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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

高い天井を現しに仕上げて、 縦方向の開放感を創出したリノベ

高い天井を現しに仕上げて、 縦方向の開放感を創出したリノベ

DATA
設  計: 株式会社 アトリエセグエ
     (担当/比嘉俊一)
敷地面積: 246.44㎡(約74.54坪)
建築面積: 104.71㎡(約31.67坪)
延床面積: 169.94㎡(約54.40坪)
用途地域: 第一種中高層住居専用地域
構  造: 鉄筋コンクリート造
完成時期: 2022年4月
建  築: 有限会社 大繁建設
     (担当/赤嶺博也)
電  気: 株式会社 クラフト
     (担当/岸本透)
水  道: 株式会社 クラフト
     (担当/岸本透)
キッチン: 有限会社 MOV
     (担当/前花涼子)

心地いい、リノベ計画16 COMFORTABLE RENOVATION

実家を完全独立型の2世帯住宅へリノベーションしたYさん一家。
基の良さを生かしつつスタイリッシュなインテリアへと昇華させ、新旧ミックスの個性的な住まいに仕上げました。

週刊かふう2024年9月6日号に掲載された内容です。

高い天井を現しに仕上げて、 縦方向の開放感を創出したリノベ

縦方向の広さを実現した2世帯住宅リノベ

 18歳で進学のために実家を離れたYさん。そこから就職や結婚などを経て、仕事の都合により一家で台湾に住むなども経験しました。その後、築30年になる実家の2階をフルリノベーションして完全独立型の2世帯住宅を完成させ、再び戻ったのは2年ほど前のことです。

「リノベーションの設計をお願いしたアトリエセグエの比嘉さんは、学生のとき他府県の寮で親しく過ごした友人です。比嘉さんは当時から建築士を志していて『じゃあ、家を建てるときにはお願いするよ』と約束したことが果たせました」と笑顔で語るYさん。

 十分な広さがあった旧宅に比べると、新居の床面積はサイズダウンとなります。
「私たちの大まかな希望としては、子ども部屋が3室、十分な収納スペース。それから旧宅で便利に使っていたウォークインクローゼットも必須としました」とYさんが当時を振り返ります。
 2階天井の点検口から小屋根を確認してもらうと「躯体の状態がよさそうなので天井を撤去して、縦方向の空間を生かした意匠はどうでしょう」との提案がありました。
 比嘉さんのアイデアは、既存天井を撤去することで天井高が4メートル程度とれる環境を生かし、開放的なリビング、収納ロフトスペースを計画するというものでした。
「小さい頃に住んでいた家の一部を残して、新しい家に溶け込ませるというアイデアにうれしくなりました」

高い天井を現しに仕上げて、 縦方向の開放感を創出したリノベ

ベランダをDKへ借景も楽しむ

 引き戸の玄関ドアを開くとDKが現れます。リノベーション前はベランダだった場所を居住スペースに加え、ダイニング・キッチンに充てました。新設した窓からは採光・通風に加え、周辺環境の景色を取り込めるよう計画しました。
「近くにある緑豊かな施設の景色を〝借景〟しています」とほほ笑むYさん。

 ダイニングから主寝室へ入るドアは、上部を曲線に仕上げたアーチ型。
「新婚旅行で訪れたモロッコの風景や文化がとても気に入り、どこかにモロッコ風のドアを取り入れたいと思っていました」と奥さまも笑顔になります。
 ダイニングには1000枚以上のレコードを収納した壁付けラックもあります。これはDJを趣味とするYさんの所蔵レコードとDJミキサーのサイズに合わせて造作したもの。
 また料理が好きなYさんは、天板の仕様やコンロの火力まで細かく指定したオリジナルオーダーのキッチンを採用。随所にこだわりとわが家らしさのエッセンスがちりばめられています。

高い天井を現しに仕上げて、 縦方向の開放感を創出したリノベ

わが家をギャラリーにするスタイリッシュな暮らし

 ダイニング・キッチンから一連(つひとつら)なりに広がるリビングの傾斜した天井は、新築時の型枠跡を現しにした伸びやかな空間。その思いがけない魅力と開放感に包まれます。
「ソファ上の絵は引越し記念として、画家のDENPA君に描いてもらった自分へのご褒美。わが家のアクセントカラーとトーンを合わせてくれたんですよ」と説明するYさん。
 レコードラックやTVスペースの背面、主寝室の仕切り壁やトイレなど、それぞれ異なりつつ同じ色調のニュアンスカラーを取り入れたインテリアは〝まとまり〟を演出しています。廊下の白い壁にも多くの額装がステキに飾られ、Yさん一家の趣向やスタイリッシュなライフスタイルが伝わってきます。

 リビングには愛犬・トトのケージも。日中はケージから出て家族と遊びます。
「トトがソファに上がっていたずらしないよう、みんなでフロアに座ってトトを中心に団らんしています」と話す奥さま。
「よい意味でシンプルに造ってもらったので、アジアやモロッコ、沖縄のモノや文化などすべてが調和する住まいになりました」と話すYさんの言葉を受けて、奥さまも「寝室で寝転がるとリビングからの明かりで天井が見えて、温かい気持ちになります」と幸せそうにほほ笑みました。

写真ギャラリー

高い天井を現しに仕上げて、 縦方向の開放感を創出したリノベ

既存の「記憶」や「愛着」を住み継ぐ、その想いを意匠に取りこむ

株式会社 アトリエセグエ
代表取締役・一級建築士 比嘉 俊一さん

 Yさんのご実家をリノベーションするにあたり、竣工時の設計図書が残っており躯体の柱や梁の位置が明確だったこと、寄せ棟屋根の天井裏を点検したところ痛みが少なく状態が良好だったことなどが幸いし、プランニングや工事をするにあたり大変助かりました。リノベーションに際して大切なことは、リノベーション前の躯体を空間的にしっかりと把握することにあると考えているからです。

 1階と2階をつなぐ内階段は閉じて、Yさん家族の住まいとなる2階へは外階段で昇降する完全独立型の2世帯住宅としています。また1階の一部をリノベーションし、現在もYさんのご両親がお住まいになっています。
 もともとトイレは2階にもあったので、その縦配管を生かすことを優先して水回りの位置を先に決め、ひとまとまりとなるよう間取りしました。もとはベランダだった場所に、新たにダイニング・キッチンのため増築しました。

 Yさんの旧宅と比べると新居の床面積は小さくなってしまいますが、天井で隠れていた広い空間を最大限に生かして、立体的・視覚的に開放感を感じられるプランを提案しました。具体的には、リビングと主寝室の天井を現しに仕上げ、2室の間の壁上部はガラスをはめ込んで明かりや視線が抜けるよう緩やかな仕切りとしています。子ども部屋のご希望は3室でしたが2室とし、その分LDKを充実させるプランを考えました。また、子ども部屋やウォークインクローゼットの上にロフトを設け、収納スペースとして提案しました。

 床材には自然塗料を塗ったチーク材を採用しており、Yさんたちはそれにマッチするような明るめのオーク調家具をセレクトして調和を図っているのを拝見すると、設計士としてうれしく思います。リビングに掛けられたDENPA氏の作品や、廊下の白い壁をギャラリーのように演出していらっしゃる点も、Yさん家族の暮らしにマッチした楽しみ方・使い方をサポートできてうれしく見ています。
 私はそこに住まうご家族のこれまでの暮らしの中で培った経験や考えを丁寧にくみ取り、「想像力と創造力をかき立てる、ベースとなる空間をどう設計するか」に尽力しています。特にリノベーションでは「もとの住まいの記憶や愛着を受け継ぐ」ことも大切なポイントだと思います。Yさんのお住まいでは2階の天井裏に隠れていた広い空間と、その天井に残っていた型枠や工事の形跡を意匠に取り入れたことが、よいアクセントになってくれたと思います。

設計・施工会社

浦添市西原4-33-1

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