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よくわかる 不動産相続の勘所 Q&A File.19

よくわかる 不動産相続の勘所 Q&A File.19

週刊かふう2019年4月19日号に掲載された内容です。

個人の土地に法人でアパートを保有

税務対策として収益を生む不動産(賃貸マンションなど)を法人で所有するケースはよくあることですが、相続となればまた話は別といったケースも多くあります。その場合のスムーズな相続の方法と対策を考えてみましょう。

Q.アパート2棟は建設会社名義となっており、敷地は個人所有です。

 私は父が創業した建設会社を経営しておりますが、後継者は専務である長男を予定しております。アパート2棟は建設会社名義となっており、敷地は個人所有です。アパートについては、公務員の次男・三男に相続させたいと考えておりますが、スムーズに相続させる方法をご教示願います。

A.対応策として会社からアパートを買い取る、又は会社分割という手法によりアパートを別法人とする方法を検討する必要があります。

 ご相談者様のように、本業以外に収益物件を法人で所有しているケースも多いと思います。アパート建築の際、税金は法人と個人のどちらが有利になるかとの理由から法人を選択したものと思われます。
 今回の場合は、法人の後継者が長男であることから将来はアパートを含めて長男が経営することになります。したがって、次男・三男はアパートの敷地のみの相続となり地代しか得られず、将来のトラブルの原因ともなりかねません。
 そこで、対応策として会社からアパートを買い取る、又は会社分割という手法によりアパートを別法人とする方法を検討する必要があります。

よくわかる 不動産相続の勘所 Q&A File.19

解説1 建設会社からアパートを分離する方法

(1)アパートの名義変更
 将来の相続をスムーズにするために、名義を法人から個人へ変更することを検討する必要があります。、名義変更の際には売買契約が必要となります。なお、個人名義に変更する場合には、個人の資金が法人へ支払われることから、個人の資金繰や将来の相続も含めて検討する必要があります。

(2)会社分割(ただし、課税に留意)
 アパートを会社分割という手法により、貴殿が株主となる新会社にアパートを移転した上で株式及び敷地を次男又は三男へ相続させることが可能となります。この方法により建設業は長男へ、不動産(新設法人)については次男・三男への相続が可能となり、長男への財産の集中が回避されることになります。
 ただし、資産の移転において一定の要件を満たさない場合には、課税されるケースがありますので、専門家へご相談下さい。

解説2 分離以外の方法

 解説1による方法が困難な場合には、次のような方法も考えられます。

(1)アパート敷地を会社へ売却
 アパートの敷地を会社へ売却し、その売却代金を次男・三男へ相続させる方法もありますが、会社の資金繰り及び個人の譲渡所得等のコストを含めて検討する必要があります。

(2)アパートとその敷地を第三者へ売却
 現状のままでは将来の相続時に不満がでることが予想されますので、アパートを売却し資金化することも方法の一つです。この場合、土地の売却代金は個人の収入、建物代金は法人の収入となります。

(3)代償分割
 会社の株式及びアパートの敷地について長男が相続し、長男から次男・三男に対し代わりの財産を支払う方法(代償分割)もありますが、支払額及び支払方法等で合意する必要があります。

解説3 その他の留意点

(1)目先の税負担だけで判断しない
 アパート建設の場合、所得税の負担が大きくなるとの理由から、欠損金(赤字)を有する会社で取得するケースが見られます。個人所有の土地の上に法人名義で建設すると、相続財産は土地と会社(株式)となりますので、相続時に想定される問題も含めての検討が必要です。

(2)事業承継税制(納税猶予)の活用
 解説1(2)の会社分割において、現状では株式の納税猶予制度の活用が可能と考えられますが、アパートが会社分割により別法人となるとこの制度の活用が困難となりますので、制度の活用を含めて検討する必要あります。

まとめ

 アパートを事業会社にて所有している場合、家賃収入は会社に帰属し地主には地代しか入らないことになります。会社の後継者と不動産の承継者を別にしたい場合には、会社所有の不動産を分離する必要があります。
 このような場合、会社の財務に与える影響、相続人の状況、不動産の移転コスト等を総合的に勘案する必要があります。
 以上のことから、アパート建築の際にはくれぐれも名義にはご注意下さい。

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