動線と視線をつなぎ、爽やかな空気が巡る家にリノベーション
- DATA
- 所在地:那覇市
- 家族構成:夫婦、子ども2人
- 設計:アアキ前田株式会社(担当/前田慎、比嘉園美(旧所員))
- 敷地面積:330.00㎡(約100.00坪)
- 建築面積:130.00㎡(約40.00坪)
- 延床面積:155.00㎡(約45.00坪)
- 構造:鉄筋コンクリート造2階建て
- 完成時期:2016年4月
- 建築:株式会社タカミワークス(担当/高嶺健次)
- 電気:有限会社美光電設(担当/砂川義光)
- 水道:有限会社ライフ工業(担当/我喜屋奨)
- キッチン:株式会社モン・シュマン(担当/大城厚子)
Hさんご夫妻のリノベーションは、既存の住宅を「どうグレードアップしたか」と同時に、敷地と建物に元来備わっていたポテンシャルを「どう引き出したか」が大きな見どころ。高台の斜面地に建つ築33年の家を購入し、建築家の手を借りて、光と風、そして視線が巡る心地良い住まいへとつくり替えました。
眺望・立地・建物の潜在的な可能性を総合的に勘案し、購入を決断
Hさん宅があるのは見晴らしの良い高台の土地。なだらかな斜面に沿って視界が開け、南西の方角には那覇の街並みが広がるパノラマビュー。ご夫妻がマイホームの検討を始めた頃は「海を眺めながら暮らしたい」との憧れを抱いていましたが、その思いの強さに匹敵するだけの爽快感・開放感があり、5年前、この土地に建つ築33年の中古住宅を購入しました。もともと新築・中古へのこだわりは少なく、「仕事へ行くにも便利な好立地。かなりボリュームの大きな家だけに、予算面を含めて懇意の建築家に相談したところ、いいリノベーションができそうだったので」とご主人。依頼した建築家は、以前に仕事を通じて店舗設計をお願いしたことがあり、「彼が出す結論なら間違いないから」と絶大な信頼を寄せていました。
購入した家は、床面積約45坪の2階建て。斜面と平行するように建物全体に勾配屋根が架かり、2階に4部屋、1階には大きな居間の他に2部屋があり、このうち1階の書斎は居間から階段を下った半地下のような空間になっていました。しかし数字上のボリュームとは裏腹に、各部屋・各スペースが細分化されているため広さが感じられず、外からの光が家全体に行き届かずに薄暗い場所も多く、肝心の景色は室内からほとんど見えない状態。しかも最も眺望が開けた居間の南西側にはサンルームが置かれ、家の中と外が完全に分離されていました。
したがってHさんが求めたリノベーションの方向性は、できるだけ明るく広く、景色も楽しめるようにすること。その中でも家事をはじめ毎日の生活動作をスムーズに行えるように、無駄のない効率的な動線計画をリクエストしました。
家事効率に優れ、メリハリの効いたボリュームの大きな空間を創出
改修期間は約6カ月。リノベーション前後で大きく変わった点は、動線と視線につながりが生まれ、期待通りの明るさと開放感が得られたこと。空間を細かく仕切っていた既存の壁の多くが取り払われ、本来備わっていたボリューム感が全面的に引き出されました。
例えば以前の書斎は畳間になり、LDKとオープンに結ばれたセカンドリビング的なスペースに。既存の段差をそのまま利用したことで、かえってフロア全体に奥行き感が生まれ、実用面でも「2階からでも目が届くので、子どもたちを遊ばせておくには絶好の場所。私たち自身も本を読んだり寝転がってくつろいだり、腰掛けにもなる幅広のステップ部分を含めて多目的に活用しています」。また室内外を隔てていたサンルームは、リビングから続くデッキテラスとなり、室内外を緩やかにつなぐ場所に変身。さらにデッキ回りを中心に家の南西には大きな開口が並び、一転して眺望自慢の家になりました。
水回りは位置こそほとんど以前のままですが、全体的にフレッシュな光と風が巡るように改修され、明るく使い勝手の良い空間へと生まれ変わりました。 唯一キッチンだけは、カウンター奥の閉鎖的な場所から表へと引っ張りだし、「インテリアとしても映えるように」とご主人がこだわり抜いたアイランドタイプの製品を設置。代わりに以前の場所はパントリーにして、見た目のオープンな印象と機能性の両立を図りました。
「これだけ大きな家だからこそ、壁を撤去すると逆に移動が大変になるのではないかと懸念していたのですが、家事効率は申し分なし。造作家具や段差を上手に使って、メリハリの効いた空間に仕上げてもらった点も気に入っています」。
緻密に練られたプランに支えられて、窓越しに広がる景色の移ろいを楽しみながら、思い描いていた以上の快適な毎日を送っています。