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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

日常と非日常が溶けあうドラマチックな家

日常と非日常が溶けあうドラマチックな家

DATA
設  計: アーキプログレス
     (担当/新垣直)
敷地面積: 145.75㎡(約44坪)
建築面積: 79.69㎡(約24.11坪)
延床面積: 232.73㎡(約70.40坪)
用途地域: 商業地域
構  造: 壁式鉄筋コンクリート造
完成時期: 2023年5月
施  工: 株式会社 降盛建設
     (担当/比嘉高弘)
電  気: 株式会社 にらい
     (担当/大城達八)
水  道: 株式会社 花城工務店
     (担当/嘉陽弘太)
キッチン:  株式会社 LIXIL沖縄営業所
アルミサッシ:有限会社 大洋アルミ工業
      (担当/佐喜真修)

今年5月に完成したS邸は3階がLDK。
「楽しむ」をテーマにステージングされた大空間は、空に開いたインナーテラスが最高の舞台装置となっています。

週刊かふう2023年12月15日号に掲載された内容です。

日常と非日常が溶けあうドラマチックな家

空間の魅力を引き立てるインテリアも秀逸

 家々が密接して立ち並ぶ住宅街。ゆとりある駐車場計画も目を引くモダンな3階建ての住宅。ガレージの脇の玄関扉を開けると白色に包まれたホールが現れ、地窓からこぼれる光が演出となって階段へ導きます。

 最上階に到着すると一気に視界が開け、別世界にたどり着いた感覚に。ゆったりと優雅に広がる空間、澄んだ心地いい風。LDKと一体化したインナーテラスが、L字にレイアウトされたダイニングとリビングの二方向に光を広げ、圧倒的な開放感をもたらしています。特に大開口で正対するダイニングは空の青まで招き、まるで屋外にいるような爽やかさ。一方でテラスは、空とダイレクトにつながりながらもリビングのような落ち着き。「中にいる時は外を、外にいる時は中を感じる。まさに私たちの理想です」と笑顔のご夫妻。「アウトドアも趣味の一つなのでテラスは最高のステージ。わが家でグランピングを満喫しています」。

 そんな非日常的な空間をより一層魅力あるものに仕立てたデザインやインテリアも素敵。特徴的なのは、相反するものが際立ちながらも一つに融合し、生き生きとした表情や洗練された安定感として現れていることです。例えば白と黒のコントラスト。人工物と自然物の組み合わせ。コーディネートを手掛けたのはインテリアの知識も豊富で、何より空間づくりが大好きだという奥さま。磨かれたセンスとともに、住まいや暮らしを愛する思いが伝わってきます。
 

日常と非日常が溶けあうドラマチックな家

家づくりにしっかりと向き合ったからこそ

 以前はマンションに住んでいたSさん。家を持つ夢をずっと温めていた中で土地を得るタイミングがあり、ご主人は迷うことなく、友人でもある建築家に依頼しました。十分な駐車スペースの確保や理想とする間取りなどを、土地の広さと照らし合わせた結果、「縦に造ろう」と3階建てプランで決定。

 計画の始動でご夫妻が初めに行ったのは、何を大事にしたいのか、誰とどんなふうに暮らしたいのか、ライフスタイルや生涯のビジョンをレポートすることでした。奥さまは当時を振り返り「結構書き直しました」と苦笑い。それでも、練り直して行く作業は貴重な経験で、そのおかげで今があると話します。「子どもたちはいずれ独立して行く。それならば夫婦2人で楽しく暮らせて、親しい人みんなで楽しめる家にしようと、テーマが持てたんです」。「その最大の結晶が3階。好きな空間で好きなことをする。大人の遊び場ですよ」ご主人の声が明るく弾みます。
 

日常と非日常が溶けあうドラマチックな家

日常的な住みよさも楽しみながら

 2階は回遊する導線上に、寝室や水回りを配置したプライベートエリア。奥さまが「ここにも力を入れました」とガイドしてくれたのは、Sさん一家の女性陣が一度に入室しても余裕の広さの洗面室です。3人並んで同時にメイクができる造作カウンターは、ワイドサイズのハリウッドミラー付き。より快適に過ごせるようにと、USBジャックなど細かな設備・機能にまでこだわりました。ユニークなのは、洗面室前の通路を「ランウェイ」と呼んでいること。というのも、通路は壁を利用したウォークスルークローゼットになっており、衣装の用意もここで完結。日常の一コマにも遊び心を忘れません。

 インナーガレージを有する1階は、予備的に確保していた空間を居室として活用中。ガレージ側にはシャワー室を設けて、アウトドアの後もサッと洗い流せる便利さも実現しています。

 夜になれば、テラスのオイルキャンドルに灯が灯るSさんの家と日常。「2人でビールを飲みながらゆったり過ごしています」と、新たな日課ができたことを教えくれました。「家に帰るのが楽しみ」と言うご主人は、自ら食材を調達しキッチンに立つこともあるそうですが、「家ができて1番に変わったこと」と声をそろえて笑います。家族や大勢で、ダイニングでもリビングでも、光あふれる朝昼もと、いくつもの過ごし方やにぎわいを、日々満喫していると話すご夫妻。その横顔は幸せにあふれていました。

写真ギャラリー

日常と非日常が溶けあうドラマチックな家

家づくりは人生づくり。施主さま主体でテーマを設定
メリハリのある予算配分が住まいの独自性を引き立てる

アーキプログレス 代表:新垣直さん

 洗練されたデザインがもたらす心地よさ。光と風と暮らす健やかさ。二つの融合から生まれる快適な空間を基に、住む方の感性が満たされるライフスタイル実現のお手伝いを信条としています。

 当社のプランニングは、ヒアリングと平行して施主さま自身に思いや要望を書き出してもらうことから始まります。
 家を建てるという大きな夢はいくつもの理想から成り立ち、どれもこれも捨てがたい魅力あるものであると同時に、その家でどう暮らして行くのかという人生のビジョンを見えづらくしてしまう、近視眼的な面も持ち合わせています。
 そこで、最も大事にしたいことは何か、誰とどんな気持ちで過ごしたいのかなどを鮮明にするてだとして、書き出す作業を行い、家づくりの目的や住まいに求める「芯」をご自身で発見していただきます。そうすることで家づくりがスムーズになり、何かに迷った時には判断に役立ち、完成後の満足度もより深まります。今回のSさまは「夫婦で第二の人生を楽しむ家。みんなが集まり、遊びの場になる家」というテーマをご夫婦で導き出されました。

 当初Sさまは庭のある家を望んでいましたが、計画地は三方を隣家に囲まれているためプライバシー性に難があり、また、理想的な広さの空間を確保することなどから3階建てを提案。最も開放感が得られ3階をパブリックスペース、2階はプライベートエリア、1階はゲストルームとしても活用できるエリアにと、明確なゾーニングでメリハリのある空間展開と居住性の向上を図りました。

 Sさまが思い描いていた庭は、空とLDKの両方に大きく開きつつ、外からの視線は届きにくいインナーテラスとして具現化。フルフラットでつなぎ、壁と天井は室内と同じ塗装を使用するなど、LDKとの完全なる一体化を追求しています。   

 集いや憩いの場として魅せることに磨きをかけた3階に対し、2階は洗濯動線と収納を連結させた回遊設計や、奥さまのアイデアが満載の身支度のしやすさにこだわったパウダールームの実現など、日常の利便性を上げる工夫に注力しました。

 デザイン面ではSさまの意向とシンプルモダンを得意とする当社の方向性が合致。縦横のラインを強調し、スタイリッシュな中にも重厚感が漂う、落ち着きのある空間づくりにつないでいます。

 テーマに沿った家づくりは予算をかけたい所を見極め、そのぶん不要なものは一切排除する思い切りの良さが功を成し、快適性はもちろんのこと、意匠性も際立つ唯一無二の住まいへと結実していきます。

設計・施工会社

宜野湾市上原2-6-6 2F

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