癒しの要素満載のコートハウス
- DATA
- 所在地:那覇市
- 家族構成:夫婦、子ども3人
- 設計:松島デザイン事務所(担当/松島良貴、翁長宏光)
- 敷地面積:257.76㎡(約78.00坪)
- 建築面積:100.76㎡(約30.00坪)
- 延床面積:123.50㎡(約37.00坪)
- 用途地域:第一種低層住居専用地域
- 構造:壁式鉄筋コンクリート造2階建て
- 完成時期:2017年5月
- 施工・建築:松島デザイン事務所(松島良貴、翁長宏光)
- 電気:松島電気工業株式会社(竹島寬)
- 水道:泉水設備株式会社(新里紀章)
- キッチン:松島デザイン事務所(松島良貴、翁長宏光)
那覇の市街地に2年前に完成したFさん宅は、リビング南面にLDKと同サイズの中庭(コート)を配した2階建てのコートハウス。使いやすさを重視したシンプルなプランの中には、「離れ」として重宝する多目的室や、夜風が心地よいデッキテラスなど、癒しの要素が満載です。
提案された住宅模型をベースにプランを微調整
周囲に家々やアパートが建ち並ぶ住宅街で、お隣は奥さまの実家。プライバシーと開放感を両立するには「コートハウスがいいんだろう」と考えたとき、依頼先として真っ先にFさんの頭に浮かんだのは、建築設計・施工の事務所を営む大学の同級生でした。
「似たような市街地で幾つもコートハウスを手がけた実績があり、設計だけではなく自社で施工もやっている点が魅力でした。それに何より、彼がどんな姿勢で建築の仕事に取り組んでいるのか知っていたので」。
Fさんご夫妻は共働きで子どもは3人。実は以前に一度だけ、分譲マンションの購入を検討したことがありましたが、「意外と5人家族に合ったプランが見当たらない」ため断念。そして3年前に奥さまの実家の土地を分筆し譲り受けられることになり、今回の計画が実現しました。打ち合わせではまず家族の生活スタイルや、「シンプルで使いやすい家にしたい」といった大まかな要望を伝えて住宅模型をつくってもらい、それをベースに微調整を繰り返していきました。
「最初の提案模型から大きな変更はなかったですよ」という間取りは、光が降り注ぐ吹き抜けのコートとLDKが1階にあり、2階は主寝室と3つの子ども室、水回りから成るプライベートフロア。主寝室と水回りはデッキを介して連続し、一方の子ども室はテラスを介して吹き抜けに面しています。また子ども室は完全に仕切らず、収納を間に挟んで簡易的に3等分した空間を一列に並べました。
1階にLDKと完全に分離した、「離れ」の多目的室が置かれている点も特徴の一つ。今まではご夫妻がちょっとした仕事や家事をするときに重宝して利用していましたが、いよいよこの冬、子どもの一人が体調を崩して隔離された際に「居心地のよさを知ってしまったようです」。今後は予約争奪戦が始まる気配。
キッチンはオリジナル。
コンクリートは厚く堅く
最初の住宅模型から微調整した点は、主寝室を少し狭めてウオークインクローゼットを配置、洗面収納を一部省いて物干し場にガス乾燥機を設置、階段回りに収納棚を造作、など。このほか1階リビングの開口部には、引き違い窓の代わりに全開放できる折戸を導入しましたが、「コートとの一体感も開放感も高まり大正解」。何かにつけコートの使い勝手のよさも感じており、「バドミントンだって思い切り楽しめるし、先日の暖かい日にはビニールプールを出して下の子と遊びました」。
計画当初からFさんが抱いていたこだわりも随所に盛り込まれています。例えば対面式のキッチンは、既製品ではイメージに合ったものが見つからず、奥さまの要望をもとに造作しました。食洗機とガスオーブンを内蔵し、ワークトップはオールステンレスに。「できるだけ広々とした状態で料理や家事をしたいから」と手元は隠さずフルオープンにしました。
ご主人のこだわりの要素は、目に見えない部分がほとんどです。家中どこでもインターネットが使えるように、全室にLANケーブルの差し込み口を配置。また躯体のコンクリートはできるだけ厚く堅く、建築士が指定した数値に納得した上で打設しました。その影響もあるのか、窓を閉めたときの気密性の高さと相まって、「とにかく遮音性が高い。家族みんなでリビングに集まってカラオケをしても、隣の実家にいるとまったく音が聞こえないので」。
初夏を迎えてこれからしばらくの間は、2階のデッキテラスをフル活用できる時期。壁に囲まれカーテン要らずのFさん宅には浴室だけ、申し訳程度に目隠しがついていますが、ご主人一人はお構いなし。シャワー後はデッキを闊歩して熱を冷まし、横になれば木の柔らかな感触が心地よく、那覇の星空をひとりじめできます。