不動産の専門的な知識が必要になってきます。土地家屋調査士や不動産鑑定士はもとより、他にも税理士、司法書士、公認会計士、社会保険労務士など、信頼のおけるパートナーと緊密に連携をとり、いつでもすぐに紹介できる体制を整えています。
■読者・相談者へのメッセージ
「相続」の相談と聞くと、「お金持ち」や「資産家」だけの問題と言うイメージがあるようですが、決してそうではありません。相談に来られた方から「まさか、自分が」という言葉をよく聞きますし、「幼いころから一緒に育った仲の良い○○だったのに」などの声もあります。
事前に相談していただいたことで紛争を防げたケースも多くあります。父母が「遺言書」を作成して、子どもたちの将来の紛争を予防することも良い方法ではないでしょうか。
このコーナーでは、私・島袋秀勝と尾辻克敏の二人の弁護士で、様々な事例を元に複雑な相続のノウハウを解説していきます。円満な解決に至らなかった事例もございますが、ご参考になれればと思います。よろしくお願いします。