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よくわかる不動産相続 Q&A File.9

よくわかる不動産相続 Q&A File.9

週刊かふう2017年8月18日号に掲載された内容です。

不動産の遺産分割とその方法

遺産分割の対象となる財産のうちで最も紛争となりやすいものが,土地・建物などの「不動産」相続です。
今回は、不動産の遺産分割について、弁護士の尾辻克敏がご説明いたします。

よくわかる不動産相続 Q&A File.9

Q.私(一郎、長男)の父が亡くなりました。母は既に他界し、弟の次郎(次男)と三郎(三男)がいます。

 父は、那覇市内に自宅(土地・建物、時価3000万円相当)を所有し、私は父と共に自宅に住んでいます。父には、自宅の他に、賃貸アパート(時価1500万円)、軍用地(時価1500万円)があります。私は、長男として、トートーメが祀られている自宅に住み続けたいと思いますが、父の遺産を兄弟3人でどのように分けたらいいか教えてください。

A.不動産の遺産分割の方法は?

 兄弟3人で遺産を相続するということですが、まず先に不動産の遺産分割の方法をご説明いたします。遺産の分割には、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割の4種類があります。これらの分割方法について、相続人は甲・乙の二人、遺産は自宅(土地・建物、時価1000万円相当)のみという例にあてはめて説明します。
①現物分割とは、例えば、甲が自宅の土地を、乙が自宅の建物をといったように、遺産を現実に分けて分割する方法です。
②代償分割とは、甲が自宅の土地・建物を取得する代償として、乙に500万円を現金等で支払うように、遺産を多く相続した相続人が、他の相続人に相続分に相応する代償金を支払う方法です。
③換価分割とは、自宅を1000万円で売却して、甲・乙が各500万円ずつ受け取るというように、遺産を売却して金銭に換え、その代金を相続人に分配する方法です。
④共有分割とは、甲・乙が自宅(土地・建物)を1/2の持ち分ずつ共有するように、不動産の持ち分を法定相続分などの割合で決め、その割合で共有する方法です。

■遺産分割の方法はどの方法がいいの?

 遺産分割協議や遺産分割調停においては、多くの場合、相続人が合意することができるのであれば、どのように分割しても構いません。例えば、それぞれが取得する相続財産に多寡はありますが、一郎さんは自宅、次郎さんは賃貸アパート、三郎さんは軍用地のように現物分割することを、3名が合意するのは構いません。一郎さんが長男としてトートーメを継ぐので、多く分け前にあずかるということも実際あるでしょう。また、一郎、次郎、三郎さんが、自宅、賃貸アパート、軍用地をそれぞれ1/3の持ち分ずつ共有分割するということも構いません。
 しかし、前者の分割方法では、次郎、三郎さんが取得する相続財産の多寡に不満を持ち、合意まで至らないこともあるでしょう。また、後者の分割方法では、遺産のすべてを共有名義にするのは問題の先送りにすぎません。一郎、次郎、三郎さん3人の相続人の関係が良好な間は、このように分けても構わないのですが、相続人間の関係が悪くなったり、相続人の誰かがお金が必要になった場合などに、自宅に居住している一郎さんが望まないにもかかわらず、共有物分割請求をされる可能性があります。
 そこで、不動産の分割方法についての実務では、まず現物分割を検討してみます。そして、現物分割が困難な場合に代償分割を検討し、現物分割も代償分割も困難な場合には、換価分割を検討します。共有分割については、最後の手段となると言われています。
 また、遺産分割審判では、不動産の分割方法について、相続人の希望がおおむね一致している場合は、上記分割方法の順番にかかわらず分割されることはありますが、相続人間で争いがある場合には、上記分割方法の順番で分割されることが多いようです。

■本事例ではどうやって分割したらいいの?

 本事例では、遺産が3000万円の自宅、1500万円の賃貸アパート、1500万円の軍用地ですので、遺産の総額は6000万円となります。一郎、次郎、三郎さんの相続人3人が法定相続すると、それぞれの相続分は3分の1なので、2000万円ずつとなります。
 一郎さんは、父の死後も、引き続き自宅に居住することを希望していますから、一郎さんが自宅を相続し、相続分を超えた1000万円については、次郎、三郎さんにそれぞれ500万円ずつ代償金として、一郎さんの固有の財産から支払うことにより、一郎さんは自宅を手放さずに取得することができます。そして、次郎、三郎さんは、一郎さんからそれぞれ代償金500万円を受け取るとともに、次郎さんは賃貸アパートを、三郎さんは軍用地を相続するという内容(代償分割)で、相続人3人が合意できればよいでしょう。
 本事例では、一郎さんは、自宅に引き続き居住する希望を有しているので、自宅については換価分割というわけにもいかないでしょうし、前述したとおり、一郎さんとしては、できるだけ共有分割は避けるべきでしょう。
 なお、先ほどのように代償分割をするには、代償金を用意する必要があります。代償金を用意できないと、代償分割はできません。そこで、一郎さんのように代償分割を将来的に考えている方は、ご自身で将来を踏まえて代償金を積み立てて行く必要があります。
 ここまで、「不動産の分割方法」について説明しましたが、遺産に自宅、賃貸住宅、軍用地など不動産がある場合、どのように分割していいかどうか判断がつかないこともあると思われますので、相続問題についてお悩みの方は、弁護士にご相談ください。

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