都市部でも光と視線が広がる巧みなフロアプランで親子の要望をかなえた二世帯住宅
- DATA
- 設 計: アイムホームデザイン
(設計担当/仲順裕二) - 敷地面積: 173.21㎡(約52.39坪)
- 建築面積: 103.82㎡(約31.40坪)
- 延床面積: 204.81㎡(約61.95坪)
- 用途地域: 第一種住居地域
- 構 造: 鉄筋コンクリート造 2階建て
- 完成時期: 2024年10月
- 建 築: 株式会社 アイムホーム
- 電 気: オーシロ電機(担当/大城)
- 水 道: 日信工業 株式会社
(担当/伊野波) - キッチン:パナソニックリビング九州
株式会社
今と将来を見据え、完全分離型の二世帯住宅を新築したGさんファミリー。
立体感のあるリズミカルなファサードには、父母が育てた色とりどりの植栽が映え、建物がひしめく密集地に潤いを創出。
親子世帯それぞれのライフスタイルに合わせて1、2階をプランニングし、ストレスフリーでくつろげる伸びやかな住まいを実現しました。
週刊かふう2025年2月21日号に掲載された内容です。
2階子世帯を拡張し1階に子ども室を設置
1階親世帯は奥さまの両親2人暮らしで、2階子世帯はGさんご夫妻と就学前の子どもが2人。ワンフロアの広さはともに約30坪。今後は子どもたちの成長につれて2階の活動量が増える一方だから、子世帯のスペースを1階まで拡張したほうが、建物全体を効率的に使えてバランスがいい。そのため子ども室2室は1階へ配置し、「将来個室で過ごす時間が長くなっても、家族と必ず顔を合わせるように」とリビング・キッチンの横に内階段を設けました。
「家づくりを始めた頃は具体的なイメージがほとんどなくて、話し合いを進めていく過程で今のプランが生まれてきました。間取りや内外装のデザインも、資金計画も含めて全部、建築会社と一緒につくり上げた感じですね」と振り返るご夫妻。当初はただ漠然と、「LDKはできるだけ広く、天井を高く」「家事動線は機能的でコンパクトに」などと思い描いていたことが、「こんなすてきな家になるなんて」と当の本人たちも驚きと納得の形に仕上がりました。今ではオーダーメードのシャツのように、家族全員の生活になじんでいます。
マイホームの構想自体はかなり以前から抱いており、ご主人の仕事の状況をみながら「長男が学校にあがるまでには」と考えていました。3年ほど前、希望していたエリアに土地が見つかったことや、奥さまの実家の老朽化が激しくなったことを受け、予定よりやや早めでしたが機を捉えて二世帯住宅の計画に着手。「前々からお願いすると決めていた」という建築会社と二人三脚でプロジェクトを進め、昨年10月に待望の新居が完成しました。
吹き抜けのような開放感とぐるぐる回れる生活動線
2階子世帯のLDKはL字形のレイアウト。横並びのリビング・ダイニングは床と天井がフラットにつながったワンルーム的な空間で、天井高は3.5mと吹き抜けのような開放感があります。ファサード側には半屋外のベランダが隣接してセカンドリビングの役割を果たしており、「手すりを高めに設定したことで、外部の視線を気にせず過ごせるのがうれしいですね。広さも8帖以上あるので、庭のように使えて重宝しています」。
キッチンはペニンシュラタイプの対面式でダイニングの隣に位置し、フロア全体を見渡せます。正面にはベランダに面した全長4m弱の造作カウンターがあり、近い将来、勉強や読書に励む子どもたちを見守るご夫妻の姿が目に浮かびます。
限られた面積の中でも、公私のスペースは無理なくきっちりとゾーニング。家事動線はリビング・ダイニングから目の届かないキッチン背面にまとまり、通り抜け可能なファミリークローゼットを挟んでサニタリーと主寝室・物干し場がそれぞれ両脇に置かれています。毎日の家事や身支度などを効率的にこなせることに加え、LDKとの間をぐるぐると回遊できるので、すべての空間につながりが生まれて実際以上のゆとりが感じられます。
1階親世帯はLDKと個室2つを並べたシンプルなレイアウトです。動線が短くて使いやすいだけではなく、壁内に収めた仏壇や父親の記念アイテムを飾るディスプレー棚など、Gさん一家の歴史が映える仕掛けも盛り込まれています。また家の外観を彩る植栽の手入れも父母が担い、ファサードには色とりどりの鉢植えが並んでいます。
一方で2階のドレスアップはまだまだこれから。とりわけLDKは「想像以上に広い空間を用意してもらえたので、全体のバランスを考えながら、家具や観葉植物などを少しずつそろえていく予定です」とのこと。年月とともに果たしてどんなテイストに昇華するのか、家づくりの楽しみは今も継続中です。
写真ギャラリー
ゆとりを感じる居室スペースと機能的な家事動線
外に開きにくい環境下で、全体の空間バランスを整える
空間を3次元的に捉え、親子世帯の生活ボリュームに応じて1、2階を分節
オープンでも外部からの視線が気にならない、凹凸を生かしたファサードデザイン
右から一級建築士:仲順裕二さん、営業担当:バクシ瑠加さん、デザイン担当:松田和歌奈さん(合同会社マニュファクトリー)
建物が整然と並んだ密集地での二世帯住宅のプロジェクトです。計画地の広さは50坪強。南東側道路で正面には背の高い住宅が建ち、残り三方も隣家が迫るような外に開きにくい環境のため、開放感とプライバシーの両立が大きなテーマになりました。
二世帯住宅のスタイルとしては、1・2階の親子世帯それぞれに独立した玄関を設けた完全分離型です。しかし単純にフロアを切り分けるだけでは、家族の人数や活動量と床面積との釣り合いが取れないため、2階子世帯の子ども室を1階に配置して内階段でつなぐことで、2階の十分な生活スペースを確保。その上で2階フロアを横断するようにリビング・ダイニングを一直線にレイアウトし、天井も高く設定して空間全体のボリュームを高めました。
リビングには半屋外のベランダに面して掃き出し窓を並べ、自然光を積極的に取り込むと同時に内・外を緩やかに連結。ダイニングにも造作のスタディーカウンターと平行して横長のフィックス窓を取り付けて、縦方向だけではなく水平に広がる視線の流れを生み出しました。またダイニングの隣にあるキッチン回りにも光を届けるために、ダイニング北側のコーナー部分にハイサイドライトを設置して明るさを補っています。
インテリアは白を基調にしてグレー・ダークブラウンを織り交ぜながら、明るく清潔感あふれる雰囲気に。限られたスペースの有効利用も徹底し、例えばキッチン背面にあるファミリークローゼットは、寝室・物干し室と洗面・浴室間を結ぶ通路を兼用することで、空間効率と生活効率を高めました。
周囲にはデザイン性の高い建物が多かったため、シンプルながらも引けを取らず、Gさん宅らしい個性を感じられるように、ファサードの造形意匠にもこだわりました。内装同様に3色を塗り分けながら、外壁に凹凸を付けて立体感を創出。2階ベランダの手すり部分は外部からの視線を遮るようにやや高めのコンクリートで覆い、所々にスリットを設けたりラインを入れたりしてアクセントを加えました。一方で1階は、ご両親が育てた植栽が目隠しになると考え、フェンスなどは設けずオープンにしました。庭はなくてもカラフルな、潤いのある外構に仕上がっています。
設計・施工会社
株式会社アイムホーム
TEL:098-989-1659 | https://imhome-okinawa.co.jp/