よくわかる 不動産相続の勘所 Q&A File.9
週刊かふう2018年10月26日号に掲載された内容です。
孫への教育資金の贈与
お孫さんの教育資金の負担を検討する方は多いでしょう。そこで今回は教育費の贈与についてお話します。
ポイントは非課税制度の活用法。非課税となる贈与の種類と内容について解説いたします。
Q.教育費の贈与は非課税だと聞きましたが、どのような制度なのか教えてください。
私は70代の男性です。孫が県外の私立大学へ入学するので、その費用を負担したいと考えております。教育費の贈与は非課税だと聞きましたが、どのような制度なのか教えてください。
A.非課税制度を利用することで、安心してお孫さんの大学資金の援助をすることができます。
お孫さんの大学資金を負担することは、贈与に該当します。しかし、扶養義務者である祖父母等からの教育費のための贈与で、通常必要と認められる部分の金額については非課税となります(都度贈与)。したがって、110万円を超えても課税されません。
また、最大1500万円までの贈与が非課税となる「教育資金の一括贈与」という特例制度もあります。
これらの非課税制度を利用することで、安心してお孫さんの大学資金の援助をすることができます。
解説1 扶養義務者から贈与を受けた生活費や教育費(都度贈与)
扶養義務者から、生活費又は教育費として贈与されたもので、通常必要と認められるものについては贈与税が課されません。これは、日常生活に必要な費用を、扶養義務に基づき贈与されたものにまで課税されるのは適さないと考えられているためです。
❶扶養義務者とは
・配偶者
・父母・祖父母・子・孫(直系の血族)
・兄弟姉妹
・一定の要件を満たす三親等内の親族
※所得税の扶養家族に限りません
❷教育費とは
被扶養者(子や孫)の教育上通常必要と認められる学資等で、義務教育費に限らないとされています。
高額な私立の医学部の入学金や授業料、海外留学の学費も教育に必要な費用となります。
❸数年分の資金をまとめてもらったら?
非課税となる生活費又は教育費とは、必要な都度直接贈与を受けたものに限ります。
数年分の資金を一括でもらい受け、一部が預貯金等となっているなど、生活費又は教育費として使われなかった部分は贈与税が課されます。
解説2 教育資金の一括贈与の非課税(特例制度)
平成31年3月までに、父母や祖父母が30歳未満の子や孫に教育資金の贈与をし、所定の手続きを行った場合には、1500万円までが非課税となる制度です。
解説1の都度贈与と異なり、一括して贈与することになります。
※この特例制度は、平成31年3月でいったん終了となります。期限が延長される可能性もありますが、ご検討されている方は早めのご対応をお勧めいたします。
❶所定の手続きとは
銀行との契約(教育資金管理契約)に基づき、贈与を受けた金銭を専用口座へ預け入れます。また、金融機関等を経由して税務署への書類の提出も必要となります。
※その他、信託等の方法もあります。
❷預け入れた金銭等の専用口座からの払出
払出の方法は、次のいずれかを口座開設時に選択します。いずれの場合も領収証などの支払いの事実を証明する書類を金融機関等へ提出する必要があり、その提出期限は払出の方法によって異なります。
イ.教育費として実際に支払った金額を口座から払出す方法(立替払いが必要)
ロ.イ以外の方法(先に口座からの払出が可能)
※立替払いの有無や領収証等の管理面など、払出方法によって一長一短があります。
❸教育資金の範囲
教育費の範囲は基本的に解説1と同じです。
ただし、塾やピアノ教室などのいわゆる習い事への支払いは、500万円の上限が設けられています。
❹教育資金管理の終了
専用口座等の資金を使い切った場合には、教育資金管理が終了します。
贈与を受けた子や孫が30歳になった場合にも資金管理は終了しますが、終了時の残額に対して贈与税がかかります。
※贈与する金額を決める際には、子や孫の年齢を考慮する必要があります。
まとめ
平成25年に導入された教育資金一括贈与の特例制度はかなり話題になりましたが、それ以前から設けられていた都度贈与の非課税については、ご存じでなかった方も多いのではないでしょうか。
都度贈与を利用することで、複雑な特例制度を使うまでもなく非課税でお孫さんの教育費を負担してあげることができます。
一方で、一括贈与の特例制度は、祖父母が高齢の場合、元気なうちにまとめて贈与ができるというメリットがあります。
どちらの非課税制度を利用するのか、贈与をする方・受ける方の年齢や状況により検討されるとよいでしょう。