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よくわかる不動産相続 Q&A File.18

よくわかる不動産相続 Q&A File.18

週刊かふう2017年12月22日号に掲載された内容です。

遺言書で信託を設定する

家族信託は、契約や自己信託のほか遺言によって行うことも可能です。遺言による信託は原則として、遺言書と同様に遺言者の死亡により発動する信託です。そのため、生前で受託者の意思を確認するなど、一方的な遺言とならないような注意が必要になります。

よくわかる不動産相続 Q&A File.18

Q.遺言で行う場合にはどのような手続きが必要ですか。

家族信託は、契約や自己信託のほか、遺言によって行うことも可能であるとのことですが、遺言で行う場合にはどのような手続きが必要ですか。また、遺言による信託に際して注意する点はありますか。

A.委託者(遺言者)の遺言の方式についてですが、信託法では特に定めがありませんので、民法で認められている方式で行うことになります。

 家族信託とは、財産管理や相続対策の有効な選択肢の一つとして、また、家族や財産の状況によって柔軟に対応が可能な手法として近年注目を集めているものです。①委託者、②受託者、③受益者の三者が基本的な登場人物となり、①契約等により、自分(=委託者)の財産を、②信頼できる人(=受託者)に託し、③受託者はあらかじめ定められた内容にしたがって財産を管理、処分し、④その利益は受益者が受領するというものです。
 家族信託は、契約や自己信託のほか、遺言によって行うことも可能です。委託者(遺言者)が、財産の管理や処分等の信託の基本的事項を定めた遺言をすることによって、家族信託の設定ができます。委託者(遺言者)が遺言をする時点において、遺言をするという判断能力がなければなりません。委託者(遺言者)の遺言の方式についてですが、信託法では特に定めがありませんので、民法で認められている方式で行うことになります。通常利用されているのは自筆証書遺言と公正証書遺言ですので、いずれの方式でも信託は可能です。自筆証書遺言は、費用はかかりませんが、遺言書の全文を遺言者が自ら自筆しなければなりません。一般的に家族信託の条項は分量が多いですので、それら条項を全文自筆するのは大きな負担になる場合があります。また、自筆証書遺言は、家庭裁判所において相続人全員に呼出状を発送し、検認の手続きを経なければなりません。さらに、自筆の遺言書がそもそも真正なものであるのかを巡って争いになる可能性もあります。公正証書遺言は、費用がかかることや2人以上の証人を要する等の手間がかかりますが、法律の専門家である公証人が、遺言者の遺言の内容に基づき公正証書として作成するものなので、最も確実な遺言といえます。また、遺言書の原本は公証人役場において保管しますので、遺言書の偽造、隠匿や紛失の心配がなく、家庭裁判所の検認の手続きの必要もありません。こうした遺言の方式によるメリット、デメリットを理解のうえ、いずれかの方式により遺言によって信託を行います。
 遺言による信託は、原則として、遺言者の死亡時に効力を生じます。遺言による信託の効力が発生すると、受託者として指定された者は、信託財産の管理処分等を行うことになります。遺言による信託は委託者(遺言者)の単独行為ではありますが、受託者として指定された者が信託を引き受けてくれないと困りますので、事前に信託の内容を十分に説明し、受託者としてやるべき事項を理解したうえで確実に引き受けてくれる者を指定しておいた方が良いでしょう。それでも、受託者として指定された者が引き受けてくれなかった場合には、利害関係人の申立により裁判所が受託者を選任するという規定があります。
 これまで、6回にわたり家族信託について説明してきましたが、このシリーズは今回で最後になります。家族信託が財産管理や相続対策の選択肢の一つとして注目を集めるようになったのはここ数年のことであり、初めて「家族信託」というものを知ったという読者も多いかと思います。家族信託の検討を必要とされている方々が、家族信託を活用することによって、円滑な財産の管理処分、紛争予防のお役に立つことができれば幸いです。

※「家族信託」という用語は正式な法律用語ではありません。信頼できる家族に財産の管理処分を任せる信託という意味で一般社団法人家族信託普及協会が商標登録した用語です。本原稿は同協会の了承のもと「家族信託」を使用しています。

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