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よくわかる不動産相続 Q&A File.21

よくわかる不動産相続 Q&A File.21

週刊かふう2018年2月16日号に掲載された内容です。

民法相続法分野の改正へ 法案提出予定

今国会において、相続法改正案が提出される見通しです。居住権の創設等、配偶者に考慮したものや、預金の仮払い制、法務局における遺言書の保管等が改正内容になっています。
現行の相続法制がどのように変わるか、その要点を押さえておきましょう。

よくわかる不動産相続 Q&A File.21

Q.相続関係の民法が改正されると聞きました。

今回、相続関係の民法が改正されると聞きました。配偶者の優遇を強く打ち出した内容になるとのことですが、新しく改正される内容やこれまでの民法との違いを教えてください。

A.この改正案では、次の6点が民法に創設又は見直されることになりました。

 法務省の法制審議会民法(相続関係)部会において、平成30年1月16日に民法(相続関係)等の改正に関する要綱案が発表されました。政府は今通常国会においてこの民法改正案を提出する方針です。成立すれば相続法制が改正されるのは、約40年ぶりのことです。
 この改正案では、次の6点が民法に創設又は見直されることになりました。
1.配偶者の居住権を保護するための方策
2.遺産分割等に関する見直し
3.遺言制度に関する見直し
4.遺留分制度に関する見直し
5.相続の効力等に関する見直し
6.相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

 では、どのように変わるのか項目ごとにみていきましょう。
1.配偶者の居住権を保護するための方策
 ⑴配偶者短期居住権の新設
 配偶者が相続開始の時に遺産に属する建物に住んでいた場合には、遺産分割が終わるまで、又は相続開始の日から6か月を経過する日のいずれか遅い日まで、無償でその建物を使用することができるようにする。
 ⑵配偶者居住権の新設
 配偶者の住んでいる建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者にその使用を無償で認める権利(配偶者居住権)を創設し、遺産分割等の選択肢の一つとして、配偶者に配偶者居住権を取得させることができるようにする。
2.遺産分割等に関する見直し
 ⑴仮払い制度等の創設・要件明確化
 相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払い、借金等の支払いなどの資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも払戻しが受けられる制度を創設する。
3.遺言制度に関する見直し
 ⑴自筆証書遺言の方式緩和
 自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言を作成できるようにする。
 ⑵自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の創設
 法務局において、自筆証書遺言を保管することができるようにする。
4.遺留分制度に関する見直し
 遺留分減殺請求の行使によって生ずる権利を物権的効果から、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できる金銭債権へ変更する。
5.相続の効力等に関する見直し
 相続させる旨の遺言等により承継された財産については、登記なくして第三者に対抗することができていた現行法の規律を見直し、法定相続分を超える権利の承継には、登記等を備えなければ第三者に対抗することができないようにする。
6.相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
 相続人以外の親族が、故人の療養看護等を行った場合には、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭請求をすることができるようにする。
 
 高齢化社会の進展に伴い、高齢者同士の再婚や独居老人の増加、家族形態の変化など、相続を取り巻く状況は40年前と比べて大きく変化してきています。今回の改正が実現することにより、配偶者の死亡により残された他方配偶者の権利を保護しつつ、現代の家族形態に則した相続手続きができることで、相続トラブルが少なくなることが期待されます。

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