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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

場所性・普遍性が共存する 澄んだ空気と光に満ちた木造住宅

場所性・普遍性が共存する 澄んだ空気と光に満ちた木造住宅

DATA
設  計: 株式会社琉球住樂
     一級建築士事務所
 (担当/伊良皆盛栄、伊良皆沙彩)
敷地面積: 849.39㎡(約270.55坪)
建築面積: 195.97㎡(約59.28坪)
延床面積: 221.77㎡(約67.08坪)
用途地域: 都市計画区域外
構  造: 木造軸組工法 2階建て
完成時期: 2022年4月
施  工: 株式会社琉球住樂
     (担当/小波津敬)
プロジェクトマネージャー: 伊良皆杏奈
電  気: 有限会社山城商工
     (担当/照屋盛文、名城武則)
水  道: 有限会社海西工業
     (担当/西平重弘)
キッチン: 琉球住樂オリジナル
     (担当/伊良皆沙彩)
造付家具: 琉球住樂(担当/塩田恵一、
     伊良皆沙彩、伊良皆杏奈)
内部大工: 真内装(棟梁/伊佐真二)
外部大工: 金城工業(棟梁/金城清正)
内部建具: 有限会社照屋木工所
外部建具: 株式会社エクセルシャノン
外  構: 金勢造園(担当/高江洲)
屋  根: 有限会社八幡瓦工場
     (担当/八幡)、
     スカイルーフ(桑江)
左  官: 當山左官(担当/當山、岡田)

フクギの木に囲まれて建つSさん宅は、切り妻の大きな勾配屋根が印象的な、無垢の木と漆喰でできた住まいです。
故郷の香港から新居の完成を見守り、今年4月に待望の沖縄暮らしをスタートしました。

週刊かふう2022年11月11日号に掲載された内容です。

場所性・普遍性が共存する 澄んだ空気と光に満ちた木造住宅

沖縄の地になじんだ品のあるたたずまいと、木組みの美しさに魅了される


 在来の文化を尊重しつつ、現代のライフスタイルに無理なくフィットして、なおかつ環境にやさしいこと。いわゆる持続可能性を志向する生き方は地球規模で大きな潮流になっており、それは家づくりの場面にも当然当てはまります。

 施主のSさんのふるさとは、飛行機の直行便で沖縄から3時間圏内にある香港です。十数年前に初めて来沖して以来、美しい自然と独特の風土・文化が気に入り、フクギの木に囲まれた静かな土地を新居用に購入しました。とはいえ慣れない異国の地とあって、どこに建築を依頼していいのか一切のあてはなく、情報収集は専らウェブ頼り。そんなある日、知人から教わったサイトを見ていると、一つの建築会社の作品写真に心を引き込まれました。
「沖縄の伝統家屋の風情を感じさせる品のあるたたずまいや、豪快にそびえる柱や梁の雰囲気、ディテールまで丁寧につくり込まれた木組みのデザインがとてもいい。そう、決め手はインスピレーションですね」。説明文にも目を通し、家の骨格を成すのが無垢材、漆喰といった自然素材であること、健康に配慮して室内の温湿度を一定に保つ工夫が施されていることなども、Sさんの琴線に触れました。

 新居はセカンドハウスではなく、日常使いの居住用です。初めて建築会社を訪問した時には既に腹づもりは決まっており、自身の大まかな生活スタイルに加えて、「友人知人がいつでも気兼ねなく泊まりに来られるように。キッチンはできるだけ広くして、趣味の料理を楽しめるように」といった幾つかの要望を対面で伝えました。
 しかし時は2020年。世界中で人の移動が制限されるコロナ禍の真っただ中です。Sさんもご多分に漏れず影響を受け、同年10月に一時帰国してから今年4月の引き渡しまで、現地を訪れることはかないませんでした。

場所性・普遍性が共存する 澄んだ空気と光に満ちた木造住宅

吹き抜けに梁が架かる開放的な LDK。セパレート型のオリジナルキッチン


 香港の住宅事情はほとんどが高層の集合住宅であり、Sさんも普段はマンション住まいです。そのため戸建て住宅のイメージがなかなか湧かず、居室の配置や空間の規模感など全体的なプランは建築士に一任。一方で各スペースのインテリアについては担当者と繰り返し意見を交わし、事細かくデザインを選定していきました。電子メールをはじめ、さまざまなオンラインツールが使える昨今、あらゆる情報のやり取りは国境を越えてリアルタイムに行えます。
「全面的に信頼していたので、実物や現場を直接見ることはできなくても大きな不安はありませんでした。唯一気になったのは、室内の空気感くらい。こればかりは実際に体感しないと分からないですからね」。
 そしていよいよ工事が終わり、新居と対面する緊張の瞬間。建築会社のスタッフが息をのんで見守る中、「出来栄えははるかに想像以上。衝撃のあまり、玄関を入って立ち尽くしてしまいました」と振り返ります。

 玄関の戸を開けると、視界の左右に鎮座する角柱・丸柱越しにLDKが広がり、頭上の吹き抜けには迫力ある太鼓梁が架かっています。無垢の木と漆喰が織りなすやさしい雰囲気が瞬時に五感になじみ、窓を閉めていても、フレッシュな空気が家中を循環している様子が確かに察知できます。「今まで連れてきた友人全員が私と同じ反応をするの。ワオ! と言ったまま動かなくなるんだから」。

 二つのシンクを備えたセパレート型のキッチンは、Sさん宅のオリジナル。引き出しの位置や開け方まで指定したこだわりようで、「香港の家より使いやすい」と早速高評価です。またキッチン奥のスペースをはじめ、LDと吹き抜けでつながった2階はゲスト用の空間で、Sさんのプライベートエリアは東側に延びる廊下沿いに離れ的に置かれています。主寝室の窓の外には木々の緑がのぞき、「ここに居るだけで心が落ち着く。思考がクリアになります」。
 国を越えた人々の往来が徐々に自由になり、親類や友人と心置きなく新居で同じ時間を過ごせるのはまだこれから。感動の本番は始まったばかりです。

写真ギャラリー

場所性・普遍性が共存する 澄んだ空気と光に満ちた木造住宅

独自の断熱仕様と空調設備で快適な室内環境を整備
周囲の町並みに寄り添う圧迫感のない外観意匠

インテリア:伊良皆杏奈さん(左) 設計:伊良皆盛栄さん

 今回のSさん宅は、私たち琉球住樂にとって、結果的に大きなチャレンジの成果につながりました。結果的に、というのは、実は相談を受けた当初は「外国人の施主さまとは言葉の面で不安が残る。お互いに真意をくめない可能性があるのなら、お断りしたほうがいいのではないか」と考えたからです。
 しかしSさんから根強いオファーがあり、同時に運よく英語が流ちょうなスタッフが加入したことで受諾を決定。今度は逆に言葉の壁を越えて、私たちの家づくりをより深く理解してもらうためにも積極的に提案を行い、初めてとなるようなさまざまな試みも快く受け入れてもらえました。

 最たる例の一つが、間接光を生かした照明デザインです。今までも多くの住宅で間接照明を導入してきましたが、主照明を担うほど多用したのは初めてかもしれません。光の反射の強弱や漏れ方などをあちこちの場所で繰り返しテストして、琉球住樂の家に最適な設置方法を模索しました。
 この他、Sさん宅は床面積が約67坪と広く、個室も多いため、2階のオープンスペースにエアコンを置いてシーリングファンで冷気を拡散する方法ではなく、冷房には全館空調システムを採用し、空気質を従来以上に清潔に保つための新たな改良を加えました。今後はこれを標準モデルとして、さらなるバージョンアップを図っていく予定です。

 構造材や床材に使用した飫肥杉の無垢材、漆喰の塗壁といった素材は、「沖縄で百年以上住み継がれる家」を見据えた創業以来の変わらぬ仕様です。また省エネ性・環境性を常に意識して、標準でZEHをクリアすべく、開口部には樹脂サッシとLow−E複層ガラスを設置すると同時に、独自の断熱基準を算出し、屋根・壁・基礎にそれぞれ一定量の断熱材を施工しています。一方で外観デザインは「内は個性、外は環境」との持論に従い、周囲の町並みに圧迫感を与えないように屋根を切妻にして、軒下をできる限り低く抑えました。

 言葉の面での不安は解消したとはいえ、非対面・非接触でのやり取りを余儀なくされ、「部分部分のデザインは了承済みだけど、全体としてイメージ通りの空間をつくれているか」と別の不安が募りました。だから引き渡しの際のSさんの表情を見て、私たちもホッと胸をなで下ろしたことを昨日のことのように思い出します。技術以外の面でも今後の幅を広げてくれる、貴重な経験をさせてもらいました。

設計・施工会社

南城市玉城字愛地697-1

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