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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

可変性に富む平屋で ファミリーの「今」を謳歌

可変性に富む平屋で ファミリーの「今」を謳歌

DATA
設  計: 建築空間アボット/Abbot(担当/當山茂)
敷地面積: 253.57㎡(約76.84坪)
建築面積: 112.00㎡(約33.93坪)
延床面積: 106.49㎡(約32.27坪)
用途地域: 第一種住居専用地域
構  造: 壁式鉄筋コンクリート造
完成時期: 2020年9月
建  築: 有限会社 孝建設(担当/西野義孝、西野哲博)
電  気: 有限会社 中原電設(担当/仲村直也、高良弘二)
水  道: 有限会社 ライフ工業(担当/我喜屋奨)
キッチン: 沖縄ガス 株式会社(担当/新垣泰司)
建  具: 野崎木工 株式会社(担当/野崎達也)

つねに家族の将来を見つめながら「人生設計」を語り合うご夫婦が辿り着いた
可変性に優れ、豊かな家族時間を紡ぐ家。

※週刊かふう2022年1月7日号に掲載された内容です。

可変性に富む平屋で ファミリーの「今」を謳歌

家族の歴史を思うとき「平屋」が最適と考えた

「実家は2階建てですが、住む人が両親だけになった現在、1階のみで生活が完結して2階は全然使っていないんですよ」と、マイホームへの考え方を話し始めたSさん。
「子どもたちの成長過程で必要な空間は変化し、いずれ巣立ちます。夫婦だけになったときのことまで含めて、私たちには平屋がよいと考えました」
 平屋に適した土地を探して辿り着いたのは、周りはすでに住宅が建ち並ぶ場所でした。
「そんな時、これまで家族で見てきた完成見学会からアボット・當山茂さんの設計デザインが私たちの求めるイメージと合致して、依頼することに決めました」
 當山さんの作風で第一に気に入ったのは、焼き杉板コンクリート打放しが風格を高めるスタイリッシュなファサードでした。
「リビングの大きな窓も、ぜひ取り入れたいと思いました」
 Sさんたちが希望したのは、リビングに大きな窓を設けて開放感はほしいがプライバシーは保ちたい、家族の成長に合わせてアレンジできる間取りなど。
敷地の特徴を踏まえた上で當山さんから提案されたのは、外からの視線を遮りつつも自然の風や光を屋内に取りこめるハイサイドライトや雪見窓、ミッドセンチュリー調の花ブロックで囲むコート(中庭)、強化ガラスを天井に採用したトップライトのある物干し場など、多彩なアイデアを駆使したプランでした。

可変性に富む平屋で ファミリーの「今」を謳歌

「人生設計」に沿って引き戸で空間調整

 リビング横には、和紙を素材とした縁なし畳を敷いたモダンな和室(5・5帖)、子ども室1(5・5帖)、子ども室2(7帖)が並びます。各部屋の間は透視性のあるポリカーボネイトを採用した引き戸、オフホワイトに塗装された吊り式引き戸などで区切られており、それらを開け放てば一つの多目的ルームへとアレンジできる可変性に富んだ間取りになっています。さらにリビングやキッチンとも一体化でき、1階全体が広々とした空間へ様変わりします。
 現在、リンパドレナージュの資格を持つ奥さまは、子ども室2を活用して1日2人限定の施術を行っています。
「宜野湾で8年間サロンを経営していましたがしばらく休業し、長男が子ども部屋を使うまでの4年間限定で今年10月に自宅サロンを再オープンしました。その後は、地域、介護に関わるため、現在は介護研修講座を受講し、来月には修了証を取得予定です」
 そう話す奥さまは、結婚当初から2人で将来についていろいろと語り合う時間を持ち、それを実現するためのステップを重ねてきたと言います。居心地と使い勝手に優れたマイホームの取得も、その一つ。Sさんも「将来は仏壇を持つ予定なので、和室の床の間サイドのどの位置に仏壇を入れても自然に収まるよう設計してもらえました」と満足そうに説明してくれました。

可変性に富む平屋で ファミリーの「今」を謳歌

未来と今を楽しむこまやかな工夫

 現在の暮らし心地は、将来的にも快適な毎日へつながります。S邸では、回遊型の動線を創造したキッチンやサニタリースペースの配置、玄関とシューズクロークを一連に仕上げ、駐車場とのアクセスも軽快に。ファミリークローゼットと横並びになったランドリースペースや物干し場も、機能性と家事の効率化をサポートしています。
 スタイリッシュなインテリアが好きなSさんは「造作のテレビボードはモールテックスを塗装して、クールに仕上げています。硬くて防水性に優れたモールテックスを端材に塗って、壁付けの棚に仕上げてもらいました」とこだわりを語ります。
 5台分の駐車スペースを確保した、建物前の敷地使い。
「一人1台ずつ所有するであろう時のために。また、子どもたちが独立して実家を訪れてくれるときのために」と話すSさん。現在、そして将来。どちらも満たされる家族の時間を、住まいが温かく見守る好例に出会えました。

写真ギャラリー

設計・施工会社

沖縄市泡瀬2-7-23 アートヴィラ102

可変性に富む平屋で ファミリーの「今」を謳歌

土地の個性や周辺環境と対峙して人々が晴れやかに暮らせる住まいを創造。

 私は、その土地の風向きや採光の方向性などを決めるまで、現地でじっくりと観察するようにしています。その一環として沖縄で継承されてきた風水の考え方も大切にしています。
 Sさん邸は周辺に2階建ての住宅が建ち並ぶ新興住宅地の一画。平屋をご希望になっているため、ほかのお宅から見下ろす位置関係になります。住宅密集地ではカーテンを閉め切った暮らしになりがちですが、私はできるだけカーテンを付けずに過ごせる住まいをご提案しています。いろいろな観点から考察し、Sさん邸では外には閉じ、建物の内側にいかに自然の光や風を取りこむことができるかをテーマに据えました。
 片流れの勾配屋根にして、建物の2方向にハイサイドライトを設置。リビングと隣り合う場所に外部とリビングのワンクッションとなる空間としてコートヤードを設け、化粧ブロックを目隠しのために採用しました。その軒天井にはグレーチングを設置し、天候によってはコートヤード内に雨が降り注ぎ、半戸外の快適さと自然を感じられるよう工夫しています。目隠し壁やハイサイドライトを通して採光でき、住まうご家族が晴れ晴れとした気持ちになれる住空間に仕上げました。リビングに設けたのびやかな開放感を演出するピクチャービューウインドーもポイントの一つです。中央はフィックスとし、両端が開閉できます。
 Sさん邸では、ご家族の成長に寄り添う可変性も求められました。各部屋の間は引き戸にして、開閉によって空間をアレンジできます。まだお子さんたちが小さいため、モダンな和室とリビングや子ども室1との仕切りはガラスや障子に比べて耐久性のあるポリカーボネイトを採用しました。透視性や透光性もあるので室内の様子も感じられ、プリズムのように美しい光が遠い昔のノスタルジックなシーンを呼び覚まします。
 フロア全体の配分としては、キッチンからリビング側はパブリックスペース、キッチン裏手にはファミリークローゼットやシャワールームなどを集約したプライベートスペースとし、子どもたちもテンポ良く移動できる効率的な生活動線を創造しました。
 Sさんが気に入ってくださった焼き杉板コンクリート打放しは、住まいのファサードに風格を与えて印象を高めて、住まう誇りや愛着が育まれる理由にも結びつきます。
 お二人ともアラフォーのSさんご夫妻ですが、人生設計をこまやかに立てていらっしゃり、ライフステージのそのときどきにお応えできる設計デザインを心がけました。

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