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よくわかる不動産相続 Q&A File.20

よくわかる不動産相続 Q&A File.20

週刊かふう2018年1月26日号に掲載された内容です。

渉外登記②被相続人が外国籍の場合の相続手続きについて

前回に引き続き渉外登記のご相談です。前回は相続人が海外在留の場合の相続手続きの質問でしたが、今回は被相続人が、外国籍の場合です。どちらの国の法律が適用されるのか?
難しいケースですが分かりやすく解説していきたいと思います。

よくわかる不動産相続 Q&A File.20

Q.母は日本国籍を喪失し、かつアメリカ国籍を取得しているため、どのように不動産の登記名義を変更していいか分かりません。

 私(A)の母が亡くなりました。母は私の弟を生んですぐに父と離婚し、その後、アメリカ人の夫と再婚しました。母は結婚後にアメリカへ渡り、アメリカ国籍を取得しました。私の兄弟は、弟と再婚相手との子(義弟)が一人います。私と弟は、沖縄で生活していますが、何度か二人でアメリカへ母を訪ねて行ったことがあります。その母が遺してくれた遺産は、沖縄にある先代から引き継いだ土地です。今回この土地に弟が家を造りたいと言っており、家族全員が納得しています。しかし、母は日本国籍を喪失し、かつアメリカ国籍を取得しているため、どのように不動産の登記名義を変更していいか分かりません。教えていただけますでしょうか。

A.被相続人が外国籍の場合、まずどの国の法律が適用されるかが問題になります。

 被相続人が外国籍の場合、まずどの国の法律が適用されるかが問題になります。日本の場合、法の適用に関する通則法第36条において「相続は、被相続人の本国法による」と規定されています。しかし英米法系諸国(イギリス、アメリカ等)においては、不動産は不動産の所在地の法律を適用し、それ以外の不動産については、被相続人の国籍または最後の住所地の法律を適用するという立場をとっています。これでは日本の法律と外国の法律が対立してしまいます。そこで法41条に「当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による」と規定され、結局のところ日本の法律が適用されることになります。外国籍の方が亡くなった場合には、上記のように、その国の相続法を調査しなければなりません。
 前置きが長くなりましたが、相談者の事例を検討してみたいと思います。まず、相談者の母はアメリカ国籍なので、アメリカの相続法を調査してみる必要があります。しかし、アメリカは各州が独立の法律をもっており、各地域により法を異にしているため、アメリカの国際私法に相当するRestatement of Conflict of Laws(アメリカ法律協会が現行のアメリカ法中有力で妥当なものを簡単な条文の形で体系的に再現したもの)に従って処理していくことになります。それによれば、不動産の相続に関しては土地の所在地国の法律による旨の規定があるため、やはり日本の法律が適用されることになります。法律の適用が決まったところで次は実際の手続きをみていきましょう。
 相続により不動産の名義を変更する場合、原則、遺産分割協議書、被相続人の出生から死亡時までの戸籍・除籍・改製原戸籍、相続人全員の戸籍・印鑑証明書等を添えて不動産所在地を管轄する法務局へ登記申請をする必要があります。しかし、アメリカには戸籍制度もなく印鑑証明書の発給もありません。戸籍制度が整っている国は日本のほか、韓国(2008年戸籍法廃止、家族関係登録法制定)や台湾程度です。アメリカにおいては身分を明らかにする証明書としては、出生証明書、婚姻証明書、死亡証明書等がありますが、これだけでは相続人の範囲を明らかにすることはできません。そこで、相続を証する書面には①被相続人の死亡という事実、②申請人が相続人であるという事実、③他に相続人がいない事実が必要となります。上記①②に関しては、出生証明書、婚姻証明書、死亡証明書からある程度分かるとしても③を証明するものがないことになります。そこで、被相続人の相続人は何某等であり、それ以外には相続人は存在しない旨を内容とする宣誓供述書を作成し、これをアメリカの公証人に認証してもらうことにより、相続を証する書面を補充していくことになります。通常はこの書面に遺産分割協議の内容を記し、公証人の認証を受けてもらい、相続証明と遺産分割協議書を兼ねるようにしています。今回のケースでは、日本に在住する相続人(Aさんと弟)は遺産分割協議書及び印鑑証明書、戸籍等(亡き母の出生から国籍喪失時まで及び相続人の戸籍)、住民票(弟のみ)を用意し、アメリカ在住の相続人(夫とその子)は相続証明及び遺産分割協議書(公証人の認証付き)を用意してもらい、管轄の法務局へ相続登記を申請することになります。

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