教えてコンサル金城さん 不動産のギモン解決! 第7回 相続財産でもめないために考えたいこと
相続が発生すると、よく問題になるのが遺産や財産にまつわるトラブル。何をどう分けるのか、悩まれている方も多いかと思います。今回は、相続財産のトラブルになる前に必要なことを不動産コンサルの視点からご提案します。
不動産相続によるトラブル
総務省統計局によると、相続財産に関する調停や審判の件数が2000年は8889件だったのに対し、相続財産の争いは年々増えており、2020年は1万1303件に上ります。これはあくまでも調停に持ち込まれた件数で、実際のトラブルの件数はさらに多いと考えられます。もめ事の大半は相続財産である不動産をどう分けるか、また沖縄特有の仏壇の継承がある場合にどのように相続財産を分けるかというものです。そこで、今回は不動産の相続にまつわるOさんの事例を紹介します。
Oさんの相談は、亡くなった親の不動産を売却するために査定してほしいというものでした。この不動産はOさんの親と親族の共同不動産で、親族間で売却後の取り分でもめていました。さらに複数の不動産もあったため、Оさんの兄弟間でも「過去に親から現金をもらっていた」「学費の援助があった」など、生前受け取った金額(生前贈与)などの話も出て、収集がつかない状態になっていました。そこで、不動産コンサルの立場から相続人全員と話し合いを持ち、その際には税理士も同行して生前もらった金額の明細を整理していきました。
不動産コンサルの役割
不動産コンサルの業務は、相続不動産の査定以外にも、相談内容に応じて司法書士、税理士、弁護士などの専門家を交えて話し合いを持ち、相続人全員が着地点を見つけられるよう交渉していきます。その際には、各相続人の意見を尊重するように心がけています。Оさんの場合は親の生前に財産の分け方を決めておらず、遺言もないことから相続人同士で話し合いを持っても折り合いがつかず、その間に体調を崩す方もでてきました。話し合いが長期化すると、相続人が増えてさらに複雑化するケースもあります。
トラブルにならないために、被相続人の生前に話し合いを持ち、書面化(遺言)すること、困った時には弁護士など専門家の知識を取り入れて話し合いを持つことが大切です。
正確な相続財産の分け方の知識を得るだけでなく、不動産財産がある場合は不動産の売却予想価格を知り、財産分けの試算もできるからです。Оさんの場合は、司法書士、税理士、弁護士にも入ってもらい、相続人全員が納得できる取り分を決めることができました。
すでにもめている場合は、ケースによって対処方法は異なりますが、専門家の仲立ちが必要です。相続人同士が主張するだけでは解決しません。専門家が仲立ちすることで、①法律的な観点で判断する、②客観的かつ中立の立場で状況を判断する必要がある、③専門的知見のさまざまな事例から解決策を見つけることができます。最終的な手続きは専門家に依頼しますが、不動産コンサルは各相続人の意見を仲立ちする役割を担っています。
相続財産が少ないから大丈夫とか、いざとなったら話し合うのではなく、前もって考えておくことをおすすめします。
次回は、「家族信託を使った土地活用」について解説します。