もっと知りたい!不動産マーケット File.5 コロナ禍での地価調査
今回から各市町村における地価動向をお届けする予定でしたが、急遽、各方面で反響の大きかった令和2年沖縄県地価調査の結果についてお話します。
週刊かふう2020年11月6日号に掲載された内容です。
Case1 商業地・観光地で顕著な新型コロナの影響
9月に発表された都道府県地価調査(令和2年7月1日時点)では、全国的に地価が下落していることが報じられました。もちろん、新型コロナの影響によるものです。
そんな状況においても沖縄県の地価上昇率は、住宅地、商業地、工業地いずれも全国トップでした。しかし、その内容を注意深く見てみると、やはり新型コロナの影響は確実に出ています。これは地価調査における沖縄県の平均変動率を比較すると明らかで、住宅地は+4・0%昨年は+6・3%)、商業地は+6・2%(昨年は+12・0%)、工業地は+11・6%(+13・9%)となっており、上昇率はいずれも減少しています。コロナ禍で下落が拡大したところが多い他県と比べると沖縄県の地価は上昇していますが、これは昨年(コロナ禍前)までの地価上昇分が反映していると言っていいでしょう。
地価調査は年間を通しての変動率なので、コロナ禍の影響が出てきた今年に入ってからの変動がどの位の数字かまではわかりません。しかし、昨年との比較において、大半の地点で地価上昇率が減少していることから、コロナ禍の影響があるのは明白です。特に観光客の影響により地価が上昇してきた地域は、その傾向が顕著です。
具体的な例をあげると、国際通りから中に入った那覇市久茂地の那覇(県)5-8(久茂地3丁目9番14)は、昨年42ポイントも上昇していましたが、本年は2・5%の下落に転じています。また、那覇市以外の商業地でも恩納村の前兼久にある恩納(県)5-1では、昨年8・0ポイントの上昇から本年は4・7%の下落に転じています。
Case2 住宅地、工業地においても先行きは不透明
住宅地でも商業地ほどではないにせよ、やはり地価の上昇幅は減少しています。もっとも、住宅地の場合は、昨年末から高くなりすぎた地価への反動がみられ、木造の建売分譲などにも多少の陰りが見えてきた傾向もあり、必ずしもコロナ禍の影響によるものとは言い切れませんが、やはり先行き不透明感は拭えません。
工業地については、流通業務需要は旺盛ですが、土地供給が限られていますので、いましばらくは地価の上昇は続くように思います。これはもともと沖縄県の工業地が少ないことに起因していますが、コロナ禍のもと、ネット通販の増加など物流施設の重要性は高まっており、工業地の需要、特に物流施設用地は希少性が高いといえます。
次の不動産市況に関するデータは、公益社団法人沖縄県不動産鑑定士協会が行っている不動産DIが今年の年末に発表され、さらに、来年3月には国土交通省の地価公示で具体的な地価が公表されます。これらがコロナ禍の影響を反映したデータとして興味深いものになると思いますから、注意深く見ていくことが肝要でしょう。
今回は急遽、地価調査に関することについてお話しましたが、次回からはコロナ禍のもと各市町村における地価動向を解説します。