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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

空間が幾重にも重なりつながった さまざまな生活シーンが映える家

空間が幾重にも重なりつながった さまざまな生活シーンが映える家

DATA
設  計: 株式会社一級建築士事務所
      STUDIO MONAKA
      (担当/仲本兼一郎)
敷地面積: 229.01㎡(約69.28坪)
建築面積: 89.70㎡(約27.13坪)
延床面積: 124.80㎡(約37.75坪)
用途地域: 無指定
構  造: 鉄筋コンクリート造2階建て
完成時期: 2021年11月
建  築: 株式会社M’s
      (担当/宮城信次)
電  気: 有限会社沖縄総設
     (担当/伊波)
設  備: 有限会社ライフ工業
     (担当/我喜屋)

打ち放しのコンクリートと木をメイン素材にしたTさん宅は、実用的で無理なく趣味も楽しめる多層的な空間構成が特徴です。室内外が緩やかに連続した環境は3人の子育てにも最適で、充実した毎日を送っています。

週刊かふう2022年5月6日号に掲載された内容です。

空間が幾重にも重なりつながった さまざまな生活シーンが映える家

統一感のあるデザインと多様性のある空間

 表情豊かでシンプルなデザイン。たくさんの居場所があるオープンな空間。なんだか矛盾した表現だけれど、現実世界として違和感なく成立するのが建築の面白いところ。昨年11月に完成したTさん宅は、延床面積約38坪の2階建ての家。視線の抜けが良く、ボリューム感たっぷりの1階LDKを中心に、夫婦と子ども3人の5人暮らしに必要十分なスペースがコンパクトにまとまっています。

「打ち放しのコンクリートをベースにしたデザインは、私たち夫婦の共通イメージです。組み合わせる木の色味や素材感については建築士さんと一緒に検討を重ね、見た目がうるさくならないようにカッコ良くまとめてもらいました」と振り返るご主人。趣味のバイクが堂々と置かれた土間リビングも印象的で、「予算が許せば専用のガレージがほしかったんですけどね。でもその分、どこから見てもバイクが映えるように、造作のキャビネットの位置やサイズなどを細かく計算しました」。

 依頼した建築士は、結婚当初から「いずれ家づくりの際には」と決めていた意中の若手。土間には玄関前のポーチに面してガラス張りの木製引き戸が設けられ、屋外から見ても存在感大のバイクは、ファサードデザインを構成する重要なアイテムの一つになっています。

 新居が建つのはいわゆる旗竿(はたざお)地です。公道に面した隣家はご主人の実家のため、道路とTさん宅を結ぶ路地を2世帯共用のパブリックスペースのようにして活用でき、「子どもたちがよく家の中と行き来しながら遊んでいます。リビングにいても目が届くので安心ですね」。
 玄関の重厚な木製扉とは別に、時に土間の引き戸から家族が出入りする様子は、どことなく昔の民家形態をほうふつとさせます。

空間が幾重にも重なりつながった さまざまな生活シーンが映える家

収納・家具は造り付けにして躯体と一体化

 間取りの切り分けは、“公私の分割”が軸。家族が集う1階LDKは20帖強の広さがあるワンルーム的な空間で、南北の大開口を通じて屋外との一体感も生まれています。その中でも土間とそれに続く水回りは、リビングと比べて床レベルが20センチほど下がった位置にあり、微妙な性格の違いが感じられます。

 一方で2階は、個室3室からなる完全なプライベートフロアです。周囲の視線が届かないように、窓の位置や外躯の高さが緻密に設計されており、天井と壁も塗装して、1階とは異なる優しい印象に仕上がっています。また「室内干し場がほしい」との奥さまの要望に応えるべく、間仕切りの有無ではなく“時間差”による可変性を持たせ、「一番下の子が必要とするまでは、一室だけはドライルームにする予定」とのことです。

 室内は半年たっても、新築直後のように見た目がすっきり。持ち込みの家具はリビングのソファとテーブルだけで、「物をあまり表に出さず、清潔感のある暮らしがしたい」との思いから、収納はすべて造り付けにしました。他にもリビングと土間を分節するキャビネットや、食卓代わりになるキッチンカウンターなどを造作し、空間の無駄を徹底的に省いています。

 新しい生活環境にもすぐに慣れ、「想像以上に風がよく通り、玄関回りも明るくて気持ちいい。庇のあるポーチ部分はバーベキューをするには絶好なので、これからの季節が楽しみですね」と話すご夫妻。「現在の生活スタイルが完成形。これ以上、物を増やすつもりはありません」とのことですが、リビングの南側には近々ウッドデッキを増設予定。完成すれば、空間的な広がりだけではなく、日々の暮らしにも一段と奥行きが生まれることでしょう。

写真ギャラリー

空間が幾重にも重なりつながった さまざまな生活シーンが映える家

見え方が異なる場所が連続したシークエンスを意識した空間設計

沖縄の伝統的な民家形態から着想を得たファサードデザイン
コンクリートを主体に、沖縄で実績のある木材を大胆に使用

STUDIO MONAKA代表 : 仲本兼一郎さん

 建築の世界でよく使われる「シークエンス」とは、移動に伴い景色や空間が変化することを意味する言葉です。大規模建築に限らず一般住宅でも、玄関、ホール、リビングと続く空間がどう見えるか、感じられるかによって、印象は大きく変わってきます。また、国指定重要文化財の中村家住宅の特徴について改めて考えた時、縁側から建物の反対側まで通貫した眺めが、居心地にも深く影響していると感じていました。

 今回のTさん宅では、特に1階部分でこのシークエンスを強く意識してプランニングを進めました。具体的には、屋外に面した土間の引き戸をガラス張りにするとともに、玄関扉に至るポーチ部分を建物に平行して配置。帰宅時にはご主人の趣味であるバイクをなめるようにして見ることができ、自然と気分が高まります。さらには先の中村家住宅に倣い、ポーチからリビングの掃き出し窓まで、南北に通貫した視界を確保。わずか9メートルという距離の中に、性格の異なる幾つものスペースが並んでいますが、抜け感が優れているため手狭さはなく、むしろ重層的で豊かな生活環境を生み出しています。

 建物外観は、伝統的な沖縄民家を手本にしてデザインしました。南側道路から見るとよく分かりますが、生活スペースを収めた内躯を背の高い外躯で覆ったような造形は、屋敷林に守られた民家形態をイメージしたものです。この外躯は目隠しの役割も果たし、2階個室では周囲の視線を気にすることなく、窓を開けて生活できます。一方で北側正面にある屋根付きのポーチや土間といった空間は、深い庇に覆われた雨端をモチーフにしています。
 意匠面では打ち放しのコンクリートをベースに、ご夫妻が集めていた建築雑誌の切り抜きなどを参考にして、濃色系の木をコーディネートしました。色味もフローリングのケンパス材に合わせて、造作家具や収納、建具などを統一。玄関扉や土間の引き戸などエントランス回りについては、住宅の“顔”としてデザイン性をワンランク上げられるように木の採用を提案し、快諾していただきました。もちろん外部空間は強烈な紫外線や風雨に長年さらされるわけですから、図面上の数値だけではなく沖縄での実績を丹念に調べ、耐候性・耐久性ともに問題なしと判断した樹種を選定しています。

設計・施工会社

株式会社一級建築士事務所 STUDIO MONAKA(スタジオモナカ)

TEL:098-851-7711https://studiomonaka.com/okinawa/

TEL:098-851-7711https://studiomonaka.com/okinawa/

豊見城市名嘉地391 2F

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