異次元の大変身! 愛する時間を再編集した「集まりの家」
- DATA
- 設 計: 株式会社 NDアーキテクトン
(担当/大城航平) - 施工面積: 103.3㎡(約31.2坪)
- 用途地域: 第二種中高層住居専用地域
- 構 造: 鉄筋コンクリート造 2階建て
- 完成時期: 2022年4月
- 施 工: 有限会社 大洋建設
(担当/漢那憲祐) - 電 気: 有限会社 開成電設
(担当/玉那覇祐亮) - 水 道: 有限会社 山商
(担当/翁長文高) - ガ ス: エッカ石油 株式会社
(担当/比嘉朝茂) - キッチン: 有限会社 昭和厨房設備
(担当/西銘圭太) - カーテン: 株式会社 モン・シュマン
(担当/大城厚子)
心地いい、リノベ計画14 COMFORTABLE RENOVATION
読谷村 Aさんのプラン
築約50年。外観はそのまま、中は別世界。
扉を開けた瞬間から非日常のときめきにテンションが上がり、やがて人を思うあるじの心に触れて安らぐのでした。
週刊かふう2023年3月31日号に掲載された内容です。
ユーモアと磨かれたセンスで驚かせ、楽しませる我が家へ
大通りに面して建つAさんの家は、昭和の面影を残す鉄筋コンクリート造の2階建て。沖縄ではなじみのある佇まいに、玄関ドアを開ける直前まで、『ホテルライクな家にリノベーションした』という前情報に疑念を持ってしまいました。そのことを告げると、Aさんいわく「いやいや、狙い通り。あえてギャップを感じるように意図したんです」と笑います。
ドアを開けてまず目に飛び込んでくるのは、海外のヴィンテージなサロンを思わせる、優雅さとモダンシックが調和したリビング。そしてダイニングバーを玄関右手に配置。その大胆なアレンジも、天然石の壁が目隠しになっているためサプライズ的な空間となり、その全容との遭遇はかなり衝撃的な演出に。想像を超えた非日常の空間出現に思わず感嘆の声が上がります。
ホームバーの域を超越した本格的なカウンター、整然と並ぶボトルの美しさ、照明やBGMはじめとする繊細で洗練された演出の数々! 「よく『こだわってるね』と言われますが、好きな空間や時間を実現したかっただけです」と涼しげに話すAさんです。
恵まれた家と空間を最大限に活用。リノベの新境地を見る
以前は、1階にご主人のご両親が住む二世帯住宅で、親世帯が空き室になったことから1階部をメインにしたリノベーションを計画。プランは同村に事務所を構える株式会社NDアーキテクトンに依頼しました。
「代表の方とは縁があって顔なじみとなっていましたし、作品集からは僕が理想とするデザインに通ずるものを感じたので迷いなく決めました」。
Aさんの要望は、バー空間をつくる、リビングはカフェっぽく、主寝室はホテルライクに、の三つ。あと、2階の一画に子ども室3部屋を創出すること。
「間取りなど専門的なことはお任せしました。ただ、内装やデザインについては、色・材質・意匠など、明確なイメージがあったのでネットから収集した画像や情報を共有し、細かいアイテム1つ1つまでしっかりと詰めていきました」と、異次元のリノベは、住み手と作り手の協働のたまものであったことがうかがえます。
あわせて「世帯が上下に分離していたからこそ、ここまで大改造することができたし、パブリックとブライベートの住み分けも容易に実現できた」と話し、「(プランの成功は)恵まれていました。運が良かったのも要因です」と笑顔。生まれ育った我が家への愛情と、家を残してくれたご両親への感謝の思いが自然と伝わってきます。
そのパブリックスペースは、まさに“みんな”の場所。バーを設けたのも「もとから家族同士や大勢でのBBQやキャンプを主催するのが好きで、特に夜のほのかな灯りのもと、仲間たちが楽しく飲んでいるのを見ると幸せを感じる。そんな光景とシーンを家の中でも」という思いから。
例えば、ボトルを照らすライトはビーチの夕日や焚き火の色をイメージし、自身の感性が納得するニュアンスを追求しました。同じ過ごすなら、琴線に触れるカッコいいものを、気分がよくなる良いものをと、自身の“好き”を編むようにして大切な場を完成させた印象です。さらに「集まるたびに誰か新しい人を連れてくることを決まりにして、異業種交流の場としても活用。来客時には子どもたちにも必ず挨拶させて、社会との関わり体験につないでいます」とのこと。
大胆なリノベは心地よさのみならず、コミュニケーションのリノベも担っているようです。
写真ギャラリー
施主が持つ明確なイメージを、デザインという品質を、技術者として細部から実現する
株式会社 NDアーキテクトン
取締役:大城航平さん
約50年前の新築時には1階建てだったAさん宅は、家族が増えたのを機に2階部分を増築。歳月を経て、2階はAさん世帯の住まいとして1回目のリノベーションが行われ、今回は1階がメインとなるリノベでした。実はAさんは建て替えも検討されていましたが、建ぺい率や昨今の資材高騰などの面から、建てたてとしてもスケールダウンは免れないということでリノベを選択されました。
リノベなら念願の「しゃれた、特徴のある家」かなえられると、1階のダイニングバーやリビングをはじめ、今回手掛けた全スペースの仕上がりイメージをネットやSNSから収集され、その画像を元に図面を作製しつつ、今回最大のポイントとなる1階のデザイン、内装材の吟味と選出に注力しました。
1階はスケルトンにして空間を再構築しながらも、窓の位置はほぼ既存のままでプラン。解体費用を抑えるポイントにもなっています。
ダイニングバーは玄関から直行できるようにというリクエストに応え、内部に向かって玄関の左手、かつてトイレと浴室、LDKのキッチンがあった場所に配置。勝手口は残し、人や物の往来に利用されています。
リビングは、以前のLDKと仏間、居間を一つにして約22帖を確保。主寝室は「ホテルライクに」という要望からヒントを得て、光と風に恵まれたもと和室にレイアウトし、第2のリビングにする予定ということで約12帖に。隣接していた両親の寝室はシャワー室とパウダールームに変身、奥さまの希望であったユーティリティーとウォークインクローゼットも同じ動線上に配置し、1階部のプライベートエリアとして集約しています。バーやリビングからは存在の気配も感じられない、シークレットな領域です。
玄関はAさんの要望で土間仕上げとし、天井まで届く造作のシューズクローゼットを設置。この存在がパブリックと生活エリアの境界となっています。2階の改装部分、子ども室のポイントは造作した2段ベッドで空間を立体的に仕切る方法。Aさんからのアイデアで、限られたスペースが最大限に活かされています。
最も苦心したのはバーカウンターの造作で、カウンターとシンクを完全に一体化するためにミリ単位で施工。そのかいあって、ラインや角が美しい緊張の感のある佇まいを実現することができました。カウンターは100角の無垢材を巧みに集成加工し、Aさんが望む「グラスがシュッとすべるようなツルツル感」を追求。現場監督や職人と試行錯誤し、ガン塗装を用いて鏡面のような光沢を具現化しました。
これらを含めてAさんからは「大満足」との言葉をいただき、本当に嬉しく思っています。当社の家づくりのコンセプトの中でも特に重要視しているのが「笑い 喜び 楽しさあふれる空感づくり」です。それがかない、Aさんご家族のみならず、ここに集う皆さんも笑顔で過ごされていることは喜ばしく、有り難い思いです。当社はデザイン性に富んだ自由設計を強みとし、施主様のご要望にプロとしての意見も加味していただきながら、細部まで寄り添うことを信条としています。
設計・施工会社
NDアーキテクトン
TEL:098-958-3522 | http://www.nd-arkhitekton.com/