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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

三角敷地でかなえた 高見えするスキップ空間と安らぎともる家族の時間

三角敷地でかなえた 高見えするスキップ空間と安らぎともる家族の時間

DATA
設  計: 間+impression
     (担当/儀間徹・儀間達紀)
敷地面積: 218.15㎡(約65.99坪)
建築面積: 102.82㎡(約31.10坪)
延床面積: 99.44㎡(約30.08坪)
用途地域: 無指定
構  造: 壁式鉄筋コンクリート造
完成時期: 2024年6月
建  築: 有限会社仲真組
     (担当/仲真敏幸・宮城正和)
電  気: 有限会社開成電設
     (担当/玉那覇裕亮)
水  道: 有限会社島設備
     (担当/島袋恭太)

細長い三角形の変形敷地に建つUさん宅は、夫婦と子ども2人が暮らす床面積30坪のRC造の平屋です。スキップフロアを取り入れて空間に変化を付けながら、奥行き感のある整った間取りを構築。奥さまが描く絵画が映えるように丁寧にコーディネートしたインテリアには、高級感と温かみが同居しています。

週刊かふう2024年8月9日号に掲載された内容です。

三角敷地でかなえた 高見えするスキップ空間と安らぎともる家族の時間

変形地を意識させない縦横に広がるレイアウト

 平面図こそ三角形の敷地形状に沿ったレイアウトになっていますが、動線はすべて直線的かつ回遊的。室内にいて三角地であることを意識する場面はほとんどなく、むしろLDKと子ども室に架かる勾配天井や、勾配に即してかたどられた採光窓といった断面部分に“斜め”のラインが現れています。

 平屋でありながら2階建てのような雰囲気をたたえているのは、子ども室と他の居室の間に高低差があるから。子ども室が置かれているのは、高さ1.4メートルの大収納スペースの真上。そのため隣り合うリビング回りの天井を吹き抜けにしたことで、縦方向の空間の広がりが生まれました。
「階数に含まれない大収納スペースを巧みに使い、タテヨコの変化に富んだ作品を数多く手がけていることが建築士さんの大きな魅力だったので、子ども室をスキップフロアにした断面構成はまさに期待通りでした」とご夫妻。
 プラン全体としては、玄関・LDKを結ぶ廊下が敷地の長辺方向に沿って一直線に延び、その両側に居室や水回りが配置されています。長い廊下はトンネルのような役割を果たし、LDKに出た時の開放感を一気に高めてくれます。

 新居が完成したのは2カ月前。結婚直後から中古リノベを軸にマイホーム計画を進め、奥さまの親縁の土地を使えるようになったことで注文住宅の新築に切り替えました。元々の土地は今以上に細長く、60坪に満たない広さだったものの、建築士の進言もあって南側隣地の一部を取得。敷地東端の短辺方向にLDKを置けるだけのボリュームが得られたため、「東側に広がる森の緑を眺めながら暮らしたい」という生活イメージが無理なく現実のものになりました。

三角敷地でかなえた 高見えするスキップ空間と安らぎともる家族の時間

ディテールまで配慮された空間で生活リズムが自然と整う

 インテリアはどの空間も、シックで高級感あふれる雰囲気に統一されています。色数は極力抑えてシンプルにまとめ、「素材本来の表情を生かしつつ主張が強すぎないように」と意識しながらコーディネート。LDKの壁などの一部は、奥さまのライフワークである油絵が最も映えるような塗装で仕上げました。

 建築時期が資材の高騰期と重なってしまい、計画変更を幾つも余儀なくされましたが、建築士と相談して逆境をプラスに転化。例えばLDKは、全面塗装を取りやめてコンクリート打ち放しにするとともに、型枠も厳選して手作り感のある表情に仕上げました。水回りのタイル選びも積極的に行い、洗面室やトイレ前の手洗いは自らデザイン・施工することでコストを軽減。そうした工夫の積み重ねが一段とわが家への愛着を誘い、完成後の大きな個性になりました。

 住み心地は申し分なし。どのスペースもゆとりが感じられて機能的です。子ども室直下の大収納スペースや主寝室併設のウオークインクローゼット、ランドリールームには、出入り口が2カ所に設けられ、何をするにも移動や動作がスムーズです。暮らし始めてから初めて気付くことも多く、「廊下と平行するようにダウンライトが直線上に並んでいたり、キッチンに隣接する和室の戸の下レールが床に掘り込まれていたり、より広く、より使い勝手よく感じられるように設計されていることがよく分かります」。
 主寝室は二面採光で明るく、LDKは暖色系のダウンライトを主照明にしているため、「生活リズムが自然と整いました」とご夫妻は笑顔。絵画を照らすスポットライトもムードを高め、今後は家族の成長とともに描かれるシーンも変わり、その時々の思い出の一部として記憶に刻まれていくことでしょう。

写真ギャラリー

三角敷地でかなえた 高見えするスキップ空間と安らぎともる家族の時間

家づくりはものづくり。理想の空間づくりに向けて、施主と一緒に創意工夫を凝らす

高さ1.4m以下に抑えた階数不算入の大収納スペースを上手に活用。
家事・生活動線と併せて、駐車スペースのスムーズな動線設計も念入りに。

一級建築士:儀間徹さん(右)、儀間達紀さん

 計画地は不整形な三角形状ですが、平面プランの考え方は比較的シンプルです。最も見晴らしが良く、敷地の短辺方向に最もボリュームを取れる東端にLDKを配置し、あとは細長い敷地形状に沿って直線的にレイアウト。
 リビングの隣にはスキップフロアの子ども室を置き、天井を吹き抜けにすることで、勾配天井に覆われた空間全体の一体感と開放感を創出しました。またLDKと主寝室では、二面に採光窓を用意して積極的に明るさを取り込むとともに、サニタリーは西側にまとめて、西日の影響が生活スペースまで及ばないように配慮しています。

 限られた空間を立体的に活用するために、大収納スペースと居室を重ねてスキップフロアを導入することは、私たちの事務所では定番となっている設計手法です。法律上、床下・小屋裏・天井裏の余剰空間を収納目的で利用した「小屋裏物置等」と呼ばれるスペースは、高さ1.4メートル以下、床面積が下階あるいは同じ階の2分の1以下といった条件を満たせば、階数や床面積に算入されず、容積率や固定資産税の計算にも含まれません。今回のUさん宅では、子ども室の真下を「床下収納」として設計しています。

 建築費高騰のさなかにあってどうにかコストダウンを図れたのは、ものづくりに対するUさんの理解が大きかったように感じています。例えば内装のベースである打ち放しのコンクリートは、仕上がりとコスト面を考慮して普通ベニヤを型枠に使用しました。滑らかで均一な表面に仕上がる型枠材と異なり、ベニヤの木目がそのまま転写されるので場所によって表情が変わり、安価な反面、打設後の状態が安定しないこともあります。ご夫妻はそれぞれのメリット・デメリットをきちんと聞き入れた上で、納得して選択してくれました。

 今回は敷地の造成方法についても腐心しました。車のスムーズな出し入れを考えると敷地西端を駐車場に充てるのがベストですが、かなりの高低差がある上に、浄化槽を埋設するスペースを玄関前に確保しなければならず、どの位置に地盤面を設定すべきか、どの程度の傾斜なら許容できるのか、シミュレーションを繰り返しました。躯体の施工時以上の緊張感をもって現場に臨んだことは、今となってはいい思い出です。

設計・施工会社

間+impression(まアンドインプレッション)

TEL:http://ma-impression.com/

TEL:http://ma-impression.com/

宜野湾市新城2-39-1 SVM A-6

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