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よくわかる不動産相続 Q&A File.17

よくわかる不動産相続 Q&A File.17

週刊かふう2017年12月15日号に掲載された内容です。

適当な受託者が不在の場合の自己信託

平成18年12月に改正された新信託法では、委託者が自ら受託者となる自己信託が認められることになりました。適当な者が見当たらないなど受託者の選定が難しい場合などに委託者が自ら信託宣言し信託する制度です。つまり、自己が所有する一定の財産を信託として管理するわけです。その制度のあらましと活用法などを解説いたします。

よくわかる不動産相続 Q&A File.17

Q.安心して任せることの出来る受託者候補が見当たらない場合はどうしたら良いでしょうか

これまでの掲載記事で、家族信託が財産管理の手法として、また、相続対策の有効な選択肢の一つとして、画期的なものであることはある程度理解できました。しかし、私が実際に家族信託を行うにあたって、家族の中に安心して任せることの出来る適当な受託者候補が見当たらない場合はどうしたら良いでしょうか。また、受託者の財産管理業務を監督する方法はあるのでしょうか。

A.「自己信託」という、これまでの信託法にはなかった新たな仕組みが出てきました。

 家族信託とは、財産管理や相続対策の有効な選択肢の一つとして、また、家族や財産の状況によって柔軟に対応が可能な手法として近年注目を集めているものです。①委託者、②受託者、③受益者の三者が基本的な登場人物となり、①契約等により、自分(=委託者)の財産を、②信頼できる人(=受託者)に託し、③受託者はあらかじめ定められた内容にしたがって財産を管理、処分し、④その利益は受益者が受領するというものです。
 ところが、実際に家族信託を検討するにあたって、身内の中に適当な受託者候補者がいない、或は受託者として任せてもいいが少々不安な面がある等の事情がある方も少なくないと思われます。受託者には委託者の大切な財産の管理運営を託するわけですので当然です。
 そこで、改正信託法では、「自己信託」という、これまでの信託法にはなかった新たな仕組みが出てきました。信託法では、「自分が有している一定の財産を信託目的に従って管理、処分その他目的達成のための行為を自らすると意思表示をして信託を設定することができる」としています。要するに委託者と受託者を同一人が兼ねる形態の信託も可能であるとしているのです。自己信託は委託者と受託者が同一人ですから、契約ではなく、「信託宣言」として、単独行為で行うものであり、公正証書、公証人の認証を受けた書面または電磁的記録で行うことになっています。自己信託の活用場面としては、ご相談のケースのような親族の中に適当な受託者候補者が見当たらないような場合に、当初は自己信託で家族信託をスタートしておいて、後日、受託者を交替し、信託契約に移行するという方法での活用が考えられます。家族信託では、一般的に委託者が当初受益者となることが多いと思います。すると、自己信託では①委託者、②受託者、③受益者という家族信託における基本的な登場人物が全て同一人となってしまいます。家族信託では受託者が受益権の全てを持っている状態が1年間以上継続したとき信託が終了するというルールがありますので自己信託を設定するにあたっては注意が必要です。
 次に、身内の中から受託者として任せてもよいと思う候補者はいるが、少々不安な面もあるという方もおられるかと思います。このようなケースでは、受託者を複数にすることで、受託者同士での相互チェック機能を働かせるということも考えられます。また、こうした懸念に対応する方法の一つとして「信託監督人」を置くという選択肢もあります。信託監督人は、受託者が受益者のために信託の目的に従って適正に財産管理を行っているのか監督します。信託監督人を誰に任せるか悩ましい場合があると思いますが、例えば司法書士等の専門家を信託監督人とする方法も選択肢の一つとして考えられます。家族信託では、他にも、受益者のために権利行使の権限を有する受益者代理人、信託設定後、将来の受益者を決める権限を有する受益者指定権者を置くこともできます。

※「家族信託」という用語は正式な法律用語ではありません。信頼できる家族に財産の管理処分を任せる信託という意味で一般社団法人家族信託普及協会が商標登録した用語です。本原稿は同協会の了承のもと「家族信託」を使用しています。

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