五つの箱と隙間でできた 抜け感良好の高台の家
- DATA
- 設 計: 株式会社GAB
一級建築士事務所
(担当/濱元宏、豊崎孟史) - 敷地面積: 443㎡(約134坪)
- 建築面積: 168㎡(約50.8坪)
- 延床面積: 153㎡(約46.3坪)
- 用途地域: 第一種低層住居専用地域
- 構 造: 壁式鉄筋コンクリート造
- 完成時期: 2024年5月
- 建 築: 株式会社GAB
(担当/濱元宏、豊崎孟史)
週刊かふう2025年4月11日号に掲載された内容です。
南北両サイドに眺望が開けた好立地
家の中央にはホールのようなリビングがあり、その周囲に独立した「箱」が五つ。箱と箱の間の「隙間」はそれぞれダイニングやスタディースペース、タイルテラスなどに充てられており、どこにいても視線が隅々まで抜けるように設計されています。
「眺望に引かれて選んだ土地です。もともと敷地南面は雑木林のような状態だったのですが、木々をかき分けてみると、北側とは趣の異なる視界が開けてびっくり。購入前には依頼先の担当者にも一緒に見てもらい、”面白い家ができそうだ”とお墨付きをもらいました」と振り返るHさんご夫妻。新居は小高い丘上にあり、前面道路を挟んだ北側には新しい町並みを見下ろし、南面の庭側には本島南部の穏やかな景色が広がります。
「隙間」の一つは「ネコの部屋」です。実は「愛猫たちがのんびり過ごせる専用ルームをつくりたい」と考えたことが今回家づくりを進めることになった遠因であり、「キッチンに猫が入らないように」などと人と猫の心地良い共生環境を求めた結果が、ユニークなプランにつながりました。
家事動線や視線の流れを緻密に計算したレイアウト
キッチンを収めた「箱」には出入り口が3つ。リビング側のドアを開ければタイルテラスや庭まで目が届き、反対側の勝手口からは北側の住宅街を一望できます。シンク背面のドアはダイニングに通じており、食事の準備・後片付けもスムーズにこなせます。
「リビング・ダイニングのどちらからでもアクセスでき、使い勝手は抜群です。シンク正面の窓からはスタディースペースの様子が見えるので、台所作業中も常に家族の気配が感じられるのがうれしいですね」。
主寝室・子ども室の箱は庭に面し、両室の隙間がタイルテラスになっています。また水回り・家事室の箱はファミリークローゼットや空調室の機能を兼ねており、天井の余白はロフトとして活用。さらにリビングに面した箱の外側の壁はプロジェクターのスクリーンの役割も果たし、一箱マルチの大活躍です。
「自分たちでは到底想像できないプランニングで最高の最高の住み心地。猫がいるのであまり物は増やせないけれど、吊り装飾などを使って少しずつコーディネートを楽しんでいきたいですね」。
住み始めてちょうど1年。安らぎとときめきに満ちた毎日が続いています。
株式会社GAB 一級建築士事務所
建築士 濱元宏
南北で趣が異なる眺望を建築にどう取り込むのか、ご家族の生活スペースの中に「ネコの部屋」をどう位置付けるのかを徹底して考えた住宅です。
平面計画としては敷地形状に沿った台形状のプランとし、その中に個室や水回りを五つの「箱」に分けて配置。それぞれの箱は密接させずに「隙間」を設け、南北の視線の抜けを創出しました。またSCL(シューズインクローゼット)・トイレを収めた箱とキッチンの箱は西側に置いて直射日光の侵入を防ぎ、主寝室と子ども室は芝庭や畑との連動性を考えて南側に配置するなど、光や風の流れ、熱対策を意識したレイアウトにしています。
断面的には、リビングから続くダイニングやスタディースペースなどの各隙間スペースの天井高は2.45mで統一。一方で箱の内部は、収納場所を確保するために垂直方向に空間を活用し、最も大きな水回り・家事室棟で3.8mの天井高を設けています。
また前面道路沿いに残っていた古い石垣を、目隠し壁として再利用。土地の記憶をとどめ、地域の歴史を継ぐ家になってほしいとの思いを込めました。
設計・施工会社
株式会社GAB(ギャブ)一級建築士事務所
TEL:098-987-7331 | http://gab.okinawa/