あなたの夢を暮らしを応援する
住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

ウェブマガジン

知っておきたい 相続の基礎Q&A File.4

知っておきたい 相続の基礎Q&A File.4

週刊かふう2020年2月28日号に掲載された内容です。

相続のために別の手続きが必要な場合について

相続が発生して遺産分割協議を行う際、実際にはすぐに遺産分割協議を行うことができない場合があります。相続人の一部について、判断能力が失われてしまっている場合の手続きについて考えてみましょう。

Q.父が病気療養中だったのですが、亡くなりました。

 父は複数の不動産を所有していたのですが、そのうちの一つを会社に賃貸していました。最近、会社からこれまで父の口座に振り込んで支払っていた賃料についてどうすればよいかという問い合わせがありました。父は遺言などを残しておらず、父の相続人は母と私だけです。父の遺産について、どのように分けるか決めないといけないと思うのですが、実は、母は以前から認知症になってしまっており、難しい話はとてもできない状態です。
 父の遺産について、どのようにして決めればいいのでしょうか。また、父の遺産の分け方が決まるまでの賃料はどうすればよいでしょうか。

A.お父さまが亡くなられたということで、お父さまの遺産をどのようにして分けるのか決めるため、遺産分割協議をすることになります。

 しかし、お母さまが認知症を患っていて難しい話ができない状態とのことですので、お母さまは意思能力を欠いている可能性があります。意思能力は、ざっくり言うと行為の結果を判断するに足るだけの精神能力のことです。意思能力を欠く状態で行った遺産分割協議は、法的には無効となってしまいます。
 したがって、このまま遺産分割協議を行って、遺産分割協議書を作成することはできないと考えられます。
 このような場合、遺産分割協議を行うために、お母さまについて成年後見の申し立てを行って成年後見人をつけてもらい、お母さまの成年後見人との間で遺産分割協議を行うことが考えられます。
 成年後見とは、財産管理能力を失ってしまった、あるいは欠いている方のために成年後見人を選任して財産を保護するための制度です。
 成年後見人とは、財産管理能力を失ってしまった、あるいは欠いている方のためにその方に代わって財産を管理する立場の人のことです。
 成年後見の申し立ては家庭裁判所に対して行い、裁判所が後見開始および後見人選任の審判を行うことで利用できるもので、裁判所の手続きを経ずに成年後見人になることはできません。
 成年後見人選任の申し立てをする際、お母さまの判断能力についてのお医者さんの診断書を添付して出すことになります。このお医者さんの診断で「後見相当」とされている場合に後見人選任を求めることができます。逆に、お医者さんがお母さまの判断能力について「後見相当」と判断しなかった場合、お母さまはまだ判断能力が残っているものとして、遺産分割協議を行うことができるかもしれません。
 この成年後見人には、親族が就任することが一般的ですが、裁判所が弁護士などの第三者を後見人として選任することもあります。
 もちろん、相談者が成年後見人になることもできますが、お母さまの遺産分割協議は、相談者とお母さまとの間で決めなければならないことなので、相談者とお母さまの後見人としての相談者とで決めるとすると、相談者ご自身の立場とお母さまの財産を守る後見人としての立場で利益相反が生じてしまいます。このような場合、相談者お一人で遺産分割協議を行うことはできず、特別代理人または後見監督人を裁判所が選任するのを待って、相談者は特別代理人または後見監督人と遺産分割協議を行うことになります。
 遺産分割協議が調うまでの賃料については、法的には遺産とは別だと理解されています。遺産分割協議がまとまるまでは法定相続分に応じて賃料を受け取ることができるとされています。この場合、会社の方に事情を話して、半分を相談者の口座に、半分を母親の口座に振り込み支払いするよう協議することが考えられます。もっとも、会社として法定相続分について確信が持てないということであれば、賃料を供託することになると思います。供託とは、供託所(法務局)にお金を預けることで、賃料を支払ったことと同じ効果にできる制度です。

知っておきたい 相続の基礎Q&A File.4

このカテゴリの記事