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よくわかる不動産相続 Q&A File.10

よくわかる不動産相続 Q&A File.10

週刊かふう2017年8月25日号に掲載された内容です。

相続人不在時の特別縁故者制度

前回、相続人不存在による相続財産管理人選任の方法をお話しいたしましが、今回は特別に相続を受ける権利が認められる特別縁故者に対する財産分与の制度についての案件です。
私、弁護士の島袋秀勝がわかりやすく解説いたします。

よくわかる不動産相続 Q&A File.10

Q.最近、私E(50歳)の大叔母Aが90歳で亡くなりました。

 AにはBとC(私の祖父)の兄弟がいましたが、皆既に死亡しています。Cの子D(私Eの母)も既に亡くなり、私E以外に、Aの親族は残っていません。
 Aは、生涯独身で過ごしました。そこで、生前にA・C・Dから強い要請を受け、私Eが、20歳位のころ(Aは60歳位)から、将来Aのトートーメーを見ることを前提として、Aの事実上の養子として、Aと一緒に生活し、Aの老後の生活の面倒を見てきました。しかし、養子縁組の手続きは取っていません。
 Aには、遺産として時価2000万円程度の自宅(土地・建物)(以下「本件土地・建物」といいます)が残されています。私Eが本件土地・建物を相続・取得してしかるべきだと考えるのですが、それは認められるのでしょうか。

A.第1に、EがAの相続人にあたるかについて検討してみましょう。

 Aの兄弟Cは相続人、Cの子Dは代襲相続人の地位にありますが、兄弟Cの孫にあたるEには代襲相続が認められていません。子が相続人の場合と異なり、兄弟姉妹が相続人の場合は、その代襲相続は兄弟姉妹の子(本事案ではD)までに限られています。また、AとEが事実上の養親子関係にあっても、養子縁組の手続きを取っていない以上、AとEについて法律上の養親子関係は認められません。法律上の養親子関係が認められるためには、養子縁組届け出の受理という形式的要件を必ず満たす必要があります。
 以上から、EはAの相続人にはあたりません。従って、Eが本件土地と建物を相続により取得することはありません。
 そうなると、Aについて、相続人がいない状態いわゆる相続人不存在の状態が発生していることになります。反面、EはAの事実上の子として、Aと一緒に生活し、Aの老後の生活を支えてきました。おそらくAも、本件土地・建物をEに相続・取得させたいと考えていたでしょう。社会通念としても、本件土地・建物をEに帰属させるのが相当であると考えるのが一般的でしょう。第2に、それを実現しようとするのが、特別縁故者に対する財産分与の制度です。
 Eは、まず、家庭裁判所に、相続人不存在による相続財産管理人選任を申し立てます。選任された財産管理人は、前回説明したように、
①Aの遺産(本件土地・建物)を管理し、
②Aに債権者・受遺者にいるかどうかを調査し、
③Aに相続人がいないかどうかの確定作業を行い、
④相続人がいない場合は、本件土地・建物を国庫に帰属させる手続きを取る
ことになります。
 Eは、上記①②の手続きを終了してもいまだ本件土地・建物が遺産として残っている場合は、上記③のAに相続人がいないかことが確定した後3カ月以内に、家庭裁判所に特別縁故者に対する相続財産の分与の申し立て手続きを取ります。
 家庭裁判所は、相続財産管理人の意見を踏まえ、Ⅰ被相続人と申立人との間に、生計を同一にしていたとか、EがAの療養看護に努めたとかの、特別縁故が認められる具体的・現実的に密接な関係にあり(本事案では、AEは事実上の養親子関係にあります)、Ⅱ被相続人の意思を推測探求して(本事案では、おそらくAは、Eに本件土地・建物を取得させたいとの意思を有していたものと推測されます)、Ⅲ財産を分与するのが妥当だと判断したときは、Eに特別縁故者として本件土地・建物の取得を認めることになります。
 本件土地・建物について、上記④の国庫に帰属させることを検討する以前に、Aの特別縁故者としてEに帰属させるかどうか検討することが、社会通念にも合致することになるでしょう。

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