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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

沖縄らしさを今に紡ぐ おおらかで小さな木の家

沖縄らしさを今に紡ぐ おおらかで小さな木の家

DATA
建物形態:簡易宿所(将来は父親が居住予定)
所在地:名護市
設計:株式会社クロトン(統括/下地洋平、担当/仲宗根達紀)
敷地面積:166.24㎡(約50.28坪)
建築面積:66.08㎡(約19.99坪)
延床面積:57.81㎡(約17.49坪)
用途地域:未指定地域
構造:木造軸組工法平屋建て
完成時期:2018年4月
建築工事:上地工務店
基礎工事:株式会社長山建設
屋根工事:オクハラ瓦技術
設備工事:創電水プラン
造園工事:進寿庭苑
ユニット工事:株式会社クラフト
空調工事:松下工業株式会社

かふう722号(2019年8月2日号)に掲載した「2018年度 木の建築賞」受賞作2点の家づくりをご紹介します。まずは屋我地島の済井出集落にある簡易宿所「仲松屋」(受賞時の作品名は雀庵)です。

沖縄らしさを今に紡ぐ おおらかで小さな木の家

島の自然豊かな環境に父親の隠居住宅を建てる

「仲松屋」はもともと施主のNさんが、将来の父親の隠居住まいとして計画したもの。伝統構法をベースにした建坪約20坪のコンパクトな平屋住宅で、一番座、二番座などの部屋が 田の字 に連なる昔ながらの間取りを踏襲しています。昨年4月の完成後もまだ父親は現役を続けているため、当面はNさんがホストとなって、一棟貸切のいわゆる民泊施設として運営することになりました。
 ところで今回のプランニングにあたって、「伝統的な沖縄民家にしたい」と発案したのは、父親ではなくNさんでした。電気設備を扱う職業柄、さまざまなタイプの住宅工事に関わる機会が多く、特にここ数年は「木造が増えてはいるけれど、沖縄古来の建築要素を継承した家はあまり見かけない」ことを痛感。父親宅の計画が持ち上がったときには既に「せっかく建てるなら」と方向性は定まっていました。
 依頼した建築士とは中学時代の同級生でした。たまたま会って話をした際に初めて木造の実績があることを知り、どんなスタイルの家づくりを目指しているか、頭の中にある構想について相談。さっそく過去の作品を見学したところ「まさに求めていた理想の形」であると共感し、具体的に話を進めていくことになりました。
 基本的に父親の一人住まいを予定していたため、建物も土地自体もさほど広さは必要なく、「自然豊かな環境でのんびり過ごせるように」と屋我地島の済井出集落にある約50坪の土地を購入。歩いてすぐの場所には地元の商店やローカルビーチがあり、結果として民泊運営の面でも観光重要に適した好環境でした。

沖縄らしさを今に紡ぐ おおらかで小さな木の家

民泊施設としても高評価「スーパーホスト」に認定

「仲松屋」はファサードももちろん沖縄的。赤瓦の屋根には漆喰シーサーが乗り、家の南面には軒を深めに取って雨端空間を創出。さらに外構には花ブロックを配し、敷地全体が沖縄らしさあふれる空間に仕上がっています。
 間取りは正面右手から、一番座にあたる和室、二番座のリビング、そしてキッチンと続き、裏座には障子で二間に仕切れるベッドルームを配置。キッチン背面にある水回り以外は天井を張らず、小屋裏がすべて現しになっているため、各居室が緩やかにつながりオープンな印象が保たれています。また構造材をはじめ外壁材やフローリングには無垢の杉材を使用しており、吹き抜けの開放感と相まって、木の家特有の温かな雰囲気と涼やかな住み心地が一段と強く感じられます。
 こうした設計面の特徴は、ほぼ建築士の提案通り。ファーストプランを見た時点で納得し、実施設計に進んでから何か改めて注文したようなことはなく、「私の思いをくんで最高の形にまとめてくれたので」とNさん。肝心の父親からの評価も上々で、現在は友人や親類を引き連れしばしば利用しているそうです。

沖縄らしさを今に紡ぐ おおらかで小さな木の家

 宿泊客の満足度は、民泊仲介サイト大手のAirbnb(エアビーアンドビー)を見れば一目瞭然。すべての評価項目で満点近い星の数が並び、開業後1年もたたないうちに「スーパーホスト」に認定されました。維持管理のために度々訪れるNさんにとっても、備品の整理や清掃を済ませた後、和室やリビングでボーッと過ごす時間は癒しのひととき。庭から舞い込む爽やかな風を感じ、新築時からわずかに日焼けして風合いを増した柱や床を眺めながら、「イメージ通りの建物をつくることができた」としみじみと実感しています。


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