かしこいリノベ ♯1
週刊かふう2020年4月3日号に掲載された内容です。
きっかけは自宅から
はじめまして、建築士の林沙希です。建築の仕事に携わりかれこれ15年、現在は父の会社(ナカマ創建)で住宅設計や現場図面(施工図)の作成などをやらせてもらっています。
そんな私ですが結婚を機に中古マンションを購入(3年前)、もちろんリノベが前提の購入でした。それまではずっと賃貸暮らしだったので、初めての家ではアパートではできなかったことをやってみたいとフルリノベーションを慣行! その時の経験や住まいづくりについての思いを建築士の視点で書いていきたいと思います。1年間よろしくお付き合いください。
自分らしい生活を好きな立地で手に入れる
最近、よく聞くようになったリノベーション(以下リノベ)という言葉ですが、以前からあるリフォームと混同されがちです。ほぼ同じ意味で使われているのが普通で、何が違うのかきちんと説明できる人も少ないですね。ただ中身は全然違うので簡単に解説します。
お馴染みのリフォームは、原状回復が主な目的。古くなった建物の壁や床の張替えや修繕、設備(システムキッチン等)の取り替え、賃貸物件では退去時の修繕工事などがそれに当てはまります。
一方、リノベは、古くなった建物をより良いものに造りかえること。戻すだけではなくさらに手を加えてより良い形(付加価値をプラス)に造りかえるという目的を持ちます。例えば、部屋の間取りや水回りの位置を変えて生活動線を変更する。これには「生活スタイルを変える」という要素が含まれてきます。つまり生活の質を高めることもリノベの意義と言えます。
「自分好みに手を加えたい」「好きな場所に住みたい」など、リノベをする理由はさまざまですが、同じ様に新しく住まいを造る新築と比較するとメリットやデメリットが分かりやすいかもしれませんので表にしてみました。0(無い状態)から造りあげるのが新築で、元からあるものを活かしながら造りあげるリノベーション。予算や立地などを考慮して選択してみてください。
次回はリノベに適した物件とその選び方についてお話します。
本来は建築用語のキャットウォーク。天井の梁に足場板を添わせ猫道を作成。これもわたしがしたかったことの一つ
構造上のデメリットも逆にアイディアの見せどころ。柱と柱の間に造作家具を設けデッドスペースを解消
【新築とリノベのメリット・デメリット】
<新築>
・外観を含め0から造りあげるので全てが新しい
・基礎から、家ができあがっていく様子を見ることができる
・現行の建築基準(耐震基準や構造計算等)を満たしている
・リノベよりも融資条件が満たしやすく、ローンの減税も大きい
・工期が長く、土地探しから完成まで2~3年かかる
<リノベーション>
・新築よりも安価。その分で立地が選べる
・現在の間取りと比較して、良し悪しが検討できる
・他とは違う自分スタイル(差別化)が楽しめる
・新築と比べ工期は短いが、意外とかかったりすることも
・柱や梁など構造上の制約もあるが、それが逆にアイディアになったりする
・目に見えない箇所に不測の事態(亀裂や雨漏りなど)が起こっていたりする