よくわかる 不動産相続の勘所 Q&A File.17
週刊かふう22019年3月15日号に掲載された内容です。
将来の相続に向けた準備(土地)
そのままでは活用できない土地などは、相続時の税金等を考えるとマイナスな資産にもなりかねます。相続人がスムーズに活用できる状況にあることが望ましいことですから、ケースに応じた有効な活用法や対策を検討する必要があるでしょう。
Q.将来の相続に向けてこれらの土地について、これから準備する必要があると考えております。
私は自宅の他、土地を数筆所有しておりますが有効活用できない土地があります。将来の相続に向けてこれらの土地について、これから準備する必要があると考えております。子供に苦労させたくないため、私で対応出来ることについてアドバイスを頂きたいと思います。所有している土地のうち、特に気になる土地は次の4筆です。
①父の代から親戚に無償で賃貸している土地
②接道義務を満たしていない土地
③面積が400坪の土地
④経営する会社へ賃貸している土地(根抵当権1億円)
A.所有する土地についての現状把握と子供が活用する際の問題点をリストアップし、必要に応じて専門家等へのご相談をおすすめします。
土地については、相続が発生した時に相続人がスムーズに活用できる状況にある事が望ましいのですが、実際には様々なケースがあり、そのままでは活用できない土地も少なくありません。どのような対策ができるかを知るためにも、所有する土地についての現状把握と子供が活用する際の問題点をリストアップし、必要に応じて専門家等へのご相談をおすすめします。
ご相談者様の所有する土地について、どのような点に留意し今後の方向性を検討した方が良いか以下で解説します。
解説1 ご相談者の場合の留意点
①親戚に無償で賃貸している土地
貸地の評価は、更地から借地権割合を控除して評価しますが、親戚等に無償で賃貸している土地は更地と同じ評価になります。つまり、所有者が活用できないにもかかわらず、評価については更地と同様に扱われることになります。親戚に対して、「親から相続したから出て行って」とは心情的には言いにくいでしょう。
土地を貸した経緯は当事者も変わると複雑になりかねません。すんなり返還してもらえる場合はよいのですが、そうでない場合も考えられますので、贈与又は売買の検討が必要となります。
②接道義務を満たさない土地
接道義務を満たさない土地 (無道路地)については、建物を建築できないため隣接地主との売買又は交換の交渉をする必要があります。このような土地については、第三者への売却は困難であることから、隣接地主との交渉は不可欠となります。
相続税の評価においては無道路地としての評価減はありますが、隣接地主との交渉が困難となれば「負動産」となりかねませんので留意が必要です。
③面積が大きな土地
面積が大きな土地について、相続予定者が1名であれば問題ありませんが、複数名を予定している場合には分筆を検討する必要があり、土地の形状等により活用方法が異なりますので、不動産会社等とのご相談をお勧めします。
ただし、那覇市内の商業地のように分筆せず単独での活用が有効な場合もあります。この場合には、相続人間のバランスを他の資産で調整する必要があります。
④抵当権が設定されている土地
個人の土地に会社の借入のための抵当権が設定されているケースもありますが、借入金は会社のものであることから相続税の評価には影響ありません。また、抵当権が設定されているため、新たな建築や借入等が大幅に制限されます。
このような場合、銀行と抵当権抹消の交渉をする必要がありますが、会社の財務内容が良好でない場合には円滑に進まないことも予想されます。
解説2 その他の留意点
前述した土地以外に隣接地主とトラブルを抱えているケース、返還予定の軍用地や区画整理予定地等のように活用に時間がかかるケース、収用予定の土地のように資金化されるケース、後継者のいない農地等様々なケースがありますので、これらの現状と課題及び将来の活用の可能性等について整理する必要があります。
まとめ
前述したように、土地については様々な状況がありそのままでは利用できない場合もあります。お元気なうちは、活用予定のない土地についての問題が先送りにされている事もあるのではないでしょうか。土地に関しては専門的な知識が必要な場合が多いことから専門家と相談の上、この機会で問題点を解決しては如何でしょうか。