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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

海と空、公私の境が緩やかに溶けていくオーシャンビューハウス

海と空、公私の境が緩やかに溶けていくオーシャンビューハウス

DATA
設  計: Atelier Tete
     (担当/山本隼也)
敷地面積: 624.56㎡(約188.93坪)
建築面積: 349.79㎡(約105.81坪)
延床面積: 408.99㎡(約123.72坪)
用途地域: 無指定
構  造: 鉄筋コンクリート造
完成時期: 2023年7月
施  工: 株式会社國興建設
電  気: 照屋電気工事 株式会社
水  道: 有限会社ライフ工業

多拠点生活で沖縄に家を構えるなら、海の眺望はやはり最大のストロングポイントになります。
今年7月に完成した南城市の住宅について、設計を手がけたAtelier Teteの山本隼也さん・香織さんに案内してもらいました。

週刊かふう2023年12月22日号に掲載された内容です。

海と空、公私の境が緩やかに溶けていくオーシャンビューハウス

ドローンを利用して海の見え方を調整

 坂の中腹に建ち、本島南部の海岸線を見渡す絶好のロケーション。高級リゾートヴィラさながらの眺望と設備を備えたこの建物は、仕事で世界中を駆け回るオーナーの沖縄拠点となる住宅です。上階の2階がメインの生活エリアになっており、海側に開いた東面にはガラス戸が連続。すべての居室が海と正対するオーシャンビューフロアになっています。

「海の見え方は細かく調整しました。敷地のすぐ下が崖になっているので、ドローンを飛ばしてさまざまな視線レベルでのシミュレーションを繰り返し、床の高さを決定しました」と振り返る山本さん。プール付きの屋外テラスと室内とは段差なくフラットにつながり、空が水平線と溶け合うように、視界も海に向かって吸い込まれていくようです。

 間取りは2階中央にLDKがあり、その両サイドに主寝室とセカンドリビング・ゲストルームが配置されています。各居室間は引き戸で仕切れるものの、普段は1枚も残さず開放し、フロア全体を広大なワンルームとして使用しています。
「プランの肝はダイニングの使い方です。沖縄にいる間はゲストをお招きする機会が多く、主客の区別をなくしてお互いフラットな関係で過ごせる家にしたい、というオーナーの要望がありました。そのためLDKの真ん中に大人数用のダイニングテーブルを置くことで、両サイドの居室からパラパラと人が集まり、椅子に腰掛けて談笑するような自然な流れを生み出したいと考えました。キッチンも皆でワイワイしながらダイニングと一体的に使えるように、あえて造作にしています」。
 一方で居室ごとに水回りが用意されており、プライバシーはしっかりと確保されます。

海と空、公私の境が緩やかに溶けていくオーシャンビューハウス

一人でも大人数でも変わらない抜群の機能性

 オーナーとのやり取りは、メールやWeb会議ツールなどオンラインで行うことがほとんどでした。非対面に伴う不自由さはみじんもなく、「判断・決断がとにかく速い。私たちからの提案にも柔軟に耳を傾けてくださり、より良い提案ができるように私たちも常に動き回っている状態でした」と話すほど、スムーズに計画は進展しました。

 当初の予定から変わった点も多く、例えばデザインの方向性は「四角い白い箱」からスタートしましたが、話し合いを重ねるにつれ、「素材の質感を生かしつつ、曲線を随所に取り入れた柔らかい雰囲気」へと移行。丸みを帯びたファサードや室内のアーチ壁をはじめ、壁やカウンターなどのコーナー部分はすべて曲線に仕上げました。

 1階フロアの使い方も、打ち合わせ途中に決定しました。元々は漠然と「展望スペースに」などと想定していたものが、「大好きなサウナを堪能できる空間をつくりたい」との要望を受け、ドライサウナや水風呂、「ととのいスペース」を設置。さらにはジムスペースや、書斎にもなる簡易な個室を設け、一人でも充実した時間が過ごせるフロアになりました。
「オーナーが沖縄に不在の時は、一棟貸ししているとのこと。多拠点生活を送る方には参考になるプランかもしれません」。

 眺望や立地を最大限に生かしたリゾート感・スケール感と併せて、キッチン回りや寝室・サニタリー動線の使いやすさを実感できることは必至。「住むこと」を前提にした細やかな仕掛けの一つ一つが、居心地を高めています。

写真ギャラリー

海と空、公私の境が緩やかに溶けていくオーシャンビューハウス

緻密な作業・工夫の積み重ねが、スケールの大きな空間の魅力を一段と高める

ロケーションの良さを妨げない、開放感と機能性を備えた空間設計。
インテリア建材の制作現場に直接足を運び、デザイン精度の向上を図る。

一級建築士:山本隼也さん(右)、香織さん

 あるがままの眺望を見せるだけではなく、建築によってその魅力を引き立てることも設計の重要なポイントです。今回の計画地は約14メートルの高低差がある崖上に位置し、まずは構造上の問題をクリアした上で「見え方・見せ方」を考えました。

 具体的には、2階東面に並べたガラス戸のうち、メインの生活スペースとなるLDKには8枚建ての引き分け戸を採用して、開放時に約5・4メートルの大開口を確保。屋外テラスの手すりやプール側面も可能な限りクリアガラスを設置し、眼前の海や空まで視線がスムーズに流れるように工夫しました。
 またキッチンを壁付けの造作にしたのは、ダイニングとの一体利用による利便性と併せて、眺望を妨げないようにしたいとの配慮もあります。このほか細かいところでは、1階サウナを利用中も海の眺めが楽しめるように、サウナルーム内の座面や水風呂の高さを調整しました。

 デザイン面では質感を重視し、内外装ともにやわらかく手触り感のある仕上げを多用。床はタイル、壁と天井は漆喰をベースにしつつ、サニタリーでは薄塗でも優れた耐久性・防水性を発揮する左官材のモールテックスを要所に施工しました。
 インテリアにもこだわり、例えばLDK頭上に架かる迫力満点の梁は、宮崎県の業者から買い付けたもの。壁内に収まった部分まで含めると8メートル超もの長さがあるのですが、これだけのサイズの丸太材は、沖縄に限らず内地でも入手困難です。そのためセリに出たとの連絡を受けると即座に飛行機で訪問し、実物を確認して買い付け、その後約7カ月をかけて乾燥・製材・焼き付け処理を行いました。

 ダイニングの鹿角シャンデリアも、思い出深いアイテムです。北海道帯広市にある工房を訪ね、実際の角を組み合わせながらデザインを決めました。
 以上のように非日常感あふれる建物ですが、ダイニングに自然と人が集まる仕掛けや、効率的なサニタリー動線は、暮らすほどに居心地を高めます。特にサニタリーでは、トップライトから降り注いだ自然光がモールテックスの表面に反射して、海側とは異なる非日常的な空間を創り出しています。

設計・施工会社

Atelier Tete(アトリエ テテ)

TEL:098-911-5793http://atelier-tete.net

TEL:098-911-5793http://atelier-tete.net

那覇市首里石嶺町4-425-30 メゾン城301号

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