もっと知りたい!不動産マーケット 特別編 コロナ禍での地価調査
今回はマンション市況についてのお話をする予定でしたが、去った3月23日に国土交通省から注目の地価公示の発表がありましたので、その価格を踏まえ今後の地価動向をみてみたいと思います。
週刊かふう2021年4月2日号に掲載された内容です。
コロナの影響を大きく受けた那覇5-18の商業地(国際通り右側)
Case1 新型コロナの影響を色濃く反映
地価公示は毎年1月1日時点において、ある定められた地点(標準地といいます)の地価を公示するもので、我々、不動産鑑定士が評価しています。ちなみに沖縄県での標準地は、都市計画区域内に191地点が設定されています。
新型コロナウイルス感染症の影響がある前までは、沖縄県の地価上昇率は全国一でしたが、今回発表された地価公示によりますと、辛うじて上昇したものの内訳をみると新型コロナ感染症の影響が色濃く反映されています。
観光に依るところが大きい県経済の不振は、国際通りの商業地に影響を与え、ホテル業界も大きなダメージを受けました。その結果、商業地は下落した地点がありました。
一番下落した商業地は、那覇市の国際通り沿いにある那覇5-18(安里1-1-19)で、昨年は1平方メートル当たり79万3千円でしたが、今年は4・2%下落して76万円となりました。30%以上の上昇を示していた地点ですから、その影響の大きさうかがえます。
※は昨年の基準地点との共通地点で20年7月1日の価格、変動率
Case2 住宅地、工業地においても一時の勢いに陰り
商業地同様、住宅地でも大きな上昇地点は少なくなりました。もともと那覇市の住宅地では地価が高くなりすぎていたこともあり上昇幅に陰りがみえていました。他の市町村でも然りで、好調だった木造建売住宅の販売に一時の勢いがなくなっていました。
商業地ほど新型コロナ感染症の影響があるわけではありませんが、住宅地の上昇幅が縮小することはある程度予測できました。なかでも北谷町や読谷村など土地区画整理事業により町が発展している地域の地価上昇は顕著でしたから、地域の発展性というのは不動産をみるときに重要なファクターであるといえそうです。
読者の皆さまにはあまり縁のないことですが、豊見城市豊崎の工場地は全国一の地価上昇率でした。県内には工場地として利用できる土地が非常に少なく、新型コロナ禍の影響で通販事業を中心に物流が非常に活発化しているなかでは、そのような地価が上昇するのはある意味納得できる部分です。
現時点で新型コロナ感染症は商業地を中心に県内の不動産市況に大きな影響を与えていますが、新型コロナ感染症の影響がある限りは地価の上昇は考えにくいでしょう。今は下落をしていない地域であってもコロナ禍の影響が長引けば、売るに売れない状況も出てくるかもしれません。しかし、新型コロナ感染症を克服できれば沖縄のポテンシャルは高いですから、また違った地価動向を示すことや容易に想像できると思います。
次回は、マンションの市況についてみていきましょう。